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青春謳歌





「すみません!お待たせしました!」



白い息を吐きながら彼の元へと走る。普段運動なんてしないから、少し走っただけで息が切れます。



「いえ。そんなに急がなくても大丈夫ですよ」
「駄目です!明日試合を控えている黒子くんを寒い所で待たせるなんて出来ません!」



そうです。明日は試合なのです。夏の雪辱を晴らす試合と言っても過言ではありません。桐皇との試合が明日なのです。だから、黒子くんには万全の体調で試合をして欲しいのに。



「僕が呼び出したのですから気にしないで下さい。それより大丈夫ですか?」



僕から呼び出しておいてなんですけど、と黒子くん。時間はもう九時を過ぎています。



「叔父様はまだジムです。叔母様はお風呂ですし、リコちゃんは主将と電話中なので大丈夫だと思います」



リコちゃんはともかく、叔父様がいたら外に出させてもらえなかったと思います。後で怒られるかもしれませんが、会いたいという欲望が抑えられませんでした。つい、数時間前まで一緒にいたのにです。この数ヶ月で大胆になったと思います。



「それで、お話ってなんですか?」



電話ではなくわざわざ呼び出すくらいですから、余程大事な話なのかもしれません。ですが私に話ってなんでしょう?明日では駄目だと言うことなのですかね。



「いえ…試合前に緒方さんと話したくて」
「構いませんが、それだと風邪を引いてしまいますよ」



付けていたマフラーを黒子くんの首に巻く。コートは着てるのですが、12月の夜の寒空の下では見ている方が寒いです。これでは風邪を引いてしまうかもしれません。



「それだと緒方さんが…」
「私は大丈夫です。黒子くんは選手なのですから風邪を引いては駄目です」



私がいなくても試合は出来ますから、と言えば黒子くんはそれ以上何も言いませんでした。



「……この数ヶ月で、緒方さん。だいぶ変わりましたね」
「そうですか?」



自分でも変わったとは思いましたけど、人から見たらどうなのかわからなかったので、言ってもらえるとなんだか実感します。



「最初は、会話するのも大変でしたからね」
「……は、はい」



リコちゃんの背中に隠れながらと言うこともあった。黒子くんが話し相手を申し出てくれなかったら未だに人と話せないままでした。



「黒子くんのおかげです。黒子くんがいてくれたから私は変われたんです」



感謝してもしきれない。先日も困っていた赤司くんたちに自分から話しかけられるようになりました。それだけでも十分なせいかです。一部、黄瀬くんと笠松さんのおかげもあるでしょうけど。



「ありがとうございました」



人と話すのが怖かった私が人と話せるようになって、誰かを好きになれるようになった。それも全部、黒子くんのおかげ。



「僕も楽しかったです。緒方さんとお話をするのが」



練習で疲れているのに、私の話に付き合ってくれる人。試合に負けて、傷ついて落ち込んでいても、私には変わらずに接してくれていました。



「でも、それを今日で終わりにしたいんです」



黒子くんからの突然の言葉に私は目の前が真っ暗になりました。それは、もう私とは話さないっていう風に聞こえたから。何か気に障ることでもしたのでしょうか。


「誤解しないで下さいね」



そう言って私の手を取って、優しい笑みを浮かべる黒子くん。



「ただの話し相手では嫌なんです」



ギュッと手を握る力を込められる。



「緒方さん……いえ、優希さんが好きなんです」



今、黒子くんはなんて言いましたか?好き?えっ、えっ…と混乱している私に黒子くんはまた、好きです。と言いました。



「今度は一人の男としてみて欲しいんです」



私の頭はもう沸騰寸前です。まさか、そんな事を言われるなんて思いもしてなかったから。私の片思いだと思ってたから。



「優希さん?」
「……わ、私も……黒子くんが、好きです……」



絞り出すように声を発する。恥ずかしくて彼の顔が見れません。けど急に視界が変わりました。抱き締められてると理解するのに数秒要しました。



「嬉しいです」



耳元で囁かれる声がくすぐったい。でも私も嬉しい。



「……好きです」



もう一度、気持ちを伝えたら、黒子くんは私の額に唇を落としました。それだけで私は幸せに満たされた。



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あきゅろす。
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