友達は目が紅い 10−9 「一時はどうなるかと思ったけど、目が覚めてよかったわ。 私はアニー、アニー・アーレット。医者で、一応これの母親」 アニーは冗談っぽくそう言うと、ベッドの脇まで来た。 「助けて頂いてありがとうございます」 少女は上体を起こして、お礼を言った。 「どういたしまして。ちょっと手を出して」 少女が言われた通りにすると、その手をとり脈拍を数えた。 「ちょと不整脈ぎみね」 アニーはポケットから聴診器をとり出し、耳にはめた。 「服上げて」 少女は服の裾を掴んだが、 「ちょっと待って」 アニーは聴診器を外し、後ろにいたカリミスを指差した。 「アンタは出ていきなさい」 そこでカリミスは自分の立場に気付き、 「わ、わりい」 そそくさと出ていった。「ごめんね。鈍感な息子で」 「とっても仲がいいんですね」 「アンタの家族は?」 少女は悲しそうな顔をする。 「そっか。悪いこと訊いちゃたね」 少女は首を左右に振った。 「私、捨てられちゃたんです。家に帰ったら、誰もいなくて……お父さんも、お母さんも……弟も……誰も……誰も……いなくなってた」 「……そっか」 アニーは静かにそう言っただけだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |