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『香奈の部屋』

笑みを見せる彼女。
同時に発砲音。
キャリスの射撃を合図に、私は接近する。
左手のダブルセイバーでキャリスを攻撃を防ぐ。
その隙を私が攻撃する。
勿論、通じないと思う。
でも、左手でキャリスの攻撃を、右手で私の攻撃を防ぐと思う。
腕は二本。
そうなれば勿論、七美の攻撃は防げない。

「受け止めるだけが防御ではありません。」

私の攻撃は…受け流された。

「えっ…?」

体勢を崩した私に、ケイズはすぐさま一撃を放つ。

「させないのじゃ!」

それを七美が防いでくれた。

「ありがとう!」

その間もキャリスが連射する。
と言っても、全て正確に撃たれているもの。
しかし、ケイズは確実に左手のダブルセイバーだけで防いでいく。
…流石ね。
やっぱり、数撃っても当たりそうにない。
まぐれは期待しない方がいい、か…。
それより、気になることが…。

「七美、ちょっと一人で攻撃してみて。」
「?」
「気になることを確かめたいから。」

実際に私が攻撃するよりも多分見てた方がわかりやすいと思うから。

「…わかったのじゃ!任せろなのじゃ!」

キャリスの射撃を防いでるケイズ。
その彼女に七美はツインセイバーで斬りかかる。
キャリスの攻撃を防ぎながらだっていうのに、次から次へと繰り出される七美を防いでいってる。
でも、予想通り。
彼女は受け止めてるんじゃなくて受け流してる。
つまり…。

「てい!」

私も近付き、七美の攻撃に合わせダブルセイバーを振るう。
私と七美の刃を同時に受けたエンシェントクォーツは簡単に彼女の右手から放れ、後方へと飛んでいく。

「両手で扱う武器をそう簡単に片手で使えるはずもない。だから、受け流すことしか出来ないし、そっちから攻撃することも出来ない。」
「…悪くない読みです。」

ケイズは両剣を振るいながら下がり、落ちてきたエンシェントクォーツをしっかりと受け止める。
でも、それがわかれば攻略法も…。

「では、こちらからも行きますね?」

速い!
あっという間に間を詰められ、一閃。

「っ…。」

慌てて受け止める。
重い一撃。
よく見ると、彼女の手にあるエンシェントクォーツは一本だけ。
両手で一本を持ってる。

「あなたが思っている通り、二本同時に扱えば威力が下がってしまいます。あなた達には通じないでしょう。でしたら、攻撃の時だけ一本使えばいいことです。」

やっぱり、彼女も知ってたんだね。
と言うより…今、彼女に試されてた…?

「まだ合格点じゃない?」
「そうですね。まだ足りません。」
「…なら!」

彼女の両剣を振り払い、すぐさま追撃する。
ケイズは再びもう一本の両剣を出し、私の攻撃を受け流す。

「まだまだ!」
「妾もいるのじゃ!」

私と七美とキャリス…三人で同時に攻撃を仕掛けているのに、ケイズは全ての攻撃を受け流している。
正確に…確実に…。
隙なんて見えない。
それどころか…。

「危っ!?」

ケイズの攻撃を紙一重で躱した七美。
少しでも隙を見せたら今のように反撃してくる。
片手で扱ってる分、威力は下がってるだろうけど…直撃すればやっぱりまずい。
エンシェントクォーツはダブルセイバーの中でも強い武器。
一撃一撃が危険。
でも、臆してても道は開けない!

「はぁっ!」

防御も考えずにひたすら攻撃を繰り出す。
勿論、隙は大きい。
それでもする価値があると思った。
一対一ならこんな先方をやったところで勝てない。
でも、私達なら…!

「…見えました。」

キャリスの射撃。
ケイズは当然の如く防ぐけど…僅かに隙が出来た。
流石はキャリスね。

「そこ!」

その隙を狙う。
でも、その程度の隙は彼女にとって大した隙なんかじゃないと思う。
案の定、私の攻撃は簡単に防がれる。
それでも…狙い通りだった。

「終わりなのじゃ。」

七美の剣が彼女の首元に突き付けられる。

「…そのようですね。」

二本のエンシェントクォーツが消える。
降参、ってことだね。
それを確認し、私達も武器を仕舞う。

「私達が勝ったんだから、ちゃんと約束は守ってもらうから。」
「わかっています。」

頷く彼女。
でも、不思議に思った。

「…今の、態と負けた…?」

彼女ならもしかしたら私達に攻撃を当てることなんて容易だったのかもしれない。
今思うと、彼女の攻撃には手加減が入ってたようにも思える。
自然過ぎて気付かなかったけど…。

「どうでしょうか?」

彼女は微笑む。
多分、肯定なんだろうね。

「ところで、ここの異変はどうなっているのじゃ?」
「そうだった。あなたがいると言うことは、やっぱりオルガディラン?」
「はい。」

即答で答える彼女。
わかってたことだけど…またあの怪物と戦うと思うと気が滅入る。

「怖じ気づいたのですか?」

そんな私に気付き、隣に来たキャリスが問い掛けてきた。

「御冗談を。七美じゃあるまいし。」
「わ、妾だって大丈夫なのじゃ!」

…冗談のつもりだったのに、案外図星だったのかもしれない。
一度戦った相手。
しかも、前回あれだけ攻撃したんだからまだ負傷してるはず。
そう簡単に自然治癒出来る傷でもないと思うし…。

「では、行きますか?」
「えっ、場所はわかるの?」
「はい。と言うのも、ここですから。」

彼女は何かを発動…ううん、多分解除をしたんだと思う。
すると彼女の背後に現れた大きな空間の歪み。

「もしかして、ずっと隠してたの?」
「そうです。無駄な犠牲者を出したくはなかったので。」

そもそも、一人でやろうとしてたみたいだし…あれ?

「どうして一人で行かなかったの?」
「…どうしてでしょうかね?」

笑う。
もしかしたら…まさか、私達が来ることをわかってて…?

「覚悟はいいですか?」

彼女の問いに、私達三人は頷く。
オルガディランと戦って勝てる保証なんて全く無い。
だけど、だからと言って彼女を見捨てるような真似なんか出来ない。
何より…かっこ悪い。
命の恩人…憧れの人の前でそんな姿は見せられない。
もっともっと、強くなった私を見て欲しいから。

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あきゅろす。
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