年上の吸血鬼
寝起き
「実桜」
「ん?」
「腹へった‥」
夕方くらいに彼は寝室から起きてくる。のそのそと歩いてソファに座ってる私の隣にいつも腰掛ける。
「ちょっ…!顔洗ってからにしてくださいよー!!」
彼は私の右肩にもたれかかりながら首筋に唇をつけてくる。
…あきらかに血ィ狙ってるよ、この人。
心の準備が整ってないので可哀想だが、肩にもたれてる彼をフローリングに突き飛ばした。
「っ…?」
意味がわからないといったとこか…ぽけーっとして見てくる。
「行儀の悪い人は嫌いです。」
「俺のどこが行儀悪い」
誇り高い身分のせいか、彼は自分が悪いとは思わない。
【自分=偉い=間違いを侵さない】
この公式が彼の頭の中から消えることは絶対ない…
もしも彼が一国の王子だったらまさしく帝王学に相応しい人物であろう。
「寝起きで食料にいきなりがっつくとことかです」
「食い物はがっつくもんだろ。寝起きだから尚更腹は減るし」
「だからっていきなりは止めてください。いくらなんでも心の準備ってものがあります」
「……お前はそんな恥じらう年でもなかろう」
「しばきますよ?」
「やってみろ」
「、……今日の食事はお預けです」
しばけないので強硬手段に出てみる。
すると彼はあからさまに機嫌の悪い顔をさらけ出す。
「俺が腹減ってるのを承知のくせにそんなこと言うのか?」
「承知だから言ってるんです。大人なんだからもっとシャキッとしてください!」
「お前は保護者みたいなことを言う…」
「誰が言わせてんですか!誰が!!」
「うるさい」
彼と目の奥の瞳が一瞬だけ大きくなった。
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