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†about me
優しさ




授業が終わって、あたしは二人に話しかけられる前に教室を出て行こうとした。


だけど、
誰かに腕をつかまれて、振り向くと千宏がいた。



「千宏…じゃあね」


そう言って手を振り払おうとしたけど、千宏はより強く腕をつかんだ。


「――来て。」



千宏はあたしを引っ張って走って屋上へ向かう。


屋上へつくなり、千宏は柵にもたれかかって息をきらす。


あたしは、千宏に背中を向けて座り込む。



「―――最近、どうしたんだよ…?」

「………」

千宏は、黙って座ってるあたしの横に立って、
あたしの頭をぐしゃぐしゃにかき乱した。



「―――ここなら誰も聞いてないよ。

俺だけに話してみ?」


そう言って、千宏は笑った。
真っ直ぐに、あたしだけを見て。




―――優しい笑顔……


あたしの、だいすきな笑顔……




この笑顔を、おんなじように翔子にも向けているんだ。


むしろ、翔子しか知らない千宏がいるんだろう。

この優しい手で、
翔子にも触れているんだ…



「……どうした?」

「……何にもない。」

「何にもないわけないだろ、見てりゃわかるよ」



あたしは、立ち上がって千宏の方を振り向いた。

あたしは、もう涙をこらえられなかった。



「―――何もなくて
寂しくなった……っ」



千宏の胸ぐらをつかむ。
千宏の胸にうずくまって泣いた。


「ひか…」
「寂しい…っ
寂しくて、もう耐えらんないよ…」



そう言って、あたしはその場をあとにする。






―――何にもない。



あたしと千宏の間には、
もう何もない……




千宏

千宏…



今のあたしには
千宏のその優しさが痛い




痛くて、苦しい…



千宏の存在は、あたしを苦しめる。



だけど


この苦しみからあたしを解放できるのも



千宏だけなんだ―――…





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あきゅろす。
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