戻れない道 2 近距離になり、男を見上げて顔を近付ける。 その時、男を鋭い目付きで見ていた。 その場に緊迫した雰囲気が流れ、男は息を飲んだ。 ヤられる。そう覚悟したであろう男。 しかし、その覚悟とは裏腹に、紅の雫はニッコリとした明るい笑いを見せた。 「そんなに身構えなくていいですよ。依頼者は殺しませんから」 最初のような明るい雰囲気と楽しそうな声色。 緊張が一気に解けて、男はその場に座り込んでしまった。 「依頼が終わるまで依頼者を殺しちゃダメなんですよ」 逆に考えれば、依頼が終われば殺してもいいということになる。 しかし、そんなことは安堵しきっている男には考えることすらできない。 「そ、そうか。・・・じゃあ私は・・・本当にもう行く!」 叫びに近い声を発し、急いで去っていった。 「取って食いはしないのに」 時間がかなり経っていたみたいで、公園には紅の雫しかいない。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |