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SS集
冬木市へ疎開の巻その二(2009.5.25〜)
?:おお、衛宮か。ちょうどいい、一つ頼みが――と、そちらの方々は?

衛:ああ、紹介するよ―――



?:―ふむ、では、暫く滞在されるわけですか。どのような事情かは聞きませんが、なかなか大変でしょう。

ジ:いやいや、衛宮たちも親切にしてくれるし、なんとかなりそうだよ。それに、本当に大変なら観光なんてしてないさ。

?:それもそうですな。…おっと、まだ名乗っていませんでしたか。私は柳洞一成、この寺の住職の次男です。

ジ:ああ、よろしく、柳洞。

衛:それで、頼みたいことって何なんだ?

柳:いや、お客人がいるのに頼みごとはできん。また次の機会に頼むことにしよう。

ジ:…衛宮、俺らは適当に回ってるから、頼まれてこいよ。

衛:いいのか?

ジ:ああ。

衛:悪いな。一成、OKでたしちゃっとすませよう。何を直せばいいんだ?

柳:ジェンクさんにレイトさん、すいません。…それでは衛宮、こっちの部屋の――

ジ:さて、それじゃあ適当に見て回るか。

レ:ジェンクさん、僕は山門の方に行ってます。

ジ:え?…まさかアサシンと一戦やるわけじゃないだろうな。

レ:流石にこの真っ昼間からそれはないですよ。少し話がしたくなっただけです。

ジ:そか。んじゃあ俺はあっちのほう見てるよ。

レ:はい、それでは。



アサ:…おや、何用かな?手合わせならば夜に願いたいが。

レ:流石に真っ昼間から剣を合わせるほどイカレてはいませんよ。

アサ:ならば、それこそこの山門に戻る理由はあるまい。

レ:いえ、実は、あなたの持つ刀が気になりまして。資料では見たことはありましたが、実物の物干し竿をみる機会はそうありませんからね。

アサ:ほう、好事家の類か。

レ:違いますよ。剣士として、剣は見ておくべきでしょう?

アサ:…はっはっは、よもやこの時代で生粋の生ける剣士に出会おうとは思わなかったぞ。ならば存分に見ていくといい。(スラッ)

レ:ありがとうございます。…やはり改めて見ても長いですね。これは相当の技術が要りそうです。

アサ:備中青江…刃渡り五尺余りの名品よ。…とはいえ、これはサーヴァントとしての得物。真作と同一の贋作にすぎぬ。

レ:確かに名品と言うだけはありますね…。

アサ:さて、次はそちらの剣を見せてもらおう。

レ:え、僕のですか?

アサ:然り。…剣士として剣は見ておくべきなのであろう?

レ:…あはは、それじゃあ――




衛:…っと、これでよし。一成、オーケーだぞ。

柳:ああ、いつもいつもすまないな。

衛:いいっていいって。…それじゃ、ジェンクと合流するわ。

柳:ああ、ジェンクさん達にもすまなかったと伝えてくれ。あと、一通り見物が終わったら客間へきてくれ。茶でも御馳走しよう。

衛:わかった。



衛:さて、と。ジェンク達はどこに……ん?あれは、レイトさんか?なんかアサシンと話し込んでるな。

アサ:―ほう、レイト、貴公の剣は鋼ではないのか。

レ:ええ、セラミック製のブレードです。自分の世界ではこれが普通なんですよ?

衛:――なんかやたらマニアックな話になってるな。あの剣俺も後で見せてもらおう。じゃあ、ジェンクは……




衛:ああ、いたいた。なにを見てたんだ?

ジ:ああ、衛宮。なんか凄い稽古してたんでね。

衛:…ああ、葛木先生と零観さんの組み手か。

ジ:先生?師匠と弟子か?

衛:あ、そういうことじゃなくて。葛木先生―あの細い方の人な、俺たちの通う穂群原学園の教師なんだ。で、もう一人はさっきの一成の兄、柳洞零観さん。

ジ:なるほど、教師と坊主の組み手なわけだな。

衛:…そういうとなんか変に聞こえるなぁ。



零:む、ここまで!いやあ、相変わらず敵わんなぁ、宗一郎殿。

葛:いや、零観も腕をあげたな。やはり次からは襟を掴んだ時点で止めるよう頼みたい。

零:む?おや、士郎くんか、おはよう。そちらの御仁は何方かな?

衛:おはようございます、零観さん、葛木先生。こっちは…

ジ:はじめまして、先日から冬木に滞在している、ジェンクと申します。よろしく。

零:柳洞零観だ。観光か何かかな?

ジ:まあ、そんなところで。衛宮にいろいろ案内してもらってるんですよ。

零:そうかそうか、士郎くんは親切だからなぁ。おっと、紹介が遅れたな。こちらは葛木宗一郎殿。権僧正のお客人だ。

葛:葛木です、よろしく。

ジ:どうもよろしく。で、いきなりなんですけど、いつもあんな激しい組み手やってんですか?

零:いやいや、いつもあれだけのことをやっていたら、もっといい勝負になっているだろうよ。

葛:二度目の組み手だったのだが、以前よりも腕を上げたようだ。

ジ:そうなんですか、ってことは、お二人ともかなりの腕があったってことですね。特に葛木さんの技、なんか見たこと無い動きしてたんですけど。

葛:これは私が唯一使える秘伝、後に伝えてはならない類の技だ。

零:はっはっは、ならばこの柔術をその技が砕けるレベルまで持って行かねばならんな。

衛:ところでジェンク、見物はもういいのか?

ジ:あ、そうだ、まだ途中だった。それじゃあ、失礼します。



衛:ああ、そうだ、一成が、見物が終わったら客間に来てほしいってさ。

ジ:ああ、それじゃあ行こうか。レイトにも声かけてこないとな。

衛:レイトさんならアサシンとなんか話してたぞ。

ジ:じゃあ、山門にいるかな?




アサ:はっはっは、それは傑作。

レ:ええ、最高でしたよ。

ジ:おぅい、レイトー。

レ:あ、ジェンクさんが呼んでますので今日はこれで。

アサ:ああ、しばらくはこちらにいるのだろう?この身は山門に縛られ、動けぬものでな。機会があれば、今日の礼にこちらの話をしよう。

レ:ええ、また暇なときにでも寄らせてもらいますよ。



ジ:なに話してたんだ?

レ:大した話じゃないですよ。見学は済みました?

ジ:ああ。で、なんだか柳洞が茶を振る舞うっていうから、ご相伴に、な。

レ:そんなにもてなしてもらうなんて、悪いですね。

ジ:まぁなぁ。



ジ:それじゃ、世話になった。

レ:お茶まで出していただいて、ありがとうございます。

柳:いやいや、こちらこそ衛宮を長時間借りてしまって申し訳ない。

衛:それじゃ、またな、一成。

柳:うむ、また。



衛:深山町で見るとこはこのぐらいかな。

ジ:当たり前っちゃあ当たり前だが、少ないな。

衛:普通の町だからな。あとは新都になるんだが…その前にマウント深山商店街で買い物していこう。家は新都にあるんだろ?

ジ:ああ、そうだな。パセリは…後で迎えに行くか。

レ:じゃあ、衛宮さん、案内をお願いします。

衛:ああ、いい店を教えるよ。



衛:買い物はこんなところか?

レ:ええ、そうですね。

ジ:悪いな、荷物持ちまでさせちまって。

衛:いいって、二人じゃ持ちきれないだろうし、俺だけ手ぶらも居心地が悪い。……で、ここから新都に行くには、バスと徒歩の2種類の道がある。どうする?

ジ:…バスだろ。この荷物持って徒歩はないだろ。来るときもバス使ったが、結構距離あったぞ。

衛:じゃあ、そうしよう。




衛:それで、家はどっちの方に?

ジ:えーとな…こっちだ。

レ:ジェンクさん…あっちですよ。

衛:どっちだよ。

ジ:…たぶんレイトが正解だからついていこう。

衛:…方向音痴か。




レ:着きましたよ。

衛:着いたって……ここは。

ジ:古い割にはしっかりしてるんだよなぁ、この建物。掃除とかは本腰入れんと拙いが。

衛:…何でここが貸家になってたんだ?

ジ:そんなこと言われてもなぁ。

レ:もしかして、というかやっぱり、いわく付きですか?

衛:あ、ああ、いや、まぁ、普通に貸し物件だったんなら大丈夫だとおもう。

ジ:??

レ:とりあえず中に入りましょう。荷物置きたいですし。



ジ:…ふぅ、じゃあ街へでよう。

衛:…ちょっと待った。

ジ:ん?

衛:ジェンク、街に行くよりも先にここの掃除をするべきだと思う。

レ:そうですね、最初来たときはよく見なかったんですけど、たしかにこの汚さは人の住んでいるところじゃないですね。

ジ:自分の家を棚に上げてよく言う……わかった。んじゃ、全室とは言わなくても、使うところぐらいは掃除しよう。

衛:手伝うよ。流石に二人じゃきついだろう。

ジ:悪いな。





ジ:綺麗になったなぁ。

レ:そうですね、こうしてみるとかなり豪華な感じですよ。

衛:乗りに乗ってたからなぁ。おかげでもう夜だけど。

アー:掃除の極意は一度始めたのなら最後までやることだ。途中でやめると続きをやらなくなる。

衛:…ちょっと待った。何でアーチャーがここにいる?

アー:凛から彼らを見張るよう命じられたのでね。だが、彼の手際があまりにも見ていられず、つい加勢させてもらった。ああ、夕飯の心配なら不要だ。遅くなると連絡をしてある。

ジ:へー、武人かと思ってたが、家事うまいのな。

アー:なに、この程度、環境次第で誰にでも身につく。

レ:いやぁ、いきなり気配が現れたので驚きました。危なく斬っちゃうところでしたよ。

アー:私とてサーヴァント、そう易々とやられはしない。

衛:…はぁ、それじゃあ、家に戻ろう。パセリちゃんももう良くなってるだろうし。

ジ:だな。




ジ:おーいパセリー、良くなったかー。

桜:お帰りなさい、先輩、それにジェンクさんとレイトさんも。

ライ:パセリなら今お風呂ですよ。

ジ:あ、もうそんな時間か…本当にいろいろ悪かったなぁ、さらに風呂まで借りちまって。

衛:気にするなって。まぁ、とりあえず上がってくれ。

ジ:おじゃましまーす。



凛:あの双子館を借りた物好きって、あなた達だったのね。

衛:え、知ってたのか?

凛:さっき知ったのよ。賃借人の資料ちゃんと見とけば良かったわ。

衛:…待った。遠坂、賃借人の資料って…もしかしてあの洋館、遠坂が貸してるのか?

凛:え?ああ、そうよ。あの館は魔術協会から管理を任されてるから。

ジ:ああ、そうだったのか。あんな安い値段で貸してもらって、ありがとうな。

凛:……もっと高くしてもいける、か…

ジ:いや、むしろもっと高くないと逆に怪しいぞ。あの建物であの値段じゃあどう見てもいわく付きだ。

凛:だから今まで借り手が着かなかったのね、迂闊だったわ……

桜:ところで、そこってどこにあるんですか?

衛:あれ、桜は知らなかったっけ?ほら、新都の街から少し森へ入ったほうに、洋館が見えるだろ?

桜:えっと、わかるようなわからないような。

ジ:よし、それじゃあ、折角だから明日は家で宴会やろう。

レ:宴会ですか?

ジ:そ。ここの人っちには世話になってるし、みんな呼んで。…どうだろう?

衛:俺は大丈夫。みんなは?

凛:そうね、構わないわよ。

桜:私も大丈夫です。

衛:みんなオーケーみたいだ。セイバー達もいいよな?

セイ:呼んでいただけるなら。

ライ:すいません、明日はバイトがあるのですが…

ジ:ありゃ、それは残念。

ライ:遅れていきますので、私のことは気にせず、どうぞ。

ジ:ういうい、それじゃあ、明日はよろしく。

パ:上がったよー、あり、なんかおもしろい話してた?

ジ:おう、パセリ、実はな――














ジ:さて、パーティとはいったものの、どうしよう。

レ:とりあえず料理は僕が作ります。パーティといっても用意するのはそのくらいじゃないですか?僕らは一般人な訳ですし。

パ:あ、それじゃあ、外でやるのはどう?

ジ:あ、それはいいな、天気もいいし。
そうと決まればテーブルとか外に出そう。

衛:おーい。

ジ:あれ?衛宮、まだ早いぞ?

衛:いや、手伝いに来たんだ。男手でも料理手でも使ってくれ。

レ:あ、それならジェンクさんを手伝ってください。

衛:わかった。

ジ:うし、じゃあテーブル運ぶか。あ、パセリ、レイト一人じゃ大変だと思うから、ちょっと手間してやってくれ。

パ:りょーかい!




ジ:うん、こんなもんでいいか。

レ:ジェンクさーん、ちょっと買い物お願いしまーす。

ジ:おーう。

衛:じゃあ、新都の店でいいよな?

レ:はい、どこでも買えそうな物ばかりですので。

ジ:よし、じゃあ行こうか。



ジ:ええと、買う物はこれで全部か?

衛:ああ、そうだな。あとは……

??:あれ?エミやん、こっちで買い物とか珍しいね。

衛:ネコさん。ちょっと事情がありまして。

ネ:ふーん、あれ、そっちの方は?

衛:あ、それが――



ネ:はぁー、あ、初めまして、蛍塚ネコです。

ジ:こりゃどうも。

衛:折角だからネコさんもどうですか?パーティ。

ネ:パーティかぁ。大河も来るんでしょ?あたしも行きたいところだけど、店に戻らないといけないんだよね……あ、そうだ、じゃああとで差し入れ持ってくよ。

ジ:お、そいつはありがたい。じゃあ場所を……

衛:…ネコさんの差し入れって、酒ですよね?

ネ:決まってるじゃない。いいやつ見繕っていくからね。

衛:…あの惨状が再び。

ネ:ん、どうしたのエミやん。

ジ:ああいや、何でもないすよ。それじゃこれで。



衛:いいのかジェンク。また一昨日の繰り返しだぞ。

ジ:大丈夫、何とかなるさ。

衛:……その楽観視はどこから…



ジ:もどったぞー。

パ:あ、おかえりー、もう何人か来てるよ。庭のほうにいるから。

ジ:りょーかい。



ジ:ええっと、誰が来てるかな、っと。

凛:あら、帰ってきたわね。

桜:もうすぐ準備も終わりそうですよ?

セイ:シロウ、ジェンク、お帰りなさい。

アー:凛、私は小間使いではないのだがな…

凛:生まれ持った才能を使わない手はないでしょう?いいから手伝う!

イリ:あっ、シロウー、来たよー!

?:全く、このようなもの、アインツベルンであればもっと豪華な…

??:イリヤ、嬉しそう。
???:


ジ:ええと?イリヤはわかるんだが、後ろの方々は?

?:失礼いたしました。私、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン様のお世話をしています、セラと申します。

??:…リズ。よろしく。

ジ:どうも、一応主催のジェンクです。…それにしても、イリヤってすごいお嬢様なんだな。それじゃあこんなホームパーティ程度じゃ納得もしないか。

イリ:え?そんなことないわよ。シロウもいるし、わいわい食べるのが楽しいの。

ジ:それならよかった。…衛宮、モテモテだな。

衛:よしてくれ、あとが怖い。



ジ:ええと、んで、あとは誰が来るんだ?

衛:藤ねぇと…あと一成と葛木先生に零観さんだな。

ジ:結構呼んだなぁ。


ピンポーン…ピンポーン…


レ:誰か来ましたよ……っていうか、何時の間にチャイムなんてつけたんですか。

ジ:まぁ、気にするな。…はいはーい、今行きまーす。

藤:やっほー、もう始まってるー?

ジ:いやいや、まだ時間じゃないし。

零:ジェンク殿、我々まで呼んでいただけるとは、感謝いたしますぞ。

ジ:そんな、気にしないでくださいよ。さ、こちらへ、もうすぐ始めますんで。

葛:此度は世話になる。妻も連れてきたが、構わんだろうか?

ジ:え?ああ、構わないですよ。もとよりそのつもりでしたし。

キャ:よろしくお願いしますわ(殊勝な心がけね。逃げたことは大目に見てあげましょう)

ジ:こちらこそ(元々争う気なんてないしな。良好な関係にしたいもんだ)

柳:お招きいただきありがとうございます。さして面識もない我々も呼んでいただけるとは…

ジ:んー、まぁ、気まぐれみたいなものだから、今日は楽しんどいてくれ。

柳:は、はぁ…

パ:ジェンクー、準備できたよー。

ジ:おう!そんじゃ、行こう。



ジ:えー、今日は集まってくれてありがとう。パーティっつっても、そんな大したもんじゃないので適当に楽しんでもらえればいいと思う。それじゃあ――乾杯!

全員:かんぱーい!

レ:これはまた随分な人数集めましたね。

ジ:だなぁ。知り合いに片っ端から声かけたからなぁ。

レ:まぁ、作り甲斐があるんでいいんですけど。

桜:あ、おいしい…

凛:なかなかやるわね……

衛:レイトさんって、なんか完璧だな。

セイ:(コクコク)

アー:掃除の腕はなかったがな。

パ:あー、確かに。自分の家とかかなり酷いことになってたもん。

衛:そんなに凄いのか。

パ:足跡ができるぐらい埃は溜まってたし、蜘蛛の巣は張り放題だし、物はごちゃごちゃだし。

柳:…彼は本当にそんなところに住んでいるのか?

ジ:いやまぁ。(レイト、つっこみ不在のままおまえの印象がどんどん悪くなっていくぞ)

ピンポーン…

ジ:あれ?ほかにお客さんは呼んでないんだが……

?:すみません、こちらにジェンクという方は…

ジ:あー、俺ですけど、お宅さんは?

?:あなたですか。実は、コペンハーゲンから届け物を頼まれまして。

ジ:コペン―ああ、ネコさんからか。そういえば差し入れするとか言ってたっけ。

?:それでは、ここに置きますよ。

ジ:ああ……って多いな!おーい、誰か手伝ってくれー!

衛:なんだなんだ?

?:っ!?

衛:あれ?……バゼットさん?なんでここに?

バゼ:シ、シロウ!なぜこんなところにいるのです!

衛:いや、それはこっちが聞きたいんだが…

ジ:衛宮、知り合いか。

衛:ああ、まぁ。…でも意外だったな。何時の間にコペンハーゲンで仕事を?俺がバイトしてるときには見かけなかったけど。

バゼ:…今日からです。アルバイトを募集していたので行ったら、いきなりこれをですね…

ジ:……なかなかワイルドな人だな、ネコさんも。一人で運ぶ量じゃないぞこれ。

バゼ:そういったわけで、これからまだ面接があるので。

衛:いや、たぶんもうないと思う。

バゼ:な!?どういうことですか!

ジ:うーん、確かに。すでに仕事に入ってるしなぁ。もう採用されたってことでいいんじゃないか?

バゼ:そ、そうですか?私はてっきり試されているものだと……戻って確かめます。それでは。

衛:……今度は何日持つかなぁ。

ジ:何日って……



ジ:で、この酒の山なんだが。

衛:…ネコさん、商品にならないようなのをまとめて処分にかかったな。ちょっと二人じゃ厳しい量だな。

ジ:バゼットさんは一人だったけどな。

衛:あの人は人並みはずれてるしな。あと、たぶんランサーが手伝ったんだろ。

ジ:ランサー?

衛:説明はまた会ったときにでも。…さて、おーい、もう何人か手伝ってくれー。



イリ:バーサーカー、出番よ。シロウたちを手伝ってきなさい。

バー:■■■■■ー!

凛:っ!いたの!?

イリ:驚いたでしょー。

凛:よく隠れていられたわね……



ジ:うお!?なんだこのでっかいのは!

衛:バーサーカー!?

イリ:シロウー、手伝うよう言ったから使ってー。

衛:あ、ああ、わかった。…じゃあ、バーサーカー、この山、庭の会場まで運んでくれるか。くれぐれも割らないようにな。

バー:……………

ジ:すげぇ、軽々と。

衛:…まぁ、パワーが取り柄だからな。さて、俺たちも戻ろう。



零:おお、これはよい酒ですな!

藤:むむむ……なかなかやるなオトコ。この場にいたら敵ながら誉めて使わすところよ。

桜:でも…こんなにたくさんどうするんですか?私たちは飲めないですし…

葛:ふむ、いや、構わんだろう。酒の味を知るのも勉強だ。

柳:なっ、宗一郎兄!?

凛:よーし許可が出たわよ、飲みましょう。

ジ:うーわー、グダグダになりそうな予感。

衛:……おれ、レイトさん手伝ってくるわ。

ジ:衛宮…逃げたな。

イリ:あれ?シロウは?

ジ:台所にいったぞ。手伝ってやると喜ぶかもよ?

イリ:そうね、面白そう!

レ:ふぅ……

ジ:お、衛宮と代わったか?

レ:ええ。…それにしても、大量に用意しておいて良かったですねぇ、食材。

ジ:全くだな。さて、レイト、俺らも飲むとしようか?

レ:そうですね。



ジ:柳洞ー、そっちはどんな感――おおぅ、なかなか酷いな…

柳:ええ…全く困ったものです。

ジ:あれ、飲んでないのか?

柳:いえ、不本意ではありましたがいただいています。 なにせ――

凛:一成ー!次はセイバーと勝負よ!

柳:――こういった状況なもので。

ジ:…大変だな、柳洞。

凛:次の勝負はこれよ!

どんっ!

ジ:うおっ!?なんだこの色、絶対やばいだろ!

桜:おいし〜ですよ〜?姉さんの特製ですし〜

ジ:間桐さん酔ってるー!いやいやいや、明らかに口に入れていい色じゃないから!

柳:そんなことありませんよ、もう2杯ほど飲んでいますが。ジェンクさんこそ酔ってるのでは?

ジ:いや俺まだそんなに酒飲んでないから!そうだ、食通のセイバーならおかしいのわかるよな?

セイ:酒に味など関係ない。必要なのは量と強さのみ。

ジ:黒化していらっしゃるー!

凛:あら、ジェンク、折角来たなら飲んで逝きなさい。さあさあさあ!

ジ:い、逝きたくねゴボッ……






?:……く……お………

ジ:(……ん…?)

?:……ンク………そろ…

ジ:(…なんだ……?)

パ:……ンク、ほら、起きてよ、ジェンク!

どすっ!

ジ:ぐえっ!?

パ:あ、やば。

ジ:げほっ…パセリ、朝から随分な挨拶だな。

パ:う、ごめん。…でもさ、さっきから起こしてるのにぜんぜん起きないんだもん。

ジ:む…そりゃ悪かったが…。あれ?俺何時の間に寝たんだ?

パ:え?凛に潰されたじゃん。

ジ:あー……、オーケー、何となく思い出した。みんなはちゃんと帰ったか?

パ:あ、うん、だいぶ潰れてたけど、士郎と凛と桜はそれぞれのサーヴァントが、一成は零観さんが、大河は組員さんが迎えに来て帰ったよ。

ジ:そうか。って、他の人は?

パ:あとはみんな普通に帰ったよ?……あ、セラだけ潰れててバーサーカーに背負われてたけど。

ジ:…なるほど了解。じゃあ主立った奴らは二日酔いで今日は動けんな。……俺も含めて。

パ:あ、やっぱりヒドい?

ジ:ああ、かなりな。悪いがもう一眠りするわ。

パ:じゃあレイトにも伝えとくね。

ジ:頼んだ……






ジ:よーし、復活!

レ:全く、だめですよあの程度で潰れては。

ジ:いや、あれグイグイいくとか普通に無理だから。

レ:そうですか?意外と何とかなるものですよ。

パ:というか、レイトは二日酔いすらならなかったよね…

ジ:化け物かこいつは…

ぴんぽーん…

レ:おや、誰でしょうか。

パ:はいはーい……ジェンクー、士郎が来たよー。

ジ:お?なんだろ。



衛:よ、大丈夫だったか?

ジ:いきなり逃げたくせによく言う…

衛:そう言うなって、俺だってあのあととっつかまって潰されたんだから。

ジ:あのおぞましいカクテルでか?

衛:ああ…なんか混沌としたやつでな…

ジ:……………

衛:……………

ジ:……で、今日はどうしたんだ?

衛:ああ、そういえばまだ新都の案内をしてないと思って。

ジ:あ、そうか、忘れてたな。

衛:そっちがよければ今から行こうかと思うんだが…

ジ:ああ、ちょっと確認してくる。




ジ:みんなオッケーだ。

衛:よし、じゃあ準備できたら行こう。



ジ:あれ?これって深山方面だよな?

衛:ああ、新都っていうと街中ばかりだから、ちょっと外れてみるのもいいだろ。

パ:こっちには何があるの?

衛:もうすぐ着くよ。…ほら。

ジ:お、公園か?

レ:橋の袂にこんなところがあったんですね。


パ:綺麗なとこだねー、風が気持ちよさそう。

衛:ああ、適度に人も少ないし、一息つくにはいい場所だぞ。

?:おーい、衛宮ー。

衛:え?ああ、なんだ美綴か。

綴:む、何だとは失礼な。……あれ?もしかして取り込み中だった?

ジ:ああいや、気にしなくていいよ。ちょっと新都を案内してもらってるだけだし。

綴:いやいや、こっちも大した用がある訳じゃないし。っていうか衛宮、この人たちは?

衛:ああ、ちょっとした成り行きで……

ジ:こっちに来たばっかの時に世話になったんだ。俺はジェンク、で。こっちがレイトとパセリ。

レ:どうも。

パ:よろしく〜

綴:あ、どうも。あたしは美綴綾子。衛宮とは元同門さ。

レ:同門?

衛:部活のことだ。弓道部だったんだよ。

パ:士郎って弓やるの?

綴:衛宮の弓は凄いよ。

衛:あんまり言わないでくれよ。それに、今はもうやってないし。

綴:もったいないなあ。っていうか射で白黒つけるって話、忘れてないだろうね。

衛:…また、そのうち。



綴:で、何だってこんなところ案内してるの。街の方案内しないと意味ないでしょ。

衛:まぁ、それはそうなんだが…

レ:街の方は適当に歩き回ってだいたい把握したもので。

パ:今日はそれ以外を案内してもらうんだー。

綴:なるほどね。

衛:美綴、どこかいいところないか?

綴:あたしに聞かれてもね……じゃあ、港なんかは?

衛:港か…

ジ:ん?なんか嫌そうだな。

衛:別に嫌って訳じゃないが……まあいいや、港に行こう。

レ:なんでしょうかね、いったい。

パ:何となく想像つくけどね。

ジ:まぁ……あの光景だろうなぁ。



衛:さて、港についたんだが…

ジ:港は普通に港だな。貨物か漁港か…客船のくる港じゃないな。

衛:ああ、貨物港だ。結構眺めもいいし、ふらりと来るにはいいところだぞ。あと一応釣りもできる。

ジ:うん、まぁ、釣りはやらないからいいんだが……となるとあっちで騒いでるのはそれか。

衛:あまり近寄りたくないんだが……




アー:フィィィィッシュ!どうだ英雄王、この大物は。

?:ふん、偽物が我に勝てると思っているのか?

子供A:あっ、ギル、これ引いてるよ!

ギル:ケンタ、大丈夫だから竿を引いてみろ。アレを越えるモノがかかっているぞ。

子供A:あっ、本当だ!

子供B:ギルすげー!

ギル:はっはっは、雑種ども、誉めても何も出んぞ?

子供C:……釣れてる?

??:いい加減別の場所を探すか………



ジ:うん、別の場所へ行こう。首突っ込むとどうなるかわからん。

レ:衛宮さんも大変ですね。

衛:ははは…はぁ。



衛:あと他に見るところは…教会ぐらいか。

ジ:教会があるのか?

パ:私、教会って入ったことないなぁ。

レ:そうですか?僕は馴染み深いですが。

ジ:あー、日本人はアバウトな割に仏教強めだからなぁ。
教会に用があるのはキリスト教徒と結婚式ぐらいか?

衛:ああ、確かに。この辺は深山の洋館街もあるが外人が多くてね。
…実のところあそこのシスターとはあまり関わりたくないんだが。

ジ:?なんだ、馬が合わないのか?

衛:行ってみればわかるよ。悪いが俺は外で待ってる。

レ:なんでしょうね?

ジ:……まぁ、だいたい知ってるんだがな。

パ:こっちは初対面の一般人だし、大丈夫じゃない?

ジ:ま、とにかく行ってみよう。



ジ:すいませ〜ん……お?

パ:うわぁ…

レ:パイプオルガンですか。弾いてるのは…あちらのシスターですね。

ジ:終わるまで待たせてもらうか……あ。

パ:気づいたみたいだね。

レ:演奏を妨げてしまったでしょうか。

??:お気になさらず、元々終わりなどない曲です。見ない方々ですが、観光……ではありませんね。どういった用でしょう。戦士はお呼びではありませんが。

ジ:…いきなり拒絶かよ。っていうかレイト、バレてるぞ。まだまだだな。

レ:そうですか?結構がんばって隠してるつもりなんですが……

??:あなた方三人共です。

パ:え…わたしも!?

ジ:ううむ、まぁ、サンドフォール持ってるしな…。まぁシスターさん、落ち着いてくれ。とりあえず落ち着いてくれ。

レ:僕たちはただ観光がてら引っ越しの挨拶に来ただけですよ。

??:なるほど、それが建前ですか。真実はいかなるモノか怪しいですが、ひとまずそれを信じるとしましょう。

レ:…なんかムカつきますね、この人。

ジ:まぁまぁ、とりあえず今日はそんだけだ。先週ぐらいに新都に引っ越してきたんで、挨拶に来ただけさ。

パ:私が関本葉芹で、こっちがレイト、あっちがジェンクね。

??:私はカレン・オルテンシア、この教会を任されています。悩みがあればいつでも聞きましょう。

ジ:あんたに警戒されてるのが一番の悩みかなぁ。

カレ:それは良かったですね。

ジ:聞く気ゼロかよ。まぁいいや。教徒でもないし帰るわ。んじゃな。

パ:また遊びに来るね〜



ジ:パセリ、遊びに行くって、本気か?

パ:うん。あ、別にジェンクたちは来なくてもいいよ?

ジ:あ、ああ、誘われても行く気はないが……



衛:あ、戻ってきた。

ジ:一応挨拶だけしてきたよ。で、ここで終わりだっけ?

衛:そう…だな。街の方はいいんだろ?

ジ:ああ。

レ:そっちは暇なときにでも散策します。

衛:じゃあ、こんなところだ。

ジ:悪かったな、この間っからいろいろ。

衛:気にするなって。困っていたら助けるのが当然だろ?

ジ:さらりとその台詞が出てくるのが凄いよ。んじゃあ今日も世話になった、ありがとう。

衛:ああ。そうだ、なんかあれば気軽に来てくれ。大したもてなしはできないが…

ジ:わかった。じゃあ家も勝手に来てくれて構わないぞ。鍵は表札の裏にあるから。

衛:表札?そんなのあったか?

ジ:昨日蒲鉾板で作った。

衛:蒲鉾板かよ。









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