シンプルな心理(拍手文)
いつも大嫌いでほんのたまに好き
純粋な感情はもう無いのです。
「シズちゃんだぁいすき」
女のように柔らかい感触が腰あたりに密着する。
驚いて振り向くと、そこには黒い塊が静雄の背中にべったりとくっついていた。
「臨也」
それを見て微笑ましげに笑ってやれば、相手も心底嬉しそうに笑いかけた。
静雄は、後ろから腰に回されていた腕を引き剥がし、向き合って顔を合わせる。
そして、何をするかと思えば、
「いったぁ!」
「…調子のんじゃねえ」
首を傾げて不思議そうに見つめる臨也の頭を軽くはたく。
「何すんのさ」
「手前がいつにも増して気色悪ぃからだ」
「仕方ないでしょ?俺にはシズちゃんが可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて痛っ!」
「やかましい」
今度は額にデコピンでもう一喝すると、臨也は胡散臭い笑みを浮かべながら痛そうな仕草をとった。
表では殺し合いの喧嘩をする日々で、裏ではこのようなやり取りが行われているのだから静雄自身も冷や冷やする瞬間が毎日に多い。
だが、それでも裏では気を許している相手を本心の中で裏切るようなことはあまり良い気持ちではなかった。
極度にベタベタされてくるのは嫌で、例外だったが。
「でもさあ、本当に好きだよ?シズちゃんのことが」
女子のような上目遣いで今度は前から静雄の腰に腕を絡める。
半ば諦めた表情で臨也を見つめる静雄は、特にこれといった行動は見せずにただ立ち尽くすだけだ。
それでも好き好きと連発してくる臨也の頭に、ぽんと小さく手を乗せた。
「……臨也ぁ」
「…なに、シズちゃん?」
嬉しそうに顔を綻ばせる臨也を見て、静雄は力任せに頭を撫でる。
「……」
「……あ、の、いた、痛いっ痛いっつーの!」
手加減なしに動かす手を払ったと思えば、不意に静雄の腕が臨也の背中へと伸びてその細い体を支え、抱き寄せた。
突然縮まった距離に、臨也は驚き半分動揺で言葉に詰まる。
気になって、押し付けられた顔を静雄のほうへ向けてみる。
すると、それは突然に耳の横で告げられた。
シンプルな心理
「ちゃんと大好きだから、安心しろ」
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