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BL短編集
何故かな、


「馬鹿。秋泣かすな。」


そう言って傑を殴った翠は、
無表情で、それでも確かな怒りを感じているようだった。

「・・・ごめん」

傑は驚いた顔で俺を見る。
知らず知らずのうちに泣いていたようだ。

「秋、ごめん。泣かないで。ごめん。」
「いいよ、もう、いいから。」

なんだよ。
傑の方が、泣きそうじゃん。

安心させようと傑の頭を撫でようとして、

出来なかった。

「え?」

傑に頭が無い。
いや。
見たままに言うと、

触れたら消えていった。
粉みたいにさらさらと。

頭が消えて、
腕が消えて、
上半身が消えて。

最後、足元に猫が現れた。
それは紛れもない傑そのもので。

「傑?」
「秋、ごめん。でも俺、秋のこと大好きだから」
「え?」
「ごめんね」

目の前の傑が、
悲しそうに、
泣きそうに、
すっきりしたように、
悔やむように、
なにより綺麗に。


笑ったから。


俺は少し泣きたくなったんだ。


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あきゅろす。
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