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友達は目が紅い
5−3
「はる…」
「おはよう、どうしたの」
 朝早くの教室に居るのは、はるかとあずさだけだ。普段、はるかもあずさもこの時間に来ることは無い。今日は、あずさがはるかに早くに来るように言った。
「あずさ?」
 あずさは無言でブレザーの内ポケットに手を入れた。
「これ、はるのお母さんから渡してって」
 あずさが取り出したのは、封筒だった。差出人は真喜で、宛先ははるかになっている。
「真喜……?」
「小片君が無くなった次の日に届いたんだって。郵便局に行っていたのはこれを出すためだったんだね。学校から一番近いポストがあそこだから」
 はるかは不器用な笑顔を作った。
「ありがとう」


 寝転がると青い秋空が見える。
はるかは、一時間目の始業のチャイムを無視して、屋上で寝転がっている。中学校から続けてきた無遅刻、無欠席の記録が途絶えるが、もうそんなことはどうでもよかった。
 はるかの手から封を切った封筒と、便箋が落ちた。
「真喜も…私の事…」
 涙でぼやけても、青い秋空は変わらない。


 ゆらりゆらりと体が上下に動く。足が地についていない。
「しっかし重いぜ」
 あいつの声が妙な響き方で聞こえる。
「カリミス、はるかさんに失礼です」
 フレバ―ちゃんの声がする。
 私は少しだけ目を開けた。白い髪がゆれている。どうやら、あいつに背負われているらしい。その横をフレバ―ちゃんが自分のものと、私の二つのカバンを持って歩いている。
「What do you think Haruka?」
フレーバーちゃんが突然英語で何かを言った。内容は解らないが、私のことのようだ。もう少し英語の勉強をしておけばよかった。
「Home come you ask?」
「Because Haruka is a good person. But She don’t like you」
 フレバ―ちゃんは何を言ったんだろう。あいつは吹きだした。
「Are you worry like that!?」
「White is it」
あいつは一言一言かみしめるように言った。
「I think she is my good friend」
私にもしっかり意味が解った。

―俺ははるかのこと、いい友達だと思ってるぜ

 私は自然に腕に力を入れた。「……ごめんね」
 それしか言えなかった。
「何だ、おきてたのか。大丈夫だよ。いくらはるかが重くても、背負えないほどじゃないから」
 フレバ―ちゃんが少しジャンプしてあいつの頭をカバンではたく。
「カリミス、さっきも言ったけど…」
「はいはい、分かってるぜ。でもはるか、俺はお前に謝られる覚えはないぜ」
 これは少し意外だった。今まで私はあいつにわざと冷たく当たって来たのに…。
「どうして?」
 私は尋ねてみることにした。昔のように、素直に、強がらず。
「はるか、怖がらなくてもいいんだぜ。それだけだ」
「……うん」
 あいつが少し笑ったのは、気のせいだろうか。


「はるかさん。大江橋はるかさん」
 聞き慣れない声がして、はるかは目を開けた。そこには、スーツを着たビジネスマン風の男がひとり立っていた。
「だれ?」
 はるかは起き上がると、首をかしげた。男はにこりと笑って、答える。
「真喜さんの友達、もしくは死神です」


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