短編
3
耳の奥で、何かが崩れる音がする。
ガラガラガラ。
サァ、と脳から一気に血の気が引いて行く。
ギシギシと鳴る首をなんとか動かし、雪村を見る。
なぁ、雪村。俺はどこで間違えた?
縋るように振り返る俺に、雪村は言った。
「すべて君たちの言う通りだ」
雪村はそう言って、嗤った。
俺の目も見ずに、嗤った。
こんな暗い笑い方をするやつだっただろうか。
「さあ、話は終わりだ。会長、決断を」
「え…」
「正義の味方が、悪を滅ぼす。普遍的なラストシーンだ」
雪村は嗤った。
嗤いながら涙を流していたのを、あの時雪村は気付いていただろうか。
身体中アザと傷だらけで、ボロボロの制服を纏い、誰のものかもわからない精をこびりつけながら、君は。
外見と家柄がちょっと人より優れてるからと、一般生徒たちから悪意と厭らしい目つきで狙われる俺たちを、親衛隊の名の通り、守り支えてくれた君。
周りがみんな敵に見えて、誰も信じられなくなった俺たちに、そばにいると言ってくれた君。
初めての恋だと、盲目的に陽路に固執していく俺たちに、周りも見ろと心配してくれた君。
君が傷ついた時は、俺が助けるんだ、と決めていたのに。
君が独りの時は、俺が誰よりそばにいるんだ、と誓ったのに。
あぁ、神様。
もう俺を映してくれないその瞳が、どうか光を取り戻せますように。
誰も味方がいなくなったこの狂った世界で、俺は君への罪と共に生き続けるから。
解放してくれ、と君が泣く。
君が、正義であった頃。
僕は、正義の味方になりたかった。
本当は、ただ、君の味方になりたかった。
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