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短編
お前がそれをいうのか
俯く君が好きだった。

耐える君が好きだった。

全て君の優しさだった。



お前がそれをいうのか



「友達だろ!仲良くしろよ!!」

「俺がしゃべってるんだから、ちゃんと俺の目を見ろよ!」

「俺たち親友だからな!」

刺すようなきつい視線を、まったく気にすることなく彼は今日も大声で叫ぶ。

刺すようなきつい視線に、耐えるように君が俯く。

なんで今まで気づかなかった。

こんなに君は傷ついていたのに。

彼のキンキンと響く大声と、ギリギリと絞める掴んだ腕に、きみは今日も小さく眉を潜め。

仕方ない、と柔らかく微笑んだ。

「おい、歩夢。そいつの腕はなせ」

「何でだよ!」

「お前バカ力なんだよ。そいつ痛がってるだろ」

「え!うわっごめん!痛かったか!?」

「…ううん。大丈夫だよ」

君は急に助け舟を出した俺に若干不信そうに目を向け、すぐに小さく笑って俯いた。

「ほんとごめんな!俺、力の加減わかんねーんだ…痛かったら言えよ!」

掴んでいた腕を摩りながら、彼は君の俯く顔を覗き込んだ。

「つーか、それよりあんまりそいつを連れ回すなよ。可哀相だろ」

「え…。どういうことだよ、それ!!」

「お前がそいつを連れてくるから、そいつが他のやつらに目をつけられてんの。わかんねーの?」

何も気づかず、また悪びれず君を振り回す彼に、無性に腹が立ち彼を責める。

俺の言葉に、はっとしたように君が顔を上げた。

「な、そうなのか…!?俺のせいで…」

ようやく気づいたのか、今度は彼が泣き出しそうに顔を歪めて俯いた。

「ごめん…俺何もわかってなくて…ほんとごめん!」

よほどショックを受けたのか、ごめんごめん、と繰り返す彼に、君は驚いたように首を振る。

「ううん、いいんだ。

…つーか」

君がゆっくりとこちらを振り返り。




「お前がそれを言うのか」




見たこともないほど無機質な瞳で俺を眺めた。

「え…」

「歩夢はいいんだよ。こいつ100%善意だし、天然だし。間違った善意は注意したらちゃんと謝ってやめてくれるし。むしろお前らっしょ。100%悪意だし、計算だし。何度言っても一度だって謝ってもらったことねーし。歩夢が俺を連れてきてるんじゃなくて、お前らが俺らんとこにわざわざやってくるんじゃねーか。俺がお前らを嫌がってるの知ってるから、歩夢が一生懸命取り繕おうと大声で間繋いでんのに、お前らまともに歩夢の話聞いてやったことあんの?いっつもニヤニヤ下品な目で歩夢を視姦してるだけで、ちっとも会話できてねーじゃん。確かに歩夢の話は、驚くほどつまんねーよ?笑えた試し、一度だってねーよ?でも、俺らの為にこんだけ頑張ってる歩夢見たら、あいつら嫌いだからお前1人で視線に犯されてこい、なんて言えねーだろ。お前らの気持ち悪い視線にも一緒に耐えるしかねーだろ。こいつのくそつまんねー話だって、俺が聞いてやるしかねーだろ」

ピクリとも表情を変えず、一気にまくし立てる君。

いつも俯いているのが嘘のように、何の感情も籠もらない目でまっすぐ俺を見ながら喋り倒す。

「祐介…。ちょっとひどい!俺そんなにつまんねー!?」

呆然としてしまった俺と周りの視線を差し置いて、彼が君に泣きつく。

「歩夢。残念だけど…」

君は慰めるように彼の肩を叩くと、小さく笑って俯いた。

「ちょっと!目逸らさないで!!道理で俺が一生懸命しゃべってるとき目が合わねーと思ってたんだよ!愛想笑いもできないほどつまんなかったってこと!?」

「…ごめんな」

「謝んないでー!!よりショックでかい!!申し訳なさそうにされんのが1番ショックでかい!!」

「歩夢はそれでいいんだよ。ホラ、いつも全力で空回ってるのがお前の魅力だろ?こいつらだってかわいいかわいい言ってんじゃん」

「俺の魅力悲し過ぎねぇ!?え!?こいつら、俺の性格とか見た目じやなくて、渾身の空回りをかわいいって言ってたの!?」

「まあまあ。こんだけ本気でつまんなかったら、一周回って逆に面白く見える時もあるしさ」

「祐ちゃーん!!もうやめてーー!!!俺もう二度と人前でしゃべれなくなる!!」

ぐすぐすと泣き出す彼に、ポンポンと背中を叩き、君が朗らかに笑った。

声を上げて笑う君を見るのは、それが初めてだった。

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