『香奈の部屋』 2 フォトンをスライサーに集中させ、巨大な刃と化して放つ。 ?「きゃっ!」 直撃。 刃は周囲の地面さえ削り、砂埃を巻き起こす。 ?「…ぼろぼろになってしまいました…。また新調しないといけませんね。…ですが、その前に…。」 砂埃が吹き飛び、消え去る。 中から現れたのは背に黒きフォトンの翼を生やし、全身を黒のパーツで統一したキャストの女性。 ?「先制攻撃をしてきたのはそちらです。無防備な相手を攻撃してきたのですから、それ相応の報復を受ける覚悟はおありですよね。」 やや背後、彼女を囲むように一種類七色のロッド(長杖)が展開される。 七「キャスト…なのにフォースなのじゃ?じゃが、フォースに遅れを取る妾ではないのじゃ!」 セイバーとシールドを仕舞い、代わりに出したのはナックル(鋼拳)。 それを見たキャストの女性は黄色のロッドを手に取り、近距離で七美に向ける。 七「(雷属性?じゃが、防具を雷にすれば…。)」 ?「…ディーガ!」 杖の先から放たれた巨大な土の塊。 同属性の場合は軽減となるが、対属性の場合は弱点となる。 七「ひっ…!?」 七美に直撃する瞬間、何かが弾け、彼女の周囲を光が包み込む。 ア「全く、仕方無い子ね。」 吹き飛ばされた七美を受け止める。 七「す、スケープドールが無ければ即死だったのじゃ…。」 ア「はいはい、無理はしないでね。」 七美を離し、スライサーを構えたまま女性と対峙する。 キ「…あのロッド…。」 ア「見たこと無いロッドだけど、キャリス、あなた知ってるの?」 アーシャは決して詳しいわけではないが、全くの無知でもない。 しかし、記憶の中では今まで見たことがない種類のロッドである。 キ「あれは…サイコウォンド…?」 ア「サイコウォンド…サイコウォンドだって!?あれって都市伝説じゃなかったの!?」 キ「ですが、恐らく本物かと。」 ア「…それを七本も使い分けてるなんて…一体何者なの…?」 対峙しているだけでもこの女性が強いことがわかる。 アーシャもキャリスも元々ガーディアンズに所属していたが、もっと自由に闊歩したかったという理由で脱退している。 しかし、そこで培われた腕は確かである。 そんな二人ですら警戒する相手。 ケ「来ないのですか?でしたら、こちらから行きますね。」 手にしたの赤のロッド…炎属性。 ケ「…フォイエ!」 ロッドを振るい、放たれる一つの大きな火球。 七「そう何度も受けないのじゃ!」 タイミング良くガードし、霧散させる。 ケ「…ラ・フェイオ!」 続け様のテクニック。 ア「躱して!」 三人を中心に大爆発が起きる。 それを咄嗟に避けた三人。 ア「やっぱりド派手だね、上位テクニックは。」 シャドゥーク(射導具)も取り出し、スライサーを振るう。 しかし、飛刃もシャドゥークから発射された銃弾も全て回避される。 七「っ…キャストフォースの癖に…!」 キャストの中でもテクニックを使うフォースである者は少ない。 テクニックを使用するのを苦手とする者が多いからである。 キ「…キャスト…フォース…黒き翼…もしかして、この者は…。」 ア「知ってるの?」 キ「データベースに一致する者が一人います。彼女は『真円月の影』…ケイズ。」 ア「ケイズ…?」 黒きキャストの女性…ケイズを見、呟く。 アーシャには聞いたこともない名前。 七「…うぅ〜…避けるなんてせこいのじゃ!」 七美は幾度も拳を繰り出すが、たった一発も当てることがかなわず、全て軽々と回避されている。 その間、ケイズは様子を見ているのか、ただ躱しているだけで反撃はしない。 七「…喰らえ、ボッガ・ズッバ!」 構えた右手にフォトンを集め、猛突進すると共に一気に拳を前へと放つ。 だが、ケイズは軽く躱し、更には足を引っ掛けて転ばす。 七「わっ、わっ!?」 勢いを止めることも出来ず、思いっ切り地面に倒れ込む。 ア「で、強いの?見てるだけでも凄く強いのはわかるけど。」 キ「詳細なデータはありません。ですが、二つ名が付く程の実力者なのは間違い無いと思います。」 二つ名が付くような者は今でも限られている。 相当な実力者か貢献者に与えられることが多い。 近年で言えば、『英雄』イーサン・ウェーバーが有名なところだろう。 ア「つまり、少しの油断も出来ないことね!」 キ「そういうことです。」 アーシャは何度もスライサーを振るって刃を飛ばし、キャリスは最大チャージのグレネードの砲弾を放つ。 対して、それを見たケイズは白いロッドを手に取り、二人に先を向ける。 ケ「…ダム・グランツ!」 光属性のロッドの先端から放たれる光。 アーシャとキャリスの攻撃すら飲み込み、二人に向かっていく。 ア「そんな使い方ってあり!?」 慌ててその場から離れ、光を回避する。 ア「出鱈目だね、全く。でもね、こっちだってやられてばかりじゃないからね!」 ケイズに急接近するアーシャ。 キ「援護します。」 キャリスはツインハンドガン(双短銃)に換え、連射する。 しかし、彼女に銃弾は当たらない。 ア「(銃弾を読んでる…?キャストなら出来そうな気もするけど、果たしてそんなことが…?)」 ケ「…!?」 何かに反応したケイズは全てのロッドを仕舞い、アーシャ達に背を向ける。 そして、何かに向かって一目散に走り出す。 ア「ちょっ、ちょっと!?」 ケ「見逃してあげますから、すぐにここから離れてください!」 ケイズが向かっている先の空間が大きく歪む。 禍々しささえ感じる歪み。 彼女はその歪みの中に少しの躊躇いも無く進入する。 七「な、何なのじゃ…?」 立ち直った七美は空間の方を見る。 奥は…見えない。 ア「恐らく今回の異常の原因ね。入ったら戻ってこれないかもしれないけど…どうする?」 七「当たり前のことを聞くななのじゃ!」 ア「あ、ちょっと!」 アーシャの制止も聞かずに先に走る七美。 そのまま空間の中に飛び込む。 ア「で、キャリスはどうする?」 キ「任務を遂行する。ただそれだけ。」 ア「だと思った。…それじゃあ、ミッション開始しちゃいますか♪」 [*前へ][次へ#] [戻る] |