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君ニ鳴ク



大事な 大事な、
わたしの ライ。

おいで、
あなたは、わたしの、





「フェア、オレちょっと買い出し行ってくる」

カウンターの中で夕食の下準備を行っているフェアに、ライは財布をヒラヒラと見せながら言葉を掛ける。
先程、氷室の在庫を確認しに出ていったので、恐らく何か足りなくなっていたのだろう。
買い出し用の共有の財布の中身を確認しながらライは玄関へと向かおうとする。

「待ってライ、わたしも一緒に」
「まだ下準備終わってないんだろ?一人で持てる量だから大丈夫だって」
「そうじゃなくて、っ」
「じゃ、ちょっと行ってくるな、すぐ帰ってくる!」

酷く依存しすぎている。
もう依存とかそういう次元を越えているのかもしれない。
頭では分かっている、頭では分かっているのだ。
けれどどうにもこの感情を止められないでいる自分がふと恐ろしくなる。

わたし以外の人と話さないで。
わたし以外の人に笑顔を見せないで。
わたしだけを見ていて。

「おかしすぎるよね、…こんなのさ」

幼い頃から大好きだった。
好きで好きでたまらなかった、双子の弟。
いつも一緒で、いつでも一緒で、いつまでも一緒だって信じて止まないこの希望はいずれ崩れさり消えゆく。
だったら今、一緒にいられるこの時だけでも。
ずっと側に居たいと願うのは罪な事なのだろうか。

「(もし、ずっと一緒に居られる確定が持てるなら…)」

本当に、ずっと一緒に居られるならば、こんな小さな嫉妬はなくなるのだろうか。
この感情に悩まされたりせず、二人でずっと、ずっと、穏やかに過ごせるならば。
もし、一緒に居られる確定が得られる方法があるとするならば。
それは。

「この、手で、……」

そこまで考えて、止めた。
強く握った包丁を持つ手が怖かった。怖くて怖くて。
踞りかける前に耳に慌しい音を認識する。

「ただいまー、よく考えたら今日氷屋休みだった、て!」
「あ、…ライ、おかえり」

正気に引き戻されたフェアの目に飛び込んできたライの姿にこの上ないくらいの安堵感を覚える。
今にも泣きそうなくらいに安心しているのが自分でも分かる。
自分にはやはりライは居ないと駄目なのだ。

「フェア、…手、血出てるぞ!今救急箱持ってくるから傷口を洗って…」
「いい…、いいの…いいの、これくらい」
「でも…」
「、ライ」


わたしは両手を広げた。

酷く醜い感情を隠して。

ただ、ただ、

わたしは、わたしを求めているだけなのだ。



大事な 大事な、
わたしの ライ。

おいで、
あなた は わたし。

わたしの中がよく似合う。



おいで、

わたし。










君ニ鳴ク
(きみは わらう)







ライ←フェ

精神常時不安定、ライもそれを分かった上で居ればいいなみたいな。
フェアで一方通行するとライ以上にヤバくなってしまう法則…

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