恋人ごっこ ※来神に入学したてのお話 ※誘い受け臨也 熱に侵される 恋人ごっこ 「君のあだ名、決定したよ」 「……」 場所は、屋上。 フェンスの上に腰掛け、人々を見下すような目で臨也に言われた第一声がこれだった。 「"シズちゃん"、でどう?」 ――は? 意味が、わからない。 何を突然言い出すんだこいつは。 新羅の紹介で臨也と出会ってから、まだ数日しか経っていない頃だった。 最初に見たときからおかしな奴だとは薄々感づいてはいたが、やっぱりどこかずれている。 『今授業中でしょ?終わったら屋上きて』 という内容のメールを受け取ったときはまたしょうもないことかとは思ったが、 やはりその内容はどうしようもなくしょうもなかった。 「……芸人じゃあるまいし」 「いやだなあ、そんな意味でつけたんじゃないよ。他にもね、『シズくん』とか『平和くん』とか『じまじま』とか色々候補はあったんだけど、やっぱりシズちゃんが一番呼びやすいかなーって思ってさ」 「…手前は何でもかんでもニックネームを付けないと満足できねえのか。…門田といい」 「別にそういうわけじゃないけど。…じゃあ静雄くんって呼ばれたほうがいい?あるいは平和島くんとか」 「………」 始終にやけ面を絶やさない臨也に、静雄は一層苛つきをおぼえる。 そもそもこんなことを伝えるために授業をサボって屋上に一人たたずんでいたのか。 想像すれば想像するほど孤独な人生を辿っている奴だ。 静雄は、はあと一つ溜め息をつき、少し押したら真っ逆さまになりそうな臨也を見上げた。 「あのなあ」 「ん?」 「お前が"イザちゃん"って呼ばれてるようなもんだぞ」 「呼びたいんならそう呼んでもいいよ?」 「……死んでも呼ばねえけど」 「なんだ残念。俺、君にならそんなダサダサなあだ名で呼ばれても許せるんだけどなあ」 「お前にだけは言われたくねえな」 シズちゃん、なんてセンス0な名前、思いつくほうがすげえよ。 授業サボってこんなことばっか考えてんだな、とほとほと呆れてやると、臨也はやっぱり得意げな顔で宙を見上げていた。 性格や思考は残念な例そのものだったが、よく見てみると顔はそこまで悪くない。 いや、むしろかなりいいほうだ。 同じ男がいうんだから間違いないだろう。 まじまじと顔を見る機会がなかったせいか、それまではただの性悪男としか思っていなかったのだが。 あまり長く顔ばかり見ていると相手に不審がられるので、すぐにぱっと目を離す。 何を思ったか、それと同時に臨也はフェンスから勢いよく飛び降りると、 「ねえ」 静雄のところまで足を運ばせ、楽しそうに言った。 「俺さあ、今度君と一緒に遊びたいなあ」 ……? 再び意味のわからないことをいう臨也に、静雄は首を傾げてクエスチョンマークをたてる。 一歩ずつ距離を縮められ、下からの舐めるような視線につい目を背けてしまった。 「せっかく出会えたんだし。これもなにかの縁だと思って」 そういって、臨也は相手の首に手を回したかと思うと、艶めかしい仕草で静雄の首筋に舌を這わせる。 「…んっ…」 ペロリと感じる違和感に、思わず声が出てしまった。 誰か見てたらどうすんだ…! そう叫びたかったが、どうにも力が抜けてしまって相手を支えてやることしか出来ない。 「いいでしょ?俺、君のこと気に入っちゃった」 語尾に音符マークがついているかのような調子で静かに囁くと、臨也はゆっくりと腕を絡ませる。 「だからさ」 不意に頬へキスすると、にこっと笑顔をつくって静雄のことをじっと見つめ、言った。 「そのときはよろしくね、"シズちゃん"」 「…っ」 俺は、ここに入学してとんだ奴に出会ったもんだ。 いつも馬鹿みてえににやにやしやがって、何を考えてんだかさっぱりわからない。 それでも、初めて二人っきりで話したそのときの"よろしくね"は、 そこまで悪い気がしなかったのも事実。 熱に犯される たまには素直になるのも良いでしょう? ========== 意味がわからないw 自爆しました(^o^) ←→ [戻る] |