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小説
気に食わないヤツ(ベルフラ?)

――気に食わない

「…ベルセンパーイ。」

あいつは初めて会ったときから、気に入らなくて。

「ベルセンパイってばー。聞いてますかー?」

「…んー?」

カエルの声を軽く受け流し、俺は窓の外をぼうっと眺めていた。

「聞いてる聞いてる…。」

そんな生返事をしながら。

「…絶対聞いてないだろ。この堕王子(ボソッ」

…グサッ

「ゲロッ…」

その呟きを聞き取った俺は、素早く磨かれたナイフをカエルの背中目掛けて投げつけた。

「誰が堕王子だっ。誰がっ!」

「そんなのベルセンパイ以外に、誰がいるんですかー?」

カエルは背中に刺さったナイフを抜き取りながら、小首を傾げて問い掛ける。

「そんっなにナイフ刺して欲しいか?」

「遠慮しときますー。」

と言いながら、ナイフを捨てるカエル。

「捨てんなっ!」

俺はまたナイフを投げつけた。

「…痛いですー。やめて下さいよー。」

「うししっ、ヤダねっ。だって、おもしれぇーもん。」

「ホンッと性格歪んでますねー、センパイ。」

「うっせぇ。」

やっぱ、こいつは気に食わねぇ。
最初から。

生意気だし毒舌だし無関心のポーカーフェイスで。
何考えてんのか分かんねぇし。
すぐ俺のすること成すことに口出してくるし。

「…ムカつく。」

「何か言いましたかー?」

「別に…そんなことより、何しに来たんだよ?」

俺は話を逸らすように、尋ねた。

「…まぁ、いいですけどー。」

「えっとですねー…、ただ今日は任務がないので、センパイに会いに来ただけですけどー?」

「ふ〜ん…。」

……は?
今、何て…。

「だから、暇だったからセンパイに会いに来てあげたって言ってんですー。」

「誰もそんなこと頼んでねぇーし。」

「そうですけどー…。」

カエルはどこか寂しそうに呟いた。

――ムカつく
何だか分かんないけど、とにかく腹が立つ。
胸の辺りがモヤモヤして……。

この気持ちは何なんだ?

てか何で王子、カエルのことばっか考えてる訳?

「…センパイは、ミーと一緒にいるの嫌ですかー?」

「嫌に決まって……」

そこで俺は言葉を詰まらせた。

いつもの俺なら、「嫌に決まってんだろっ。」って言う筈なのに。何で、何でそれが言えないんだ?

――気に食わない
こんなモヤモヤした気持ちにさせるこいつが。
その気持ちが何なのか分からない自分も。

「…嫌ではない、かもな。」俺は小さく呟く。
自分に問い掛けるように。

「ホントですかー?」

「あぁ。」

「良かったですー。」

フランは、今までのポーカーフェイスが嘘のように、にっこりと笑った。
とても嬉しそうに。

――何だよ
こんなの、反則じゃね?


――あぁ、やっぱこいつは気に食わない。
けど…、

「…嫌いじゃない。」

「……?」





その気持ちが何なのか、
ベルはまだ知らない――


end

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あきゅろす。
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