友達は目が紅い 14−3 雪の両親は彼女が幼い頃に離婚し、以来母と二人、小さなアパートで暮らしていた。 雪は母に父親について尋ねた事がある。しかし、はっきりとした答えは返ってこなかった。 そんな生活が変わったのは、小学校四年生の夏のはじめである。 「ねぇ、雪」 「なあに? お母さん」 雪は洗濯物を畳む手を止めずに訊く。 「雪は寂しい? お父さんがいないのって」 「ううん。寂しくないよ。お母さんがいるから」 母親は雪に後ろから抱き付き、頭を撫でる。 「もー。アンタって子は嬉しいこと言うじゃない」 元から波打っている雪の髪をクシャクシャにして、母親は手を止めた。 「ねえ、お母さんに、好きな人が出来たの」 「……うん」 「その人にはね、子供がいるの。丁度、あなたと同い年の男の子、政悟君って子なの。 お母さん一回会ったんだけど、とってもいい子なの。雪も、一回会ってくれない?」 「……うん」 「雪さん。どうかしたの?」 マミは心配そうに雪の顔を見つめる。 「いえ。なんでも」 マミは「そう」と言った後、 「ところで雪さん。政悟さんとはどう?」 と、続けた。 「その……ついさっき、政悟と……」 雪はマミから目を反らした。 「私でよろしければ、話し相手になるわ。歩きながらで良いのだったら」 [*前へ][次へ#] [戻る] |