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短編
〜作戦その5〜
作戦その5
会長と結ばれよう!


「こいつがあんまりうるせえから思わず蹴り入れちゃった」

ペロッと舌を出した王道くんに、副隊長が舌打ちした。

「蹴り入れた瞬間にすかさずパンチ飛んで来た辺りはさすが元特攻隊長。まだまだ衰えてねぇじゃん」

「…ということは、お前が先に手を出したのか」

副隊長をソファに横たわらせながら、会長が不愉快そうに王道くんを見る。

いやいや、どっちがどうとかよりも、先にもっと気にするとこあるよ!

何なのこの無駄な設定?!

確かに、王道転校生が実は族潰しとか、むしろ族の一員とか、確かによく聞く話である。

でも、それは生徒会役員たちも不良とか、族とかやってるからこそ成り立つ設定であり、うちの生徒会は至って真面目なお坊ちゃんであることは調査済みだ。

王道転校生と親衛隊副隊長だけなぜか元ヤンの昔馴染みでしかもなんか訳あり、なんて王道転校生には全く必要ないエピソードである。

話がややこしくなっただけで、そこから一体どんな王道萌えが生まれると言うんだ!

「だって、こいつずっと俺のことシカトしてたくせに、ようやく声かけてきたと思ったら、会長のこと本気なのか、会長から手を引け、会長会長会長、ずーっと会長の話なんだもん。むかつくでしょ?」

王道くんが小首を傾げ、会長を上目遣いに見上げると、会長は僅かに目を見張り、それから少し赤くなって目を逸らした。

…あ、ナイスプレー王道くん!!

照れたの会長?!

王道くんに嫉妬されて喜んじゃったんでしょ!!

思わず呼吸が荒くなる俺を後目に、副隊長はソファの上で腕で顔を隠し、また小さく舌打ちした。

会長はチラリと副隊長を見ると、側に座り込み副隊長の腕をそっと外した。

「…さわんな」

副隊長は力一杯腕を振り払い、ぎゅっと身体を寄せて小さくなる。

バカ会長!!

副隊長の処分については後でいいでしょ!

今は王道くんとゴールインでしょ!!

ゴール前、完全フリーの大チャンスに、わざわざ相手チームに飛び込んで行く会長がもどかしい。

「おい…顔見せろよ」

「……会長は…。隊長と幸せになって欲しかったんだ!」

小さくなった副隊長の髪をサラリと撫でる会長に、副隊長が抑えるように小さく怒鳴った。

「隊長だったら、諦められるって思ってたのに…」

…………ていうか、

「…俺?」

俺何時の間に出てきたの?!

俺あくまで監督のつもりなんだけど!!

思わず一歩後ずさり、キョロっと辺りを見渡すと、同じように困惑の表情を浮かべる会長。

「え…何で俺がこいつと?こいつのこと好きなのは、お前の方だろ?」

会長が俺を指さしながら、副隊長に尋ねる。

「…また俺?」

何なに、どういうこと?

会長も副隊長もみんな俺のこと本気で好きだったの?

「まさか!そんな趣味悪い!!」

えーー?!

何なに、どういうこと?

今、俺告られてんの、貶されてんの?

「俺にはこんな腹黒い人、荷重すぎっす!!」

副隊長は顔を青くして、がばっと起き上がった。

「会長が、好きなんでしょ?隊長のこと…。だから、俺…」

「はぁ?!俺だって無理だよ!!こんな非人道的なやつ!!!」

えーーーー?!?!?

何なに、どういうこと?

完全に貶されてるよね?!

俺の目の前で、俺の悪口言ってるよね?!!
「だ、だって!いっつも隊長見つけては側に来るし、さすが会長にもなると、凡人には興味ないんだなぁ、って思ってたのに!!」

「それはお前がいつもそいつと一緒にいるから!俺だって、お前のこと真性のドMなのかなって思ってたし!」

「ど、ドM?!ひでぇ!!」

「だってこんな人のこといっつも冷めた目で眺めてる男の近くに好き好んでいるんだから、冷たくされたい奴なんだと思うじゃん!!俺にはあんな感情のない目なんてできねぇし!」

「そんなわけないでしょ!隊長、急に自分だけ蚊帳の外になったり、そもそも人のこと人と思ってない…っていうか、なんか都合よく動かせる駒みたいに思ってそうで、俺毎日気が気じゃなかったんすよ!!」

「じゃあなんでいつも一緒にいたんだよ!」

「だって会長に会えると思ったから!!!」

「じゃあ俺と同じだろ!!!」

二人はぜいぜいと息を切らせて向かい合ったまま固まった。

「………はぁ?どういうこと?」

さんざんボロクソに言われて呆然としていた俺が思わず呟くと、ずっと黙ってなり行きを眺めていた王道くんがニヤリと笑った。

「要するに、両想いってことだろ」

王道くんの言葉に、二人は見つめあったままボンっと顔を赤らめた。

「…なにそれぇ」

「しょーもな」

会計と副会長が緊張が解けたように、ぐだっとイスに倒れこんだ。

ちょ、ちょっと待って!

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