ほんとにバカだね、 ※来神です。 バカとアホの違いって何 すっかり日も暮れ、空は綺麗な橙に染まりつつある夕方頃。 そこには、放課後の学校に似つかわしくない呻き声が教室から漏れだしていた。 「くっそ、こんなもんわかんねえよ…!」 「ほらほら、あと5問じゃないか。君はやればできるんだからさ、あ、力こめすぎて鉛筆折らないでね」 「……だああ…っ」 「アハハ無理だよ新羅。シズちゃん無理しなくていいんだよ、プリント間違って食べちゃいましたっていえばって痛い痛い痛い」 「…鉛筆じゃなくて腕折ってやろうか」 とっくに授業は終わった教室に残っているのは、教師から出された補習プリントを終わらせるためだった。 テストの点が基準までとどかなかったために残されているのだが、何故そこに三人も居座っているのか。 まず、残された当の本人静雄は言わずともわかるだろう。 静雄の横に席をくっつけて勉強を教えてやっている先生係は、成績優秀で静雄の数少ない友人の岸谷新羅である。 そして、適当な机に尻をのっけて横から口をつっこんでくるだけのどう考えてもいらない邪魔者はかの有名な折原臨也だ。 臨也がいることによって静雄の集中力が急激に減少することは誰もがそこで問いただしたいことだとは思うが、臨也本人はそれが目的で一緒に教室に残っているのだからそればかりは仕方がない。 「っあー」 ぐしゃぐしゃと頭をかきむしる。 外から聞こえてくる運動部たちの声が一層静雄の集中力をすり減らしていった。 「ここはこれを代入して計算すればいいんだ。随分と悪戦苦闘してるようだけど…実際は簡単だよ」 「ったくさー、こんなもんサボって帰っちゃえばいいのに。俺もう疲れたんだけど」 「「じゃあ帰れよ」」 珍しく見事に重なった反応を見て、臨也はケラケラと嘲笑う。 「…まあ臨也もさ、こんなんで成績良いんだから、神様も何考えてんだかわかんないよね」 「嫌だなぁ、まず頭も顔も性格もワンダフルな俺に神なんてもんが通用しないんだって」 「……マンションの屋上から降ってきた植木鉢が臨也の頭に直撃すればいいのに」 「あぐりー」 「…いや、なんでシズちゃん英語なの」 今やってんの数学でしょ、と突っ込みをいれてもプリントに全てを集中させている静雄にはもはや何も聞こえない。 ああ、 くっそ、 こんなバカにわかって俺がわかんねえっつーのが一番腹立つな。 勉強から意識を離せば、そんなことばかりを考えてしまう。うぜえうぜえうぜえ。 だが、そうは思っても無理やり追い出そうとはしない自分にも少し腹が立ってくる悪循環。 頭を使う居残り勉強は、まだまだ終わる気配を感じさせなかった。 (ほんとにバカだね大好きだよ!) ←→ [戻る] |