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act:11 一つの道





「ごめん」



それは何に対しての謝罪か。
認めたくはないし、彼も振り返して欲しくはないだろうけど互いが前に一歩でも進むためには必然な事……だとあたしは勝手に思っている。必要と思ってると言っても結局はあたしの意見であって必ずしも全員が全員、同意見と言うわけじゃない。ましてや相手はあのシンクだ。怒鳴られて終わるかと思ったら何があったのか目を見開いて驚いていた。よくわからないままあたしはアッシュに呼び出されていて返答も何も聞かないまま彼の前を後にした。



「なに?話って」
「次の任務だ」



アッシュに呼び出されたから何かと思えば任務って。なんでその話をアッシュから聞くんだろう。さっきまでシンクと一緒だったのに彼は何も言わない。一応シンクの部下なのにシンクとは別任務なのかな。けどヴァンがいちいちそんな真似をするとは思えないし。



「バチカルに辿り着いた導師を攫う」
「攫う?どうやって」



シンクからではあたしが動揺するとでも思ったのか。そんなのはどっちでも今はいいんだけど。浚うにしてもあの死霊使いがいるってのにどうやって。それ相応の作戦がないと無理だ。



「漆黒の翼と導師守護役を使う」



どうやら導師をさり気なく外に誘い込み、漆黒の翼に上手く言いくるめさせて街の外出す。そして街の外停車させたタルタロスに乗せてザオ遺跡に連れて行くと。



「けどすぐバレんじゃないの?」



アニスが手を貸そうが、バチカルにいる導師がふらふらといなくなればそれだけで騒ぎになるはず。あのお人好しならホイホイ外に出てくるかもしれないけど、聞くところによればモースには内緒だって言うしね。あとがうるさそう。



「いくつか作戦は立ててある。万が一、奴らが追ってきてもだ」
「追って、ねぇ。死霊使い辺りはせっかくの平和条約が破棄されるかもしれないから追ってくるかも……だけど」



他国で暴れることなんて出来ない。導師救出とかこつけても、それは偽装で中からキムラスカ崩しに来たと疑われるだろう。まあ、あの男がそんな馬鹿をやらかすわけもない。



「追ってきてもヴァンの妹くらいじゃない」



モースの忠実な部下だし。ヴァンもバチカルに向かってるらしいし何も考えてない訳じゃないだろうし。



「で、あたしは何するの?」
「ザオ遺跡に連れていく際の護衛だ」



護衛?確かにあそこは魔物が出るし必要だろうけど。メンバーはあたしの他に誰かと聞けばアッシュ、ラルゴ、シンクも一緒だとか。あたしいらなくない?とさらに聞き返せば、兵士は連れていかず少人数で行くから師団長の他にあたしも連れてくことになったとか。



「まあいいや。決行は?」
「明朝だ」



細かい事なんてどうでもいい。あたしはただイオンが望んだものを見届けるだけ。ザオ遺跡にあの導師を連れていって何するのかわかんないけど、行けばわかるってことだろうし。



「……セラ」



考えても仕方ない。風にでも当たりに甲板に出ようと踵を返すと目の前にはシンク。珍しく面と向かって名前を呼ばれた。何だかむず痒い気もするけど嫌いじゃない。



「ああ、任務の事ならアッシュから聞いてるよ」



何度も同じ事聞くのも面倒だからそのまま通り過ぎようとすれば手を掴まれ引かれる。そのまま壁に打ちつけられれば肺に衝撃が走り呼吸が一瞬止まる。そんな事、シンクにはお構いなしのように力を入れてくる。



「あんた、わかってんの?」



今回の任務の内容。と、問われたから導師の拉致でしょ?と負けじと睨んで返してやる。だからなんだ。それがどうしたと言わんばかりの態度を露にしてやれば何の文句も無いだろうし。



「…僕たちがこれからすることは『導師』の命を縮めることだよ」
「だから?そのための『導師』のレプリカでしょ」



そんなくだらないことを言うために引き止めたならどいてよ、邪魔。力任せにシンクを押しのけてあたしは目的だった甲板へと移動する。
シンクはあたしを壊したい。『イオン』に執着するあたしを壊したい。でもあたしはそんなこと知ってる。ヴァンの思惑は嵌るのは癪だけど、けどイオンが自らのレプリカを作ったのはそんなことだろうと思ってたしわかっていた。



「……バカだよ」



イオンもシンクも、あたしも。互いが互いを引きずっている。離れることができなくて……たった一つのことに囚われている。





一つの
(それは避けては通れないもの)



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