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短編
続、正義の味方1
正義の味方は、              がいないと存在できない。

彼が『正義』で、

君が『味方』だったとき。

僕は。

それを受け入れられなかった。


続、正義の味方


「はぁ、はぁ、はぁ」

俺は今、走っている。

目は忙しなく辺りを見渡し、自分の向かうべき方向を探している。

助けてくれと叫ぶことは許されない。

自分の身を守るため、今日も俺は全力で走るしかない。

「チッ!どこ行きやがった!」

「かーいちょーさーん。出ておいでー」

「俺たちと一緒にあーそびーましょー」

ゲラゲラと笑いながら追いかけて来る男たちを体育倉庫の影から見送る。

どうやらこちらには気付かずに行ってくれたようだ。

ずるずると壁にもたれるようにしゃがみ込む。

地面に座り込むなんて、むかしの俺では考えられないな、と自虐的な笑みが零れる。

あいつらは無事逃げられただろうか。

俺と同じように追われる役員たちを思い浮かべて、すぐ消した。

仲間、だったはずなのに、今は彼らの身を案じる時間があれば、俺は自分の身を隠すことに専念している。

自業自得だ。

俺も、あいつらも。

雪村がこの学校を去ると同時に、俺たちの親衛隊も解散した。

親衛隊がいなくなると、今まで制圧されていた一般生徒たちが、一気に俺たちに襲いかかって来た。

信じるべき正義だと思い込んでいた陽路は、気づいたら不良のトップの横にいた。

俺たちは、ずっと平和だったから忘れてたんだ。

俺たちの平和が、誰に守られていたのか。

そんな俺たちが今更、仲間だ何だと、どの面下げて言えるというのか。

全てを壊した俺たちに、残っているのはもう自分しかいない。

『会長』

馬鹿だ。

こんな時にも、まだ君を思い出すなんて。

『会長、大丈夫?』

君は、あの小さな体で、細い手足で、たった一人で、闘っていたんだ。

どんなに傷ついただろう。

どんなに悔しかったろう。

どんなに、俺に幻滅したんだろう。

俺の前では一度だって辛い顔を見せなかった。

俺の前ではいつだって笑顔を絶やさなかった。

俺が、この手で君を切り捨てたその時でさえ。

なんと強く美しい君。

君は今、何を想う?

君は今、どこで、誰に笑いかけているんだろう?

俺は今、罰を受けてるよ。

知っていたはずなのに、大切に思っていたはずなのに、忘れてしまった罪の罰を。

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あきゅろす。
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