『香奈の部屋』 7 全段直撃。 私だって伊達にスライサーを使いなれてるわけじゃない。 頭部に当たったとは言え、傷は浅い。 さっき何度か斬った時も気付いてたけど、オルガディランはやはり竜。 頑丈さは生物一なのかもしれない。 「アーシャ、一つ気になることが。」 「うん?」 「オルガディランの傷が癒えている気がします。自然治癒が相当速いのかもしれません。」 よく見てみると…本当だ。 傷がどんどん…。 これはかなり厄介。 ちまちま攻撃しても意味が無いのかも。 と言っても、私の攻撃では…。 ううん、悩むことは無い。 ここから逃げることも出来ない。 この邪王…オルガディランを倒すまでは! 「ちょっと無理するから!」 「アーシャの無理はいつものことです。」 再び武器をダブルセイバーにし、接近する。 振り下ろされた竜の腕を躱し、懐に深く入る。 その瞬間、オルガディランの色が変わった。 茶色っぽい…多分、土属性。 武器を切り替えてる時間も無い。 多少効果が薄れるかもしれないけど、そのまま刃を力任せに振るう。 オルガディランの胸部を斬り裂く両剣。 でも、傷はあまり深くない。 「っ…ダメみたいね…えっ!?」 直後、赤い目玉からの攻撃。 避けられない! 咄嗟に防御したけど、完全には防げなかった。 熱さで若干意識が歪む。 このままだと…次の一撃が…。 「アーシャも被弾してるのじゃ。」 目の前には七美。 手には黄色い大きな刃を付けた大鎌。 「七美と違って直撃は免れてる!」 「わ、妾だって直撃してないのじゃ!」 七美が大鎌を振るう。 一閃。 その一閃がオルガディランの身体を大きく斬り裂いた。 凄い一撃…! 「どんなもんなのじゃ!」 オルガディランは痛みで苦しそう咆哮を上げる。 それを見、自慢げに無い胸を張る七美。 「油断は先程の二の舞になりますよ?」 七美を見ていた白い一つの球体が撃ち抜かれ、光と粒子と化して四散する。 撃った方向を見ると、そこには弓を構えたケイズの姿が。 「ゆ、油断なんかしていないのじゃ!」 「それならいいのです。」 彼女は私のとこまで駆け寄り、回復テクニックを施してくれる。 痛みがあっと言う間に無くなる。 「でも、怯んでる今が好機ね!」 「そうなのじゃ!」 雷属性のダブルセイバーに変更。 そして、七美と一緒に、彼女の動きに合わせて武器を振るう。 弱い攻撃では回復されてしまう。 だから、強気で。 「ラ・ゾンデ!」 巨大な雷を連発するケイズ。 主に翼を狙って落としてる。 これだけ攻撃してるんだから、大きなダメージを与えられていたらいいんだけど…。 「…七美!」 オルガディランが動くのが見えた。 横に回転しつつ、尾を振るう。 それを私達はしっかりと防ぐ。 「このまま押し切れそうなのじゃ!」 「…何も無ければ、ね。」 そう、何も無ければ。 まだ奥の手があるのかもしれない。 油断は出来ない。 と、オルガディランは突然高く跳ぶ。 攻撃が届かない位置。 そこで止まる。 「逃げた…なのじゃ…?」 わからない。 ただ、嫌な予感はする。 「皆さん、私の後ろへ来てください。」 指示するケイズ。 彼女も何かを察したみたい。 私達は急いで彼女の背後に。 「…な、何なのじゃ、あれは…。」 頭上高くにいるオルガディラン。 翼で自らの身体を包み込み、その周りを更に闇が覆う。 そして…落下。 「っ…まるで隕石ね…!」 かなりの速度。 あのまま地面に衝突したら…衝撃波だけでも耐えられそうにないかもしれない。 「SUVウェポン展開…エクスシア・フリューゲ!」 背後に展開していた七色のロッドを仕舞うケイズ。 背中から黒い翼状のフォトンも消える。 代わりに空間が歪み、彼女の背中に機械仕掛けの白銀の翼が現れる。 そして、オルガディランが地面に衝突するのと彼女の翼が開くのがほぼ同時だった。 「ひぃっ!?」 オルガディランが衝突時に起こした衝撃波。 禍々しい闇を含み、死をも直感させる巨大な衝撃波が迫る。 …これはまずいね…。 でも、ケイズを中心に紅き光が広がり、私達を包み込んだ。 優しい光。 衝撃波から私達を護り、更には力が漲っていくのを感じる。 「大丈夫ですか?」 「うん、ありがと!」 SUVウェポンが消える。 衝撃波が防げるかはわからなかった。 さっきのが無かったら今頃は…。 「アーシャ、行くのじゃよ!」 「…ちょっと待ってください。」 七美を制するケイズ。 翼を広げたオルガディランの色が白へと…次は光属性だね。 「私が攻撃します。危険ですので、それまでは下がっていてください。」 と言い、彼女は一本の杖を出す。 闇を纏うロッド…見ているだけで寒気がするぐらい不気味。 …とても危険な物。 この世には存在してはいけない…そんな風にさえ感じる程に…。 「な、何なのじゃ、それは…?」 七美も異常さはわかってるみたい。 「…本来であれば頼らないに越したことは無いのですが…この好機、逃す訳にはいきません。」 ロッドを真上に掲げ、背中には再び黒い翼。 「…ラ・メギド!」 勢い良く振り下ろす。 ロッドから吹き出す闇。 同時にテクニックが発動する。 「…何…あれ…?」 ラ・メギドは勿論私も知ってる。 知ってるけど…こんなのは知らない。 あの邪王の巨体を飲み込む程大きく…怖い。 まるで恐怖の塊。 あんなのに触れたら…と思うと、想像なんてしたくない。 闇に飲まれたオルガディランの悲痛な叫びが空間内に響き渡る。 「…っ…。」 ロッドを消し、彼女は片膝を着く。 「ちょっと!大丈夫なの!?」 「はい、問題はありません。少しばかり力を使い過ぎてしまっただけですので。」 一度深呼吸をし、立ち上がるケイズ。 …もし次に使いそうになったら止めないと…。 「もうあの杖は使わせない…とでも考えているのですか?」 「えぇっ!?…えっと…う、うん…。」 当てられて驚いた。 私ってそんなわかりやすい顔をしてるの? 「さて、もう一息ですね。頑張りましょう。」 [*前へ][次へ#] [戻る] |