友達は目が紅い 21―3 雪が目を覚まして最初に見たのは政悟と、その肩に乗るレイアだった。 「雪、気が付いた?」 政悟が心配そうに声を掛けると、雪は虚ろな目のまま口を開く。 「有明くん。どうしてここにいるの?」 「雪?」 「やだな。どうしたの? 急に呼び捨てにして。今までろくに喋ったこともなかったのに」 雪は笑って言った。 「雪、政悟だ。わからないか?」 レイアが言う。 「その子、喋るトカゲさんなの? 有明くん、面白いお友達がいるんだね」 政悟は慌てて医者を呼びに行った。 ロビーに座る政悟の横に、優子が座った。 「政悟くん。久し振りね」 政悟は軽く会釈をする。 「雪ね、記憶が曖昧になってるみたい。あったことを忘れていたり、逆に有りもしないことを本当だと思い込んでいたり」 「そうですか」 「あなたのことも、高校に入って初めて会ったと思ってる」 「はい」 「ごめんなさいね」 政悟は立って優子に一礼すると、歩いていった。 病室のベッドの上で、雪は淡々と語る。 「私には、お兄ちゃんがいるんです。年の離れたお兄ちゃん。大江橋先輩は兄弟か姉妹がいますか?」 はるかは首を小さく横に振った。 「さっき、お母さんに聞きました。私はこの一年、大江橋先輩と暮らしていたみたいですね。全然覚えてないけど、それなら記憶のつじつまが合います」 雪はベッドに潜り込む。 「ごめんなさい。もう疲れました。自分の記憶が信じられないんです」 はるかはそっと病室を出た。 [*前へ][次へ#] [戻る] |