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短編
sideB
「退学だ」

「あなたがそうおっしゃるのなら」

君に最後の審判を下せた俺は、なんて幸せ者だろう。

例えば10年後、この馬鹿騒ぎが続くであろう長い3年間の高校生活を苦い気持ちで振り返ろうとも、この瞬間だけは、きっと輝き続けるだろう。

君が転校先を準備したときいて、早速君を呼び出した。

二度と君に会えないこと以外、思い残すことは何もない。

俺が君にできるたった1つのことなのだから。

それでも、君の輝かしい経歴に、退学という大きな傷跡を俺の手で残せたということが、どんなに心を震わせる。

いっそ清々しい気持ちで君の背中を見送る。

美しい君。

哀れな君。

君が太陽だと手を伸ばした俺が、君を焼き尽くしてしまおうとは。

俺があいつに焼かれたように。

周りからどんなに冷ややかな視線を向けられていると知っていても、俺に愛を注ぎ続けた君は、やはり美しかった。

周りからどんなに冷ややかな視線を向けられているとも知らず、醜く恋に溺れた俺だというのに。

目を瞑ると、君の笑顔を思い出す。

目を開けると、君の傷ついた瞳を思い出す。

君が俺にくれたものは、全て忘れはしないだろう。

さようなら、俺のイカロス。

塵となった愚かな俺を、それでも太陽だと手を伸ばした愛おしいイカロス!



イカロスはたとえ焼かれようとも



嗚呼、君は僕の太陽だ!

僕はきっと堪らなく嫌な顔をして目を逸らしただろうね。

僕の太陽に目を潰されて、何も見えてはいなかったんだ。

今ならきっと、凍える君を優しく暖めてみせるのに。

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