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コノタメ。



電車を、降りて。
此処は何処だ、と思った。

見知らぬ駅の、見知らぬプラットフォーム。

何故、自分は。
この 知らない駅に、自信満々に降り立ったのだろう。






電車に、乗り込んで。
運良く、空いている席を見つけて。
つい、うとうと と。
気持ちよく、眠り込んでしまったまでは覚えている。

眠りの、向こうから。
駅名を読み上げる、アナウンスが聞こえて。
弾かれるように、立ち上がり。
閉まり掛けた電車のドアから、慌てて此の駅に飛び降りた。






背後で閉まる、ドアの音。
電車は ゆっくりと動き出し、速度を上げて プラットフォームを抜けていく。
電車から降りた、まばらな人波が。
自動改札を通り、夜の街へと消えていっても。
身動きひとつも、取れないまま。
自分の行動が理解できず、その場に凍り付いていた。








右へ行ったら、いいのか。
それとも、左へ行くべきか。
最初の一歩を踏み出す向きさえ、皆目検討がつきやしない。


そもそも、此処は何処だ。
オレは どうして、此の駅で降りたのか。
それすらもわからないのに、何故 体が勝手に動いたのだろう。
こんな駅名は知らない、
こんな場所は知らない、
なのに 体は此の場所に馴染んでいる。
知らないくせに、知っている。
よく知っている、
きっと何度も、何度も来たことがある、
でも一体 なんで、
何のために。




なんで。
何のために。




オレは、いったい。
何のために、あの電車に乗っていた?







そもそも。
何処へ、行こうとしていた?








「――…あれ?」









オレは、








誰だ?









ぐるん、と視界が回転する。
くら、と 頭の芯がブレて、思わず よろり、と体が傾ぐ。



一体、オレは、
何処の ダレで、
何処から来て、
何処へ行くつもりで、




ココデ ナニヲ シテイルノカ?








此処は、何処だ。
何故、知らない場所であるはずの其処此処に、アタマがズキリと痛むのか。

いったい、此処は。
そして、オレは…――?








「おい!!」









不意に響いた、何処か甘くて 気怠い声。
ハッ、と 振り返れば。
向かいの上り電車側プラットフォームに、ひとりの男の姿。

金色の髪をした その男の、何処までも澄んだ 蒼い瞳。
どくん、と 心臓が音を立てる。








「…、っ」
「おいおい、ソコのマリモちゃん」
「、なんだそりゃ!?オレのことか!!」
「テメエ、迷子か?」
「は、はあ!?な、何だテメエ、いきなり!」
「オレも、そうなんだわ」








サラリと告げられた、その台詞に。
線路越しに、思わず 呆気に取られる。








「…、は?」
「なんか、大事な用があって降りたつもりだったんだが。はて、それが何なのか、まったく」









呆然、と 男の顔を見つめれば。
終日禁煙の、プラットフォームで。
火のついていない煙草を咥え、金髪の男が ニカリと笑う。









「しかも、自分が何処のどなた様で。どっから来て何処へ行くのかも、サッパリ」








――…在るのか?
こんな、偶然が。




いや、
でも、現に、






……目の前に。









「さあて。どうすっか?」









この、不可解な状況を。
寧ろ 楽しんでいるような、悪戯な蒼い瞳を目にした瞬間。








ああ、なんだ。
“コノタメ”か、と。








ストン、と。
胸の内側に、転がり込んできた『答え』。

思わず笑い出したオレを、ビックリした表情で見つめる男の 金色の髪が。
オレの、視界の中いっぱいに。
キラキラと弾けて、煌めいた。









end

(2012/06/27)









企画ご参加ありがとうございましたー!!本当にお忙しい中、お願いしてもいいのかなーと迷いながら声掛け
させていただいたのですが快く承知いただきましたv サイトでは未公開ということで此処でしか拝見できません、
とくとご覧下さい♪  「冒頭部分」という事でしたが二人が出会って言葉を交わすだけでもう大丈夫っていうこの
安心感はなんでしょう。もうそれだけで一つのお話ですよねv この後の場面は蛇足ですよね^^ 短い1場面で
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