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第二章
1
それから何日かたった、それは大晦日。
年末大掃除の名のもと自室を掃除していた知哉のもとにやってきた。

「光、どうしたの、…なんか寒そうな格好だけど」
「思い立って飛びだしてきちまったから、いろいろ忘れてきた!…入っていい?」

鼻水を垂らす勢いで寒空の中を走ってきたのか、鼻から耳から真っ赤になっている。
ばたばたのままの部屋だったが、あまりにも寒そうだったのでとりあえず中に入らせた。

「悪い、いきなり」
「いや、いいよ。どうし…」
「オレ、こんなに待たせたままでいいのかな」

ストーブの前にかじかんだ手をかざしながら、光は呟いた。
知哉の脳裏に、泣きそうだった光の声がフラッシュバックした。

もう、どうしたら。

「あれから、何回もあいつと会ったのに、あいつは全然何も言ってこないし。いや、会うたびに何か言われたらそれはすごくウザいし嫌だけど。でも、なんか、普通にしてるあいつを見てると、なんか。どうしたらいいのかわかんねー」

赤くなった耳だけが知哉に見える。
座り込んだ光がどんな顔をしているのか、何を思ってるのか。
検討がつくようで、全くつかない。

「というか、待ってもらったのはいいんだけど、それはそれでどうすりゃいいのかわかんなくなったし。あーもう!何でこんなに悩んでんのかもわかんない!」
「光…、あの、何を、悩んでる?」
「ぶっちゃけそれもわかんない。なんか、寝ても覚めても直樹のことばっか。頭から離れないし。もー、イライラしてきた」

なんだか、一瞬ドキッとした。
あれ、これはもう、なんだか一種の。

光の中では、多分答えは決まっているのだろう。
けれど、それが本当なのかが分からないだけで。
それは、光が今まで一度も恋をしたことがないからで。
知哉は光に聞こえないようにくすりと笑った。
安心したからだ。
泣きそうだった光は、多分あの時の知哉に当てられていたせいなのだろう。
ナーバスになっていただけなんだ。




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