『香奈の部屋』 後編 実際に戦ってみたらどっちに勝敗が転ぶかわからないと思う。 その後の三位決定戦では圧勝してたし…。 「私は…そこまででも…。」 「それに、クファだって…。」 この百合少女はサリエリアと互角か、それよりも強いみたい。 戦ったことは無いけど、もしかしたら多分私よりも…。 大会には出場していて、ふざけて戦ってたところをサリエリアに負けてた。 意外にも強敵は身近なところに。 「でも、楽しみと言えば楽しみになってきたね。いちゃいちゃしてるカップルを蹴散らせたら…。」 「クファ、歪んでる。…シェナが先鋒?」 「うん。私だけで勝っていいって。」 大将は勿論ラーちゃん。 私が負けたり疲れたりしても、後はラーちゃんがどうにかしてくれる。 「ラーちゃんがいるから負けないよ。」 「すんごい信頼してるんですね?そんなに強いんですか…?」 「ん〜…どうなんだろう?でも、戦闘部の部長さんが二度と戦いたくない、なんて言ってたし…。」 「あの人が!?」 戦闘部は名の通り強さを求める部活で、部員数が最も多い部活。 どの学校でもそうだと思うけどね。 で、その部長は私達の学校では最強と言われてる。 そんな人に実力を認められてるんだから相当なんだよね。 今思うと…改めてラーちゃんって凄いと思う。 「…私達じゃ勝てないかもね。」 「諦めるなんてクファらしくない。」 「いやいや、無理じゃない?一度だけ戦闘部部長と戦ったことあるけど、一瞬で負けたよ、私。」 クファが…? 「あれは化け物。あれにそんなこと言わせたその男も化け物確定じゃん。ちなみに、属性は?」 「ん〜…特殊属性だから秘密って約束してあるから。」 約束は約束。 絶対に破れない約束。 「特殊属性者…それだけでも強者臭が…。」 基本八大属性と違って弱点となる属性が無い。 また、属性がその名の通り通りで、対抗策がすぐには作りにくいっていうのも強いって言われてる所以。 「でも、大丈夫。多分、大会では属性封じたまま戦うって言ってたから。」 「あのね…それが強いってことなんだよ。属性を不使用のまま戦えるなんて普段からそういう戦い方をしていて、しかも上手いやつがすることだから。」 うん、私もそう思う。 でも、属性を使わない分、弱いのは確か。 「あぁ〜うぅ〜…シェナがいれば私達の優勝間違い無しだったのに…。こうなったら食べ行こう!うん、そうしよう!」 お昼食べたばっかりなのにまだ食べる気…? 「…いつも気になってたんだけど、クファって何でそんなお金があるの?」 バイトしてる、って噂は無いし、デートも結構してるみたいだし…。 「ん?…ん〜…。」 お喋りの彼女が珍しく口籠もる。 「言いたくなかったら言わなくていいと思うわよ。何せ、ね…。」 口振りからしてサリエリアは知ってるみたい。 「別に言ってもいいんだけど。隠しててもあれだし。…短時間でお金を手に入れてたりするから。」 「…まさか、クファ…。」 「そのまさか。…援交。」 軽々しくクファが言った。 知らなかったのか、彼女の一人であるミムちゃんが凄く驚いてる。 「…軽蔑するよ。」 「と言っても、誰とでもしてるわけじゃないし。お兄ちゃんとしかしてないから。」 「…えっ?」 さり気なく問題発言言ってなかった…? 「…クファはね、昔実の兄に強姦されたことがあるの。男性恐怖症はそこから。…それなのに、今でもその兄を慕ってる変態なわけ。」 サリエリアが説明してくれる。 「だって、気持ちいい上に結構なお金になるんだよ?」 「どっちが本音なのだか。男性恐怖症だから同性愛者みたいに見られてるけど…兄のことが好きだということを隠したいだけの気もするけれど。」 「別にあんな最低な男のことなんて…。」 …でも、クファなら有り得そう、なんて思うのは私だけ…? 「ミムは知らないかもしれないけれど…兄とデートしてることもたまにあるみたいだから。」 「そんな…。先輩、酷い!」 一気に修羅場になった。 「違うって。サリエリアが勝手に言ってるだけ。…ここで争ってたらダメダメ。敵に回ったシェナの攻略法を考えないと。」 「話を逸らして…。構わないけれど。…シェナ…あなた程強い相手と戦うのが楽しみね。」 怪しい笑み。 でも、気になることが…。 「サリエリアなら先の大会で私と戦えてたと思うけど?」 「それはクファの命令。私達が戦えば本気で戦うしかなくなる。だとしたら、実力はなるべく見せないようにするために戦うことを避けたのよ。」 クファって意外と策士。 「でも、そのおかげでこっちの手を見せずにシェナの動きを見られた。」 「…決勝の動きが私の本気だと思うならね。」 強がってみる。 決勝戦ともあって、相手は強かった。 殆ど本気を出してるに近かった。 「あれが本気じゃなかったとしたら注意が必要ね。」 …多分、見抜かれてる。 でも、サリエリアも強がってる可能性だってある。 「…あ、今度旦那も連れてきて共同練習しない?」 「ラーちゃんの戦い方を見ようと思っても無駄だよ。絶対に人前じゃ戦わないから。」 今度の大会…私達のチームが優勝候補とも勝つつもりが無いとも言われてるのはそのため。 団体戦は個人戦とは違ってみんな本気。 それなのに二人だけで、しかも片方の実力が不明だから。 「…ま、どんな相手でも負けないよ。そいつがどんなに強くても…僕達が絶対に勝つ。」 「なら、私が四人抜きしてあげるから。」 「最低でも、僕と相打ちにしてあげるけどね。」 クファは笑う。 釣られて私も笑う。 大会までもう少し。 …これは楽しみになってきたかもね。 終わり♪ [*前へ] [戻る] |