短編
だから、忘れて
泣けば手に入ると言うのなら、声が枯れるまで泣き喚くだろう。
笑えば許すと言うのなら、息ができないくらい笑うだろう。
君が、これを恋じゃないと言うのなら、一生恋をしないと誓う。
だから、忘れて
好き、嫌い、熱い、痛い、追いかける、逃げる、囚われる、喚く。
君へのこの複雑な想いは、どんな言葉にしたって、どれもしっくりこない。
いっそ君でさえも届かないほど、不覚暗い底の底まで、堕ちて狂ってしまいたかった。
どれだけ愛を囁いても、僕の気持ちの1%も君に届かないというのに。
「あいつが好きなんだろ」
「…好きだよ」
僕の一世一代の三文芝居には、馬鹿みたいに騙されるフリをする。
目は泳いでいないだろうか。
笑顔は歪んでいないだろうか。
「お前が、本当の恋ができてよかったよ」
「…うん、恋だ…」
喉が焼けるように痛い。
どうか掠れないで。
これで最後だから。
「応援するよ」
「ありがとう」
君の顔を見れない僕を許して。
見破ってほしい、なんて、いまさら言うつもりなんてない。
だけど、
だから、忘れて。
僕の溢れ出してしまった君への想いも。
堪えきれなかったこの涙も。
手に入れられるなら、どんなことだってできると言うのに。
これが僕らの最善なんだね。
君が、これを恋だと言うのなら、僕はその錯覚にだって焦がれよう。
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