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『香奈の部屋』

フォトンをスライサーに集中させ、巨大な刃と化して放つ。

?「きゃっ!」

直撃。
刃は周囲の地面さえ削り、砂埃を巻き起こす。

?「…ぼろぼろになってしまいました…。また新調しないといけませんね。…ですが、その前に…。」

砂埃が吹き飛び、消え去る。
中から現れたのは背に黒きフォトンの翼を生やし、全身を黒のパーツで統一したキャストの女性。

?「先制攻撃をしてきたのはそちらです。無防備な相手を攻撃してきたのですから、それ相応の報復を受ける覚悟はおありですよね。」

やや背後、彼女を囲むように一種類七色のロッド(長杖)が展開される。

七「キャスト…なのにフォースなのじゃ?じゃが、フォースに遅れを取る妾ではないのじゃ!」

セイバーとシールドを仕舞い、代わりに出したのはナックル(鋼拳)。
それを見たキャストの女性は黄色のロッドを手に取り、近距離で七美に向ける。

七「(雷属性?じゃが、防具を雷にすれば…。)」
?「…ディーガ!」

杖の先から放たれた巨大な土の塊。
同属性の場合は軽減となるが、対属性の場合は弱点となる。

七「ひっ…!?」

七美に直撃する瞬間、何かが弾け、彼女の周囲を光が包み込む。

ア「全く、仕方無い子ね。」

吹き飛ばされた七美を受け止める。

七「す、スケープドールが無ければ即死だったのじゃ…。」
ア「はいはい、無理はしないでね。」

七美を離し、スライサーを構えたまま女性と対峙する。

キ「…あのロッド…。」
ア「見たこと無いロッドだけど、キャリス、あなた知ってるの?」

アーシャは決して詳しいわけではないが、全くの無知でもない。
しかし、記憶の中では今まで見たことがない種類のロッドである。

キ「あれは…サイコウォンド…?」
ア「サイコウォンド…サイコウォンドだって!?あれって都市伝説じゃなかったの!?」
キ「ですが、恐らく本物かと。」
ア「…それを七本も使い分けてるなんて…一体何者なの…?」

対峙しているだけでもこの女性が強いことがわかる。
アーシャもキャリスも元々ガーディアンズに所属していたが、もっと自由に闊歩したかったという理由で脱退している。
しかし、そこで培われた腕は確かである。
そんな二人ですら警戒する相手。

ケ「来ないのですか?でしたら、こちらから行きますね。」

手にしたの赤のロッド…炎属性。

ケ「…フォイエ!」

ロッドを振るい、放たれる一つの大きな火球。

七「そう何度も受けないのじゃ!」

タイミング良くガードし、霧散させる。

ケ「…ラ・フェイオ!」

続け様のテクニック。

ア「躱して!」

三人を中心に大爆発が起きる。
それを咄嗟に避けた三人。

ア「やっぱりド派手だね、上位テクニックは。」

シャドゥーク(射導具)も取り出し、スライサーを振るう。
しかし、飛刃もシャドゥークから発射された銃弾も全て回避される。

七「っ…キャストフォースの癖に…!」

キャストの中でもテクニックを使うフォースである者は少ない。
テクニックを使用するのを苦手とする者が多いからである。

キ「…キャスト…フォース…黒き翼…もしかして、この者は…。」
ア「知ってるの?」
キ「データベースに一致する者が一人います。彼女は『真円月の影』…ケイズ。」
ア「ケイズ…?」

黒きキャストの女性…ケイズを見、呟く。
アーシャには聞いたこともない名前。

七「…うぅ〜…避けるなんてせこいのじゃ!」

七美は幾度も拳を繰り出すが、たった一発も当てることがかなわず、全て軽々と回避されている。
その間、ケイズは様子を見ているのか、ただ躱しているだけで反撃はしない。

七「…喰らえ、ボッガ・ズッバ!」

構えた右手にフォトンを集め、猛突進すると共に一気に拳を前へと放つ。
だが、ケイズは軽く躱し、更には足を引っ掛けて転ばす。

七「わっ、わっ!?」

勢いを止めることも出来ず、思いっ切り地面に倒れ込む。

ア「で、強いの?見てるだけでも凄く強いのはわかるけど。」
キ「詳細なデータはありません。ですが、二つ名が付く程の実力者なのは間違い無いと思います。」

二つ名が付くような者は今でも限られている。
相当な実力者か貢献者に与えられることが多い。
近年で言えば、『英雄』イーサン・ウェーバーが有名なところだろう。

ア「つまり、少しの油断も出来ないことね!」
キ「そういうことです。」

アーシャは何度もスライサーを振るって刃を飛ばし、キャリスは最大チャージのグレネードの砲弾を放つ。
対して、それを見たケイズは白いロッドを手に取り、二人に先を向ける。

ケ「…ダム・グランツ!」

光属性のロッドの先端から放たれる光。
アーシャとキャリスの攻撃すら飲み込み、二人に向かっていく。

ア「そんな使い方ってあり!?」

慌ててその場から離れ、光を回避する。

ア「出鱈目だね、全く。でもね、こっちだってやられてばかりじゃないからね!」

ケイズに急接近するアーシャ。

キ「援護します。」

キャリスはツインハンドガン(双短銃)に換え、連射する。
しかし、彼女に銃弾は当たらない。

ア「(銃弾を読んでる…?キャストなら出来そうな気もするけど、果たしてそんなことが…?)」
ケ「…!?」

何かに反応したケイズは全てのロッドを仕舞い、アーシャ達に背を向ける。
そして、何かに向かって一目散に走り出す。

ア「ちょっ、ちょっと!?」
ケ「見逃してあげますから、すぐにここから離れてください!」

ケイズが向かっている先の空間が大きく歪む。
禍々しささえ感じる歪み。
彼女はその歪みの中に少しの躊躇いも無く進入する。

七「な、何なのじゃ…?」

立ち直った七美は空間の方を見る。
奥は…見えない。

ア「恐らく今回の異常の原因ね。入ったら戻ってこれないかもしれないけど…どうする?」
七「当たり前のことを聞くななのじゃ!」
ア「あ、ちょっと!」

アーシャの制止も聞かずに先に走る七美。
そのまま空間の中に飛び込む。

ア「で、キャリスはどうする?」
キ「任務を遂行する。ただそれだけ。」
ア「だと思った。…それじゃあ、ミッション開始しちゃいますか♪」

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あきゅろす。
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