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星屑、夜空に再び









「変わってないなぁ」



ユーリに手を引かれて歩きながら街をぐるりと見回す。何一つ変わってない街並み。あたしが知っているまま。



「変わんねえよ。おまえがいなくなってからまだ三ヶ月しか経ってねえんだからな」



そ、そうだったんだ。そりゃあ、ユーリも変わってないはずだよ。六年も経ってたらユーリだっておっさ……



「……痛い」
「当たり前だ」



脳内で言ったつもりなのになんでわかったんだか。ごつっ!と音を立てて頭にまた拳骨を食らった。ほんとに痛い。仮にも「好き」って告白してくれたんだから優しくしてくれてもいいのに。扱いが六年前と何ら変わらないじゃん。



「フレンは?」
「相変わらすだよ。ただあいつに何の挨拶なしにおまえがいなくなったもんだから、しばらくは意気消沈してたけどな」



なんか、想像できる自分がイヤ。確かにフレンには可愛がってもらった記憶はあるけど。それはいいとして……まだ三ヶ月しか経ってないならどうしようかな。ちょっと困ったことになった。



「どうした?急に黙り込んで」



眉を寄せて黙り込んだあたしの顔を覗き込むユーリ。お願いだから顔を近づけるのは止めて。正直恥ずかしくて照れる。だって、いわゆる恋人同士になったわけだし、初めてのことだし。いくら成長したとは言えそうそう性格が変わるわけでもないし。



「えっと…その、三ヶ月しか経ってないんだよね?」



確認するかのように問えばユーリはああ、と短く答える。



「なのにあたしは六歳も年を取ってる」



この事をどう説明したらいいものか。街の人が見たら何というか。気味悪がられるかもしれない。



「……それともあたしだってわからないかなぁ」
「いや、わかるだろ」



背も髪の毛も伸びたしと思いながら言うとユーリが即座に否定した。しかもきっぱりハッキリと。そりゃあ清々しいまでに。



「その根拠は?」



先日、このテルカ・リュミレースに来る前に小学校の恩師の元に行ったときだって、あなた変わったわね。色んな意味で。って言われたのに。それをわかるって。



「俺がすぐにお前が空良だってわかったんだからな」



自信満々に言うユーリに、それはユーリだからだよって言おうと思った。でも止めた。ユーリにそう言う理屈は通じない。



「大丈夫だろ。心配すんな」



ニッと笑うその顔はいつものユーリで、懐かしさ半分照れ半分。うっすら乙女モードのあたしにはちょっと刺激的で。まさかこんなドキドキさせられるとは思いもしなかった。まあ、再会できるとは思ってもなかったし。



「部屋もどうしよう。あたしお金持ってないから宿泊まれないよ?」



ここで稼いだお金はない。すべてユーリの部屋に置いてきたはず。元の世界に戻ったときに荷物の中にはなかったし。言うならばニートなユーリがあたしの分の宿代を持ってるとも思えない。てか仕事、してんのかな?


「それも大丈夫だぜ」
「……何を根拠に?」



さっきまでドキドキさせられたものではない笑み。な、なにを企んでるんだろうか。聞くのも怖いくらいでどうしろと?



「決まってんだろ?三ヶ月前と同じでいいんじゃねぇの」


ちょっと待てぇ!さ、三ヶ月……あたしにとっては六年前だけど……あれって……



「ば、馬鹿じゃないの!?」
「お、ちゃんと覚えてたか」



忘れるわけもない。あんなの、忘れられるわけもない。だって――



「俺と一緒に寝ればいい」



満面の笑みを浮かべたユーリにこれでもかって大声で、バカーっ!って言ってやった。あの頃だって恥ずかしかったのに、今なんて絶対に無理!わかってて言ってるユーリが憎い。



「空良」



耳元で名前を呼ばれる。吐息が耳に掛かってくすぐったくて、思わず小さく声を上げるとユーリは満足そうに、くくっと笑う。人をからかって遊び所は相変わらず質が悪い。これが子供の頃だったなら違う反応だっただろうけど。なんか、悔しい。悔しいから、



「んじゃ、ユーリが床で寝てね」



とユーリから離れて舌を出して笑ってやる。ラピードがいるから温かいでしょ?と言えば、仕方ねぇな…って微笑む。





(あたしの、新しい生活の始まり)



あきゅろす。
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