短編
正義の味方 1
彼は、これが正義だと言った。
僕は、彼が正しいと言った。
君は、まさしくそうだと嗤った。
正義の味方
正義にはいつも味方がいる。
今回の場合で言えば、彼は「正義」で、君は「味方」。
だったら僕は何だろう、と考えて、そうか「悪」かと納得した。
でなければ、この状況はおかしい。
みんなが僕を憎み、みんなが僕を嫌う。
そう考えれば、確かに悪にはいつも味方がいない。
手下はいるかもしれないが、悪の親玉はつねに独りで笑っているではないか。
どんなに酷い仕打ちを受けても、良かった良かった、アクが懲らしめられて、とみんな喜ぶ。
ボロボロになった身体を引きずりながら、ようやく僕は合点がいった。
なぜ僕だけ、と悲劇のヒロインぶってた自分に苦笑する。
ヒロインはおろか、その他脇役ですらないじゃないか。
やっと自分の役割に気がついた僕は、無性にやる気が出てきた。
幸いにも、自分には使える手下がいくらでもいる。
今まで善良であれ、と騒ぎ立つ彼らを諫めてきた自分を殴ってやりたい。
そう、配役は全て決まっていたというのに。
僕たちは悪の組織であり、僕は悪の親玉なのだ。
最期は正義とその味方に滅ぼされる為だけに存在する。
だったら、それまで役を全うするのが、僕の仕事だ。
そうと決まれば、手下たちに謝ろう。
そして、今度こそ、この世界を滅ぼすために思う存分あばれてもらおう。
『2年A組、雪村由宇。今すぐ生徒会室に来い』
決意新たに、早速会議を開こうとメールを打っていると、グッドタイミングで僕を呼ぶ君の声。
僕が役割を勘違いしている間に、配役に忠実な手下が動いてくれていたのだろうか。
これはありがたい!と早速生徒会室に向かう。
優秀な手下どもで助かった。
これでようやく終われるんだ。
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