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フーアーユー?

まず最初に分かったのは波の音。次に砂の感触、そして目の前に広がる青とピンクが混ざった空と雲が見えた。
体がひどく重くて力が入らない。海水で濡れた服が更にそんなだるさに拍車をかけてる。
ちらりと視線を足元に落として…絶句する。
くすんだ金髪の頭部とおれにしがみつく腕がそこにあったからだ。体の異様な重さはこいつのせいかと上体を起こして、
まだ意識を戻してないその体を無造作に仰向ける。
胸に耳を近づけると、どくどくと脈打つ心臓の音が聞こえたことから死んではいないと確信できた。
ずれたサングラスの間からのぞく閉じられた瞳と、肩に少しかかった位の長髪だけを見れば女に見えなくない風貌だが、
白いつなぎに隠れてる胸はまっ平らで、男のある程度筋肉がついた胸板があった。
多少の落胆を感じつつも、隣の男と自分について考えてみる。
さっきの(自分にしがみついた格好)は、まるでおれを助けた様な状態だったこと、つなぎの胸元の奇妙なマークは
おれが着てるパーカーにもあること、そして腕の入れ墨の一致から察するにたぶん知った顔…であることは間違いない。

が、おれはこいつを知らない。

と言うか、それ以前におれ自身のことすら分からない。
一般常識は、分かる。
目の前に広がるのは海で、ここは砂浜で、隣のやつの性別は男で。
それ以外の、自身の名前や出生、生い立ち、思い出、ここに至るまでの経緯諸々…、それが一切分からない。いや、思い出せない。

記憶喪失。

まさか自分がそんな大層なものになるとは思わなかった。意外と冷静なのは元からの性格なのだろうか。
驚いてるし喪失感も痛いくらい感じてる。それでも取り乱す気にはならないのは、一人じゃないからかも知れない。
隣のこいつが何かしら知っているに違いないし、自分が忘れていても相手が覚えているならそこから記憶を取り戻すのは
難しい事ではないはずだ。

そこまで考えたとこでタイミングよく、男がううんと唸りながら目を開いた。
瞳をきょろきょろと動かしたかと思うと、次の瞬間には勢いよく飛び起き、驚いた顔でおれを見る。

「ここ、どこすか?!」
「さあな」
「えっと……誰、でしたっけ?」
「は?」
「って言うか…おれこそ…誰??」

青ざめて頭を抱えたいのはおれも同じだと、心とは裏腹なキレイ過ぎる夕日を見ながら、おれは深い深い溜め息を吐いた。








 フーアーユー?









カラ色トリ籠/雛奈さまより早速頂きました、一番乗りありがとうございます!!
無人島という前提だそうです!あ…その単語だけで萌える!サバイバル知識は十分あるロー(火を着けやすくするには
炊木の隙間を開けて空気を送るだとか木を擦り合わせる間に服の綿埃を挟むといいだとか太陽の光とレンズ(グラサン?)を
使うだとか採った獲物の処理方法だとか)とサバイバル技術は抜群のキャス(体力面と大雑把な判断とその判断がラッキーに
転ぶだとか、あとは生活的雑用を器用にこなすだとか)が他クルーに発見されるまでうまいこと生活してたら楽しい!そこに
ちょこっとだけ恋愛風な空気が流れたりとか(でも意識するだけで関係は変わらない。だって元の自分たちの関係が
分からないだけにブレーキがかかる) ちょっと考えただけで萌えます!!美味しい冒頭ありがとうございました!



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あきゅろす。
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