SS集
冬木市へ疎開の巻その一(2009.5.25〜)
パ:こんにちはー!って、あれ?どうしたの二人とも。
ジ:ああ、ちょっと疎開。
パ:……空襲でもあるの?いや、ここならあり得るかも…
レ:無いですよ流石に。…ウィルスから逃げるんだそうですよ?
パ:あー…、豚インフルエンザのこと?
ジ:そうそう。ここは異世界とはいえ、あの世界の人間が一番来るからな。移されちゃたまらん。
パ:……で、どこに逃げるの?
ジ:そうだなぁ……冬木にでも行ってみようか。
パ:あ、Fateの?
ジ:そうそう。何故かサーヴァントが全員残っているバージョンのな。
レ:そういうわけでしばらく図書館は閉館します。
パ:私も行きたいなぁ。
レ:だめですよ。学校もあるでしょうに。
パ:えぇ〜
ジ:…いや待て、パセリに掛かられたら間違いなく移るな…よし、パセリ、一緒に来い。
レ:ちょっ、ジェンクさん!
ジ:大丈夫だよ。勉強はレイトが教えられるし、家を空けることについては(ご都合主義な設定が語られています)ってことで問題ない。
レ:………はぁ、わかりましたよ。
パ:やった〜〜!
ジ:よし、それじゃあパセリ、準備しとけ。明日荷物を取りに行くから。
パ:了解っ!
ジ:さーて、準備もできたし、出発しよう!
レ:今回の出口はどこになるんですか?
ジ:まだ行ったこと無いからなぁ。まぁ、人目に付くようなところには出ないよ。
パ:うーん、前2回は確かにそうだったけど…
ジ:だいじょぶだいじょぶ。んじゃあ行くぞ〜(ガチャッ)おわっ!?
レ:ジェンクさん!(がしっ)
ジ:あ、あっぶねー!まさか空中とは思わなかったー。
パ:……あれ?ここって、家の中?
レ:みたいですね…。ジェンクさん、わかります?
ジ:んー、おそらくだが、いろいろ赤いところを見る限り―――
?:――人の家に入り込んで、何をするつもり?
ジ:おっと、家主様のご登場みたいだ。
?:あの結界を壊さずに抜けてくるなん…て…?
レ:あ、どうもこんにちは。すいませんご迷惑をおかけして。
パ:…レイトも大概よね。この状況で挨拶してまともな返事は来ないでしょ。
ジ:全くだ。
?:な、何がおこってるの!?
??:落ち着け、凛。何者かはわからないが少なくとも話は通じるだろう?
凛:……そうね、直接ふんじばった方が早いか。
ジ:あー、悪いんだが、とりあえず降りてもいいか?
??:かまわんよ。ああ、土足でいい。
凛:アーチャー、とりあえず拘束しといて。
アー:…すまんな。だが、いきなり人様の屋敷に現れた君たちも悪い。
レ:いえ、当然の判断だと思いますよ。
パ:そうよね。いきなり空中に穴があいてそこから人が出てきたら、誰だって警戒するわよねぇ。
ジ:……普通の人は反応に困ると思うぞ、警戒以前に。
凛:…で、あんた達は何者?何が目的でここに侵入してきたの?
ジ:あー…そうだな。信じられない話かもしれないが、信じてくれるか?
凛:それは私が聞いて判断するわ。
ジ:そうか…。とりあえず自己紹介だな。俺から順にジェンク、レイト、パセリだ。で、何しに来たかってことなんだが…
パ:縛られといてよくあんな冷静に話せるよねぇ。
レ:そりゃあジェンクさん、慣れてますし。
ジ:うるさいよそこ。
凛:いいから話を進めなさい。
ジ:…そうだなぁ、ちょっと疎開してきた、って感じなんだが…。
凛:…真面目に答えないと、死んだ方がましな目に遭わせるわよ?
ジ:いやいや、別にふざけてないから。
凛:ふざけてないって、何で見ず知らずのあんた達が家に疎開してくるのよ!
レ:…あの、ジェンクさんじゃ埒が開かない気がするので、僕が説明してもいいですか?
アー:…ああ、そうしてくれ。君の方がまともな様だ。
レ:実は僕たち、異世界から来ました。
凛:……は?
レ:理由は「新型インフルエンザ」から逃げるため、ですね。
凛:…ちょっと待って。「異世界」って…「平行世界」の事?まさか第二魔法を…?
ジ:あー、いや、そんなサイエンスフィクションじゃなくて、もっとこう、ファンタジックな。
レ:まさに「異なる世界」ですね。大陸どころか世界の在り方すら違うところが多いですし。
凛:…信じがたいわね。そんなもの、魔術協会では観測どころか予測すらされていないのに。
ジ:まぁ、普通はそうだわな。
アー:だが凛、彼らが現れた状況を鑑みるに、まるきり嘘というわけでもあるまい。
ジ:本当だっつーに。
凛:…まあいいわ。それで?わざわざ家にきたのはどうしてかしら?
レ:どうして、と言われても…
パ:たまたま出口がここだっただけだよねぇ?
ジ:ああ。他世界への扉はこちらじゃ決められないからな。
アー:こう言っているが?
凛:………そうね。私の幾重もの結界をすり抜けられるような魔術師だったら、目の前で縛られてるわけもないものね。
ジ:もっと早く気づいてほしかったんだが…ともあれ、疑いも解けたみたいだし、縄を解いてくれないか。
凛:魔術師じゃないのはわかったけど怪しいのは変わりないわ。…アーチャー、あの箱を持ってきて。
アー:…何をするつもりだ?
凛:ちょっと場所移動をね。
アー:やれやれ……これでいいのだろう?
凛:ええ。それじゃあ三人とも、ちょっとこの中を覗いてくれない?
ジ:嫌な予感しかしないんだが…
凛:いいからいいから。
ジ:…なんなんだ?いったい。
パ:何にも入って無いね。
アー:すまん。(ぐいっ!)
ジ:うお!?
パ:え!?
レ:ちょっ!?
(ぱたん)
凛:これでよし、と。アーチャー、行くわよ。
アー:彼らも可哀想に…
パ:………ええと、何これ?
レ:魔術的な道具のようですね。明らかに容積がおかしいですし。
ジ:…第二魔法を応用した箱だよ。よくわからんが外見以上に中身が入るらしい。
パ:さっきから気になってたんだけど、第二魔法ってなんだっけ?
ジ:あれ?もしかしてFate未プレイ?
パ:うん。二次創作をちょっとかじったぐらい。
ジ:そかそか。…第二魔法は「平行世界の運営」といって、平行世界、パラレルワールドのことだな、それを自由に行き来する魔法だ。
レ:あの扉も似たような魔法なんでしょうかね。
ジ:さぁなぁ。……ん?
レ:あ、蓋が開きそうですね。
パ:もう着いたの?
ジ:時間の流れがどうとか…まぁいいや、さて、ご対面だ。
(ぎぃ…)
?:……改めて外から見ると、異様だなぁ。
??:第二魔法を応用したゼルレッチ翁の宝箱ね。
凛:出ていいわよ。あ、靴は脱ぎなさい。
ジ:この状態でどうやって脱げと。
凛:あ…
?:はぁ、新聞紙持ってくるから、その上に出てくれ。
レ:すみません。
??:礼を言う必要はないわ。リンが悪いんだから。
凛:う……
ジ:なー、いい加減縄解いてくんない?
凛:…そうね。流石にここから逃げるのは無理だろうし。
ジ:助かる。……ってて、腕固まっちまった。
?:それで遠坂、なんだって家に連れてきたんだ。
凛:ちょっと気になることがあって、是非を問いにきたのよ。イリヤもいるのなら好都合ね。
イリ:ふぅん、私を当てにするなんて、リンじゃないみたい。
???:それで、その問いとは?
凛:ええ。実は………
(経緯説明中)
????:異世界…ですか?
凛:そう。平行世界とも異なる全く違う世界、だそうよ。この話、どう思う?
?:そんなことを言われてもな…遠坂にわからなかったもんが俺にわかるわけ無いだろ。
????:私も先輩と同意見です。
凛:衛宮君や桜は元々当てにしてないわよ。
?????:異世界はありますよ。
桜:ライダー?
ライ:英霊には、複数の出自を持つ者、異界の歴史を持つ者がいますから。
凛:…それは、異世界の英雄ってこと?
イリ:そうね。英霊にとっては、普通いくつもの世界で信仰を受けているから、常識のうちなのよ。
凛:…アーチャー?
アー:私が属するのはこの世界のみだ。他の世界など知らん。
パ:……あのー、私たちはどうなるんでしょーか。
レ:完全に放置ですね。
ジ:ふむ。しゃーない、終わるまで待つか。
ジ:ええと、とりあえず話は信じてもらえたのか?
衛:…よくわからないが、その異世界?から逃げてきたって事でいいのか?
レ:そうですね。別に追われてた訳ではないんですけどね。
???:?、では、何から逃げてきたのですか?
パ:病気。新型のインフルエンザが流行っちゃって。こっちは…大丈夫だよね?
桜:そうですね…ニュースでも特に言ってませんし、大丈夫だと思いますよ?
パ:よかった〜
ジ:で、俺たちの処遇はどうなるんだ?
衛:遠坂、悪い奴らには見えないぞ?解放してもいいんじゃないか?
凛:ん……そうね、今日のところはいいわ。
ジ:今日のところは、ってことは、またなんかあるのか。
凛:当たり前じゃない。私の家に勝手に出入り口開けておいて、何のお咎めもないと思ってんの?
パ:確かにその通りだよね。
レ:流石に仕方ないですね。
凛:明日またここに来て頂戴。いろいろ聞き足りないことがあるから。
ジ:へーい。
ジ:そいじゃ、今日のところはお暇するよ。
衛:待った。異世界からきたっていうなら、宿がないんじゃないか?なんならまだ部屋が余ってるから…
ジ:ああいや、気持ちは嬉しいが大丈夫だ。新都の方にも行ってみたいし。
衛:じゃあ、新都のホテルに?
レ:そんなところですね。いくつかピックアップもしてありますし。
凛:それじゃあ、明日は学校があるから、夕方6時頃に来て頂戴。
レ:わかりました。
ジ:……さて、なかなかえらいことになったな。
レ:不可抗力だったんですけどねぇ。
パ:それはそうと、ホテルなんてとれるの?予算的に。
ジ:その辺は大丈夫だ。…まぁ、長逗留は流石に厳しいから、新都の洋館を借りる予定だが。
レ:洋館?その方が高くつきませんか?
ジ:大丈夫だよ。所有者が放置してる物件を借りるだけだから。…無断で(ぼそっ)
〜次の日〜
ジ:さて、奴らとの呼び出しは夕方だから、今のうちに家を見てくるか。
パ:家って…あ、昨日言ってた洋館?
ジ:そ。地図は手に入れたから行ってみよう。
パ:うわぁ、凛の家に負けず劣らずの豪邸だねぇ。
レ:ただまぁ、手入れされてないせいかどことなくゾッとしますね。
ジ:そうだな。まずは掃除からか。
パ:…ふぅ、こんなもんかな?
ジ:上出来だろ。仮住まいには十分だ。
レ:さて、時間まではまだ全然ありますし、あとは街を見物しますか。
ジ:そうだな。
パ:あ、それなら、なんか大きいショッピングモールがあったよね?そこに行きたいなぁ。
ジ:ええと……あ、ここか。そんじゃあちょっと行ってみるか。飯も食いたいし。
ジ:……というわけで、パセリの希望で来てみたぞ。
パ:やー、うち田舎だから、こんな大きいところないんだよね。
レ:まぁ、都会ではないですよね。ド田舎でもないですけど。
ジ:あ、そうだ忘れてた。注意しておくけど、この世界の住人に対するときは必ず初対面から入ること。
レ:あ、了解です。
パ:え、なんで?
ジ:向こうが初対面なのにこっちが一方的に知ってるとか、あまり気分のいいもんじゃないだろ。特に異世界から来たことを知ってる相手としてはな。
パ:あ、そうか。
ジ:あと、魔術師連中はともかく、一般人には異世界から来たことも秘密な。
パ:はーい。
ジ:よし、それじゃあ行くか…と、ん?あれは…
???:おや、こんなところで会うとは、奇遇ですね。ジェンクにレイトにパセリ、で合っていましたか?
ジ:ああ。あんたは……
???:ああ、そういえばまだ名乗っていませんでした。私のことはセイバーと呼んでください。
ジ:わかった。ところで、何でこんなところに?今日は学校があるって言ってなかったか?
レ:(平然と話しますね)
パ:(ホントは知ってるのに)
セイ:リンやシロウは行っています。私は学校には所属していませんから。
パ:そうなの?学生さんぐらいの年に見えるけど…
セイ:私は行く必要がありません。…それを言うならパセリも学校に所属しているのではないですか?
パ:う、痛いところを…
レ:まぁまぁ…セイバーさん、僕たちは店を見て回るつもりなんですけど、いかがですか?
セイ:いや、こちらも所用があります。ではこれで。
ジ:……とまぁ、現在俺たちはサーヴァントも知らんことになったので、その辺よろしく。
パ:はいはい…このペテン師め。
レ:パセリちゃんもなかなかでしたよ…
ジ:こんばんわ〜
衛:はいはい…ああ、よくきたなぁ。一方的で高圧的な約束だったのに。
ジ:いや、まぁ、逃げたら怖そうな雰囲気だったからな。
そもそも遠坂さん…だったよな?彼女にへそ曲げられたら俺たち帰れないし。
衛:あぁ…そういえば遠坂の家にゲートがあるんだっけ。まあいいや、あがって。
ジ:うぃす。
凛:来たわね。早速話を――と行きたいところだけど、今日は藤村先生がいるのよね。
桜:あ、藤村先生ならさっき出て行きましたよ。学校から呼び出されたみたいです。
衛:藤ねぇも何やってんだか…
凛:それなら問題ないわね。じゃあ、まずは異世界について知ってる情報をすべて教えてもらおうかしら。
ジ:うお、いきなり難しいことを……まぁいいや、ただ異世界っていっても無数にあるからな。もっと具体的に聞いてくれないと…
凛:それじゃあ、異世界とこの世界の関係性は?
ジ:ああ、それなら――
ジ:―――とまあ、こんな感じなんだが。
凛:なるほどね…信じられないけど、興味深いわ。
ジ:ちなみに、昨日言ってた平行世界ってのはまた別の話だ。あれは同じ世界が枝分かれしたものだからな。
イリ:ちなみに、異界へ渡る魔術を研究している魔術師もいるわよ。表向きは召還術と偽っているけど。
凛:…知らなかった。完成すればもう魔法レベルじゃない。
レ:…あのー、魔法と魔術って、違うものなんですか?
イリ:現代において時間やお金をかければ実現できる結果を生み出すのが魔術、それでしか成し得ない結果をもたらすのが魔法よ。魔法と呼ばれるものは現在5つしか存在していないわ。
凛:それじゃあ次は…
衛:待った。いい時間だし、一旦終わりにして晩飯にしないか?
桜:あ、そうでした、用意はもうしてあるんです。ジェンクさんたちもどうぞ。
ジ:折角だからもらおうか、な。
パ:わ〜い。
セイ:今日の料理は何が出てくるのでしょう。
凛:……そうね、そうしましょう。
衛:それじゃあ、料理を持ってくるぞ。
桜:あ、手伝います。ライダーもお願い。
ライ:はい、サクラ。
パ:うわぁ、豪華〜!
セイ:これは…予想以上でした。
衛:せっかくのお客さんだからな。
桜:今日は普段よりさらに大人数で食べるような料理に挑戦してみました。
凛:さ、食べましょう。
パ:いただきまーす!食べるぞ〜!
ジ:せめて人並みの遠慮はしろよ……
衛:いや、遠慮は本当にしなくていいぞ。今日は分けてないから、早くとらないとなくなる。
ジ:そうなのか…?うおっ!本当みたいだな。
衛:普段はこうならないように分けてるんだけど、今日は分けれないようなものを作っちゃったからな。まぁ、藤ねぇがいないだけマシか。
ジ:そういえば、さっきも言ってたが、「藤ねぇ」って?
衛:ああ、俺の姉さんみたいな人で…
ライ:シロウ、ジェンク、早く食べないと無くなりますよ?
衛:おっとそうだった。また後で話すよ。
ジ:ああ。さて、俺も食うか。
パ:ごちそうさまー!おいしかったー!
桜:お口にあってよかったです。
ジ:ホントにうまかったな…あ、そういえば、まだ名前を聞いてなかった気がするんだが…
衛:え、そうだっけ?俺は衛宮士郎(えみやしろう)。こっちは―――
凛:それじゃあ改めて質問よ。
ジ:お手柔らかに頼むわ。
凛:…とは言っても、特に聞く様なこともないのよね。自力で世界を越えたのなら知りたいことはもっとあるんだけど。
ジ:まぁ、ただ扉をくぐってるだけだしなぁ。
凛:うーん、でも何も聞かないのも癪なのよね。誰かなんか聞きたいこととかない?
衛:いや、特にないなら無理して聞く必要は…あ、それなら、そっちの世界ってどんななんだ?
ジ:お、そういう質問なら大歓迎だ。そうだなぁ…俺の世界のから話すか。
桜:あれ?みなさん別々なんですか?
レ:そうですね、ジェンクさんとパセリちゃんは同じですよ。僕は違うんですけど。
ジ:俺も厳密には違うんだけどな。生活実態はパセリと同じ世界だ。
パ:私たちの世界は、基本的にはこことそんなに変わらないよ。国名とかも同じだし。
凛:そうなの?それじゃあ平行世界みたいなものじゃない。
ジ:近いには近いな。でも、主要な都市こそ同名だが、細かい地名は異なっているし、当然同じ人間もいない。
衛:魔術の類はどうなんだ?
パ:一般的には架空の物扱いだけど…
ジ:否定はされてるが、証明はされてないな。まぁ、悪魔の証明なんてできっこないんだが。
凛:そのあたりもこっちと変わらないのね。
衛:魔術があると知ってるのは一握りだもんな。
レ:では、次は私の世界でしょうか。こちらはですね………
レ:二つあるんですけど、まずは古い方から話しましょうか。
桜:え?二つって…
ジ:最初住んでた世界の事故で一回他の世界にとばされてるんだ。今はそっちに住んでる。
パ:……それ、私も初耳なんだけど。
ジ:あれ、そうだっけ?
レ:そろそろいいですか?…最初の世界は科学の発達した世界でした。イメージで言うと「SFチックな未来都市」といった感じでしょうか。
セイ:シロウ、いまいちよくわからないのですが……
衛:うーん、なんて説明すればいいのか。
レ:空飛ぶ車が走り回り、やたら曲線的でメタリックな建物が建ち並ぶ感じですね。…ただ、治安はあまりよくありませんでしたね。モンスターも暴れてましたし。
パ::モンスター?この間のみたいな?
レ:いえ、科学の極まった先、生物生成の失敗作たちです。
凛:生物生成!?もう魔法の域じゃない!
衛:いい気持ちはしないな…
レ:ええ、それは僕も他の世界で暮らすうちに思いました。でもあの世界では普通ですからね。……それで、世界としての最大の特徴は、「刃物が最強であること」。
凛:え?
衛:…待ってくれ、意味がよくわからない。
レ:世界にはそれぞれ特徴があるんです。あの世界ではそういう概念が基本としてあるので、どんなに堅い盾やバリアを作ったところで、剣に斬れない物はない。…ま、使い手の腕にもよりますけど。
パ:…ほへー、凄いところだね。
レ:そうなんですよ。
凛:なるほどね……衛宮君が活躍するには最適じゃない?
衛:勘弁してくれ…
凛:それで、もう一つのは?
レ:もう一つのは、かなり小さな世界でしてね。町が一つしかないんです。
衛:町が一つ?ってことはこの町ぐらいの広さか?
レ:いえ、一応森とか湖とかありましたから世界としてはもっと広いです。そして最大の特徴は、音がないこと、ですね。
凛:音がない?
パ:うん、一度行ったけど、本当に全くの無音なんだよね。
桜:ということは、風の音とか、そういうものも無いって事ですか?
レ:そうですね。…文明レベルとしてはそれなりにあります。建物様式や町の雰囲気としてはゲーム的な中世といったところでしょうか。あと、物理法則ではなく概念法則に従っているので、若干こちらの常識が通用しないことがあります。
衛:概念法則?
ジ:そのものが持つ共通概念に基づいた法則のことだ。例えば…川。川の概念は「上流から下流に流れる」ことだ。で、山には「上流」、湖には「下流」の概念がある。では、山より高い位置に湖がある場合、山と湖をつなぐ川はどちらに向かって流れるか。
衛:山から湖へ向かって遡る、か?
ジ:正解。まぁ、実際は山より高いところにある湖なんて稀だから、物理法則に沿ってるように見えるけどな。
凛:なるほど、そんなふざけた世界があるのね。
レ:ええ。こんなところでいいでしょうか?
衛:そうだな。そろそろ藤ねぇも帰ってくる頃だし、この話は切り上げよう。
?:ただいまぁ〜、士郎〜今日のご飯は――って、あれ?どうしたの?みんな集まって。
衛:お帰り、藤ねぇ。今日はお客さんが来てるんだよ。
藤:へー、また誰か来たの。
衛:ああ。……ジェンク、この人がさっき話題にでた藤ねぇだ。本名藤村大河、名字で呼んでやってくれ。で、藤ねぇ、こちらがお客さんの、ジェンクとレイトとパセリ。
藤:むむむ…また横文字…今度は何処の人?
ジ:ああいや、別に外人じゃない。これはあだ名みたいなものなんでね。
レ:僕はアメリカンですが。
藤:へー、士郎と仲良くしてあげてね。で、士郎、晩ご飯は?
衛:藤ねぇ…食べてくるって言ってなかったか?
藤:奢ってくれるって言ってたんだもん。でも気がついたら私と葛木先生しか残ってなくて、葛木先生に奢れなんて言えないじゃない。
衛:……確かにな。でも、食べてくるって言ってたから用意なんてしてないぞ。
藤:えー!なんか残ってないのー!
衛:残り物なんてでるわけ無いだろ。…全く、今なんか作るからおとなしく待っててくれ。
桜:あ、わたしも…
衛:あ、いいよいいよ。お茶でも飲んで待っててくれ、ついでになんかつまめるものも作るから。
桜:じゃあ、お茶入れますね。
ジ:ん……あ?ここは……ああ、衛宮の家か…………って、何で俺は衛宮の家で寝てるんだ?ええと、確か昨日は……
(ここから回想)
桜:じゃあ、お茶いれますね。
凛:待って桜、折角だからこれを飲まない?
セイ:ワインですか。それもよいですね。
桜:え、でも、私たちまだ未成年だし、藤村先生も――
藤:あ、それワイン?いいなー、私にもちょーだいよー。
凛:許可はでたわね。桜、覚悟を決めなさい。
ライ:諦めましょう、桜。
桜:ライダー、もしかして飲みたい?
凛:開けるわよー、桜、グラスお願いー。
レ:あ、いい香りですね。
凛:でしょ。結構いいものなのよ。それじゃあ、いただきましょう。
〜30分後〜
衛:おい、大丈夫か?
ジ:まあ、何とか。にしても、飲むなぁみんな。
凛:さぁ、続いては冬木の虎、藤村大河VS間桐桜〜!種目は…藤村先生!
藤:一気!
凛:はい、それじゃあ準備してー、よーい、スタート!…おおっと、桜選手早い早い!あっと言う間に飲み干しました!
ライ:桜、大丈夫ですか?
桜:大丈夫、まだいけるもん。
凛:あっ!なに休憩してるのよ!こっち来て飲みなさい。ほら、イッキ、イッキ、イッキ!
(回想ここまで)
ジ:……なるほど、酔いつぶれたのか俺は。みんなは……あー、無惨な状況だなぁ。
衛:お、大丈夫か?
ジ:ちょっと二日酔いだ。
衛:だろうなぁ。さて、朝食作るから顔洗ってこいよ。洗面所は――
ジ:――さて、それじゃあお暇するかな。衛宮、泊めてくれてありがとう、悪かったな。
衛:いや、こっちこそ悪かった。…ところで、これからどうするんだ?
ジ:んー、特に用事はないから、適当にブラブラしながら買い出しかな。
衛:そうか、だったら、この町を案内するよ。ガイドがいたほうがいいだろ?
ジ:ああ、それじゃあ頼むよ。
衛:任せてくれ。…ところで、あとの二人は大丈夫だったか?
レ:僕は大丈夫ですよ?
パ:なんか頭が痛くて気持ち悪い…
ジ:パセリは完璧に二日酔いだな…
衛:やっぱりな…布団敷くから、しばらく休んでた方がいいよ。
ジ:悪いな。
衛:元はといえばこっちの身内が悪いからな。気にしないでくれ。…それにしても、レイトさん凄いな。だいぶ飲んでたみたいだったけど。
ジ:こいつやたら強いからな。スピリタス常飲できるタイプだ。
衛:そりゃ凄い。じゃあ、ちょっと待っててくれ。パセリちゃん、ついてきて。
パ:ぁ〜ぃ……
ジ:さて、と。レイト、行きたいところは?
レ:自炊しなきゃなりませんから、その関係を。
ジ:わかった。衛宮も料理得意だし、いい店知ってるだろ。
レ:楽しみです。
衛:自炊?ホテルに泊まってるんじゃなかったのか?
ジ:初日はそうしたが、流石に長期滞在になると金が無くてな。新都側にある家を短期契約で安く借りたんだ。
衛:へぇ。でも新都側じゃ高いのばっかじゃないか。
ジ:いや、それがなんかやたら安いのがあってなぁ。いわく付きっぽかったんだが、ぱっと見大丈夫みたいだったんでね。
衛:そんなのがあったのか…。
ジ:で、何処を案内してくれるんだ?
衛:そうだな、まずは――
衛:ここはマウント深山商店街。ここにくればとりあえず一通りそろう。買い物は…他回ってからでいいか。
レ:そうですね、荷物になりますし。
衛:深山町はここを起点としてるんだ。あっちへ行くと遠坂や桜の家がある。
ジ:…遠坂の家は場所を確認しておきたいな。
衛:ああ、じゃあそっちから行こうか。
ジ:へぇ、こっちは洋館が多いな。
衛:ああ、こっちの区画は昔からそうらしい。あ、ここが桜の家だ。
レ:これはまたずいぶんと……
ジ:感想に困る家だな…
衛:まあな……遠坂の家はもうちょっと行ったところだ。
衛:着いたぞ。ここだ。勝手にはいるといろいろ罠があるから気をつけてな。
ジ:オーケーわかった。許可がない限り近づかないようにしよう。
衛:いや、そこまでしなくても……じゃあ、次に行こうか。
衛:さて、深山町は観光地じゃないから、あんまり見るところもないんだよな…
ジ:そうなのか。…特に無いなら別に無理して案内してくれなくてもいいぞ?
衛:…いや、こっちから言い出した手前、諦めたら負けだと思う。よし、次はこっちだ。
レ:おお、これはまた雰囲気ありますね。
衛:柳洞寺…柳洞家の人間が代々住職を勤めるよくある寺なんだが…観光といえば寺だよな?
ジ:そうだな、寺を見に行くととりあえず観光した気になるな。
レ:そこで意思の統一が図れているのが驚きなんですが…
ジ:そんじゃあ、ちょっと拝んでこようかな。
衛:あ、ちょっと待――
?:…何者だ?
ジ:うおっ!?いきなり人が?
衛:――って、一足遅かったか。
レ:ジェンクさん!
衛:アサシン、その人は魔術師じゃないぞ。
アサ:む?セイバーのマスターか。この者は貴様の連れか?
衛:ああ、話すと長くなるがとりあえず危険はないよ。
アサ:だが、妙な力を感じる。ここを通すわけにはいかんよ。
衛:?魔力は無いし魔術回路も持ってないはずだぞ?
アサ:いや、魔術の類ではなかろう。それよりも遙かに特異な…
ジ:あ……あれのことか。あれ、警戒されるからあんまり見せたくないんだよなぁ。
衛:ジェンク……
アサ:何、何れにせよ警戒されることに変わりは無かろう。早々に立ち去ることだ。
レ:一度見せておいてもいいのでは?
ジ:しゃあないなぁ…んじゃあ、『ポイント』―――
(ギィンッ!)
アサ:ほぅ、よい腕だ。
レ:やらせませんよ。
ジ:まぁ、待ってくれ。別に危害を加えるつもりはないよ。ちょっと実演してみせるだけだから…あ、衛宮、ちょっと下がってくれるか?
衛:あ、ああ。
ジ:『ドラッグ』
衛:結界の類か…?
ジ:まぁ、似たようなもんかな。そいじゃ、『カット』。
衛:なっ!?階段が消えた!?
アサ:これはまた面妖な技を使うものだな。
ジ:戻すぜ、『ペースト』。
??:空間隔離…、いえ、物質隔離かしら?
アサ:おや、わざわざ出てくるとは珍しい。
??:変な力が発生したからよ。あなた、異界の管理者ではなくて?
ジ:近いがちょっと違う。俺は『図書館』の館長だ。
衛:ちょ、ちょっと待ってくれ、何がどうなってるんだ?
??:アサシン、彼らは安全よ。通しなさい。
アサ:ふむ、承知した。…そちらの男、一度手合わせ願いたいものだな。
レ:僕はできれば遠慮願いたいですね。
ジ:助かった。あんた、名前は?
??:あら、知っているのではなくて?
ジ:いや、いくら館長でも、すべての蔵書を読んでるわけないだろ?
??:そうかしら?…私のことはキャスターと呼んでちょうだい。
ジ:わかった。
キャ:ところで、そっちの坊やが頭を抱えているようだけど?
ジ:あ、そうか、いろいろ説明しなきゃな…
ジ:―――と、いうことなんだが……衛宮?
衛:…まぁ、とりあえずなんか凄いらしいことはわかった。
ジ:で、できれば内緒にしといてほしいんだが。
衛:ああ、遠坂あたりに知れたらいろいろ面倒そうだしな。
キャ:おわった?それでは、次はこちらの質問に答えてもらいましょうか。
ジ:んー、構わないけど、大したこと答えられないぞ。
キャ:何の目的でこの世界に来たのかしら?
ジ:何って………あぁ、「この世界が本来の筋書きから外れて好き勝手やってるようだから、修正にきた」みたいな答えをご希望か。残念ながらただの観光――
衛:自分の世界で病気が流行ってたんで疎開してきたんだろ?
レ:何いつの間に観光気分になってるんですか。
ジ:――まぁ、そんなとこだよ。
キャ:……嘘はやめなさい。観光?疎開?そんなくだらない理由で自由に世界移動なんて使われてたまるもんですか。
ジ:いやぁ、でも、事実だしな。世界にはそもそも筋書きなんて存在しないし、NGだってほとんどない。『図書館』は好き勝手に綴られた物語をただ収蔵するだけの場所だし、そこの館長はそれを見守るだけさ。
キャ:…まさか、本当にただそのために?
ジ:だからさっきからそう言ってるじゃん。
キャ:……世界間移動に物質隔離なんて魔術師には手の届かない力があるのに、それの使い方がこんなこと?忌々しい…
ジ:…衛宮、なんか不穏なこと言われそうなんだが、逃げていいか?
衛:そうだな。じゃあ、こっちへ。
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