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レンカイとカイレンのお部屋
ある日のレッスンルーム《レンカイ》
「レン君が歌う『右肩の蝶』カッコいいよね」
唐突にカイ兄が喋った。
マスターが珍しく新曲作成に踏み切った。
今回のメンバーは
「そうですね、PV を見てもとても素敵ですよね!」
白髪ボーカロイド弱音ハク。
「ハクちゃんはああいうのが好きなの?…なるぼど…」
一人ぶつぶつと考え込みだした、緑のボーカロイド初音ミク。

後はリンとルカも今回メンバーなんだが、
今は小休憩で席を外している。
「いきなり何だよ?」
ホントにいきなりだ。
想い人にさらっと褒められて、
嬉しい癖にそっけない言葉を返してしまった。
「レン君?そういう時はありがとうって言わなくちゃダメですよ?
折角カイトさんが褒めてくれたんですから」
「大丈夫だよハクちゃん。
アレは照れてる顔だから」
「ああもう!ほっとけよ!

でなんでいきなり蝶?俺はあんまり好きじゃないんだけど…歌詞が」
好きじゃないと言ったけど、周りに好評価だと好きになれそう…。
でも『俺』的にはあれ女々しいんだよな…。
俺はいつでも攻めていたい!
「えー、俺レン君が歌って踊ってる所見たかったのに…」
「…へ?」
「生の右肩の蝶見たかったなって。あ、
やっぱり他所様の曲は踊れない?」
残念そうにしながらもしっかり挑発。
舐めんじゃない、俺だって『鏡音レン』だ!
「出来るに決まってるだろ!ちょっと待ってろよ!」
機械をいじって勝手に曲を出す。
後はスタートさせるだけなのだが…。
「カイ兄、俺が蝶歌うから
カイ兄はワールドイズマイン歌ってくれよ。
勿論振り付け有りで」
「それはミクちゃんのでしょ!?」
人を挑発してくれたお礼に、俺からもカイ兄にリクエスト。ステキ黒スマイルで!
「KAITO の持ち歌可愛いの無いじゃん。
はいけってー!」
「嫌だよ!」
「カイト兄さん…ミクの歌そんなに嫌なの…?」
「カイトさん酷いです!ミクさんの歌、どれも素敵で可愛くて素敵なのに!」
「(素敵二回言った!)男の俺がアレ歌ったら気持ち悪いだけだろう!?」
気持ち悪く無い、笑えるだけ。
場にいた全員で一致。
その雰囲気に赤くなって言葉を失くすカイ兄。
「じゃ、逃げられたらつまんないから先にカイ兄から」
「い、言ってないよね!?俺歌うなんて一言も言ってないよね!?了解もしてないよね!? ね!?」
「スタートー♪」
聞く耳持たず。三人から沸き上がる拍手。
ぱちぱちぱち♪
「カイト兄さんー!」
「ボーカロイドの先輩として、本気を見せて下さいね!」
「カメラ用意しておけばよかったな〜」
広いレッスン室。真ん中辺りにカイ兄を立たせてスタンバイOK。
「可愛い顔でね…」
小さな声でカイ兄に囁く。
頭一個分程の身長差のせいで耳元で呟けないのが
残念だと最近まで思っていたのだが…
「……っ」
その分カイ兄の照れた表情がよく見えると言う
特権がある事が判明してからは
気にならなくなった。
心が決まったのか、静かにスタンバして曲を待つ。
じゃん、じゃん、じゃん…
イントロが流れ出した。
「……」
カイ兄の声だから低いのかと思った。
いや、実際には綺麗な低音ではあるのだが、
ミク姉の曲の為か、裏声なのか。
高音域で歌い始めた。
「結構高いパートも出せるんですね!」
「カイト兄さん…なんか可愛い…」
「………」

少し前にマスターが、ゲーセンでPDAのゲームで遊んで戻ってきた時(遊んでないで曲作れ!!)、
カイ兄に「ごめん」と謝っていた。
聞けば間違えてカイ兄のモジュールで
ワールドイズマインを踊らせ、
途中お尻を振るシーンで笑ったらしい。
そんなやり取りを思い出していたら、気付けば既に(尻振り)問題の場所まで進んでいた。

(…前半見逃しちゃった…)
折角なのに、勿体無いな…。
此処からはメモリーに焼き付けよう。

結局カイ兄は最後までしっかり歌ってくれた。
始める前は皆面白がっていたが、
いざ終わると普通に拍手が上がった。
「カイト兄さんキュート!
すっごく可愛かったよぉ!」
「これが所謂『姫兄様』と言うんですね」
「…えー…。可愛いって、何だが複雑だよ…。
じゃ、今度はレンく…」
俺達の後ろ側を見てカイ兄が動きを止めた。
「休憩中ではありませんでしたか?」
「お兄ちゃんリンのも歌ってみてよ〜!」
「………」
休憩から戻ってきたルカ、リン、あとマスター。
マスターは何か考え込んでいる。
「どっから見てたんですかぁ…!」
「皆『欠点?』の辺りから居たよ?」
割りと前半から。恥ずかしさが増したのか顔を手で覆い隠す。
そんなカイ兄にマスターが近付いて肩に手をぽんっ。
「カイト、可愛いのが歌いたかったのか?」
「だ、駄目!!それは駄目!!」
本人じゃなくて俺が叫んだ。
拒否り掛けたカイ兄とその一同の視線が俺に向く。
そして誰も俺に突っ込まない。
「カイトがワールド歌いたくて歌ったんじゃないの?」
「違うんですよマスター。レン君がカイトさんの可愛い躍りを見たかったんです」
「じゃあレンの為に『カイトの可愛い歌』」
「可愛いカイ兄見るのは俺だけで良いのっっ!!」
「ええー!リンももっと可愛いお兄ちゃん見たい!レンばっかりズルい!」
「ズルくない!!」
「独り占めは感心しません。どうせ毎晩可愛がっているのでしょう」
ルカ爆弾投下。
耐え切れなくなったカイ兄が泣きながら走り去る。
「皆のバカー!特にルカのバカーッ!!」
「ちょっとレッスン再開すんのよ!引き摺ってでも良いから連れ戻しなさい!」
引き摺ってでも良い。
その言葉に瞳を輝かせ、リンが超特急で追いかけて行った。
リーン!(ロードローラーで)轢いちゃ駄目だからねー!間違えないでねー!
マスターが廊下の向こうへ叫ぶ。聞こえる訳がない!そんな恐ろしい間違いないされてたまるか!

散々逃げ回ったカイ兄が、馬鹿力なリンに抱えられるように引き摺られて帰ってきたのは
だいぶん後で、一人だけ居残りを命じられた。
「結局レン君の右肩の蝶見れなかった…」
「落ち込むなよ。
後でカイ兄の見たがってる格好いい俺
見せてやるからさ?」
「本当!?」
「その代わりまた、俺にだけ可愛いカイ兄見せてよね?」

俺の言った言葉の意味を深く考えず、うんうん!楽しみだなー♪と居残りに励むカイ兄。

ええ、俺も楽しみですよ?女王から爆弾発言も頂きましたし、頑張って格好いい所見せてやるからな?

[hinten#]

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あきゅろす。
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