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†about me
翔子



お昼、

学校の購買は、授業終わりのチャイムがなると同時にとても混雑する。


みんな、他では売っていない限定のパンを買うために購買にかけつけるのだ。


「翔子!!まだひとつ残ってるっ!!」

あたしと翔子も、そのパン争奪戦に加わっていた。

人混みにおされながら、翔子は必死に手をのばす。


あと、数センチってところで――――



「やった、限定パンゲットー!!!」

あたしと翔子は、パンを持って行ったその男を呆然と眺めた。


「ぅあ―――また買えなかったぁー」

「しょうがないよ翔子、また明日がんばろっ!!」

「うう…」


あたしたちは仕方なく、普通のメロンパンとカフェオレだけ買って教室に戻った。


すると、クラスメートの広子が限定パンを持っていて、

「やったぁ今日も買えちゃったっ!!!」

なんて言うのだ。



それを聞いていた翔子は、

「ねぇ、そのパン翔子にちょうだい!!」

「はぁ!?あげらんないよ、あたしが買ったんだもん」

くれないのはあたりまえ。なのに翔子はむきになって広子に言う。


「今日もってことは、昨日も買ったんでしょ?じゃあいいじゃん!!」

「…はぁ。じゃあ半分あげるから、それでいいでしょ?」

「半分じゃ、足りないよ。どうせくれるなら全部ちょうだい!!」

「ちょっと、それはわがままなんじゃないの!?」


はぁ…
広子が怒るのも無理はない。


「ごめんね〜広子、翔子ずっとそれ追い求めててさっまた明日がんばるよっ」

あたしは極力明るく言った。

広子は腑に落ちない様子だったが、「しゃ〜ないなぁひかるがそういうなら」って笑ってくれた。

あたしは広子の、おもしろくないことがあってもすぐに笑ってくれるところがすきだ。


結局、翔子はあきらめて、メロンパンを不満そうにかじっていた。









翔子のこんなわがままは、昔から時々あった。

小学3年生のとき、翔子は初めてあたしの家に来た。

あたしが大切にしていたくまのぬいぐるみを、翔子はとても気に入って、

欲しい欲しいと泣いた。



あたしは仕方なく、
そのぬいぐるみを翔子にあげた。


すると翔子は泣き止み、
「ありがとう」と言ってあたしに笑ってみせた。



その時の顔は、今でも忘れられない

可愛くて、幼くて、
愛しさがこみあげるような笑顔。



そんな翔子の笑顔を見たら、どんなわがままも許せちゃう。


だってほんとはとってもいい子なんだよ


優しくて可愛いいい子なんだ



あたし、翔子のためならなんでもできる。




そう、なんでも…



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