亜麻色の幻想 4(終) そして、出発の日がやって来た。 「これ持ってけ。せん別だ」 「体に気をつけろよ」 「うん、ありがとう」 ワイワイと、船着場でゴンを囲み別れの挨拶をする村人たち。 その中にミトさんの姿がないことを不思議に思い周りを見回すと、少し離れた場所で静かに見守っているミトさんがいた。 (ミトさん……) なぜ彼女が、ゴンがハンターになることにここまで反対するのか自分は知らない。 そこにはゴンの父親と彼女の事情があり、またゴンの事情もあるのだろう。 幼なじみとはいえ、彼女たちの事情に自分が首を突っ込むいわれはないのだから今までは何も聞かずにきた。 だけどこれからはそうも言ってはいられない。 (私の復讐の標的が、ゴンの父親でないなんて保証はないのだから) そう、誰なのかは分からない。 ハンターでないかもしれないし、もしかしたらもう死んでいるのかもしれない。 しかし、そんなことなどもはや関係ないに等しいのだ。 仮に死んでいたとして、その時は黄泉の国から引きずり出してくるまでの話なのだから。 (私は必ず復讐を全うしてみせる) この少女の内で波打つ密やかなる激情に気づく者はこの場にはいなかった。 「レインっ!」 ミトさんと話してきたらしいゴンが元気よく駈けてくる。 「今まで本当にありがとう!オレ、絶対に立派なハンターになって帰ってくるからね!」 勢いよくお腹に抱きついてそう言ったゴンにレインは苦笑混じりに、 『…あれ、言ってなかったっけ?』 私も行くのよ、とぼけた風にそう言ってのけゴンを大層驚かせたのだった。 ⇒Next... [*前へ] [戻る] |