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act:04 君とあたしは相成れない



初対面の時から取っ付きにくいと思ってたけど予想は更に上回った。導師の方はあたしが必要以上に気にしなければ大丈夫なんだけどどうもシンクの方はどうにもこうにも顔を合わせば喧嘩しかしない。イオンと喧嘩したことが無いわけじゃないけど……シンクの場合は人の神経を逆撫でしすぎてムカつく!



「何で僕がコイツと手合わせしないといけないの?」
「訓練だからだ」



本部地下の訓練場。ここにはあたしとシンクの他にリグレット、ラルゴ、アッシュがいる。アリエッタは任務。ディストは研究室に籠もってるみたいだ。



「はぁ」



アリエッタや他の兵士がいないから仮面を付けていないシンクはあたしを睨み付ける。文句を言うシンクにリグレットは腕を組んであっさりと言い退けた。あたしはラルゴの隣で溜息を吐いている。



「お前はまだセラと手合わせをしたことがないだろう。セラは俺たちにも匹敵する腕前だぞ」



それでも文句を言い続けているシンクにラルゴがあたしの頭に手を置いて言う。ラルゴたちに匹敵するかは分からないけどそれなりに腕に自信はあるつもりだ。将来……イオンの側でイオンを守って助けてあげたかったから。



「怖いの?」
「はぁ!?」



このままじゃ埒があかないと思ってあたしは面倒だけどシンクを挑発する。すればシンクは予想通り、片眉を上げて再び睨みつけてきた。



「あたしに負けるのが怖くて逃げてるんだ」
「何だと!」
「セラ!シンクも挑発に乗るな!」



あからさまな挑発に乗るシンク。リグレットが名を呼んで諫めるけど、シンクみたいなひねくれ者にはこの方が手っ取り早い。



「いいよ…相手してやるよ。後悔するなよ」
「どっちがかね」



あたしに向き直るシンクにリグレットもラルゴもやれやれと首を振る。



「めんどくせぇからさっさとやりやがれ!」



ここまでのやり取りをイライラしつつも黙っていたアッシュがキレた。でないと俺が纏めて相手するぞと言わんばかりで。全くヴァンにいいように使われてる燃えカス君は言われるまでもない。



「やろうか?」



腰のベルトから一本のナイフを抜く。目を細めてじっとシンクを見つめるとその場の全員が息を飲んだのが分かる。あたしはイオンのためならなんでもできた。だから、人を殺すための技術を学ぶことも厭わなかった。



「きなよ」



ナイフを手にしていない方の手をくいくいとさせればシンクは一瞬、躊躇うがすぐに身構え、一気に間合いを詰めてくる。予想以上に素早い動きだけど目で追えない早さではない。



「甘い!」
「くっ!」



一気に飛び込んだ勢いで蹴りを入れるシンクの足を片腕で受け止め、ナイフで薙ぎ払う。シンクも寸での所で後方へと下がる。



「行くよ。ちゃんと避けてね」



バックステップで避けたシンクの着地と同時に腰のベルトからナイフを更に二本抜き、合計三本のナイフをシンクに向けて本気で投げつける。この程度が避けれないのならばその程度のこと。あたしはシンクを殺すつもりで投げつけた。



「ちっ」



小さく舌打ちしたシンクは着地と同時に直ぐに後転をして躱す。その跳躍力は並の人間では跳べない高さ。あたしのナイフは空を切り、壁にあった床へと落ちた。



「このっ!」



再び飛び込んできたシンクの速さはさっきより早い。腕を取られ、そのまま投げられ床へと叩きつけられた。



「……残念だったね」



下からシンクの顔を見上げれば、彼は悔しそうに眉を顰める。それもそうだろう。投げつけた時点で本来シンクの勝ちだった。でもあたしもただでは転ばない。手元に隠し持っていたナイフを首に突きつける。



「そこまでだ」



静止したまま睨みあっているあたしらにそう声を掛けたのはリグレット。再び舌打ちをしたシンクは乱暴にあたしの腕を離した。



「危なかった、かな?」
「ナイフ…隠し持ってたのか?」



投げたナイフを回収して三人の元に戻るとまずアッシュが声を掛けてきた。それに「うん」とだけ答える。



「これでシンクもセラに対しての考え方が変わるといいがな」
「たぶん無理だよ」



シンクのいなくなった方をを見つめるあたし達。ラルゴがシンクがあたしを"認めて"くれればいいと言うがあたしは首を振る。







とあたしは相成れない
(だってそうでしょ?互いに憎み合ってるから)

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