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短編
君はピエロ
君が密かに誓ったのを知っていた。

君が密かに傷ついたのを知っていた。

僕は全て知っていたけど、何も知らないふりをした。



君はピエロ



「彼女できたって?」

「うんまぁ」

「ふーん。だれ?」

「いいだろ別に誰だって」

「いいけど別に誰だって」

ふて腐れたようにおれを睨む君。

「今日、帰りゲーセン寄って帰ろうぜ」

「いや、彼女と帰るし」

「は?それ本気で言ってんの?」

「当たり前だろ、そんなこと」

「ゲーセンだろ今日は」

自分はいつも俺を置いて彼女と帰るくせに。

なぜ今日に限ってそんなこと言うんだ。

「彼女となんていつでも帰れるだろ」

「そう…だけど」

「オレとゲーセンは今日しか無理だぞ」

「でも…」

「キマリな」

「ほんとにゲーセン行きたいの?」

「当たり前だろ、そんなこと」

俺が断らないと知っている目で、俺を嘲笑う君。

おれが断らないんじゃなくて、断れないんだって知らないくせに。

俺がどんな決意で彼女を作ったか知らな
いくせに。

何も知らない君は、軽い気持ちでまた俺を縛り付ける。

俺の決意が早くも挫けそうになっていることも、もちろん君は知らないんだ。

何も知らない君の、その気まぐれな独占欲にさえまだ心が震える。

君は何も知らないのに。

気付けばまた、君の手の上で転がされてる。



何も知らないピエロは、だれ?

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あきゅろす。
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