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第二章
4

「今日、歩き?」
「うん。幸介は?」
「チャリ、取ってくる」

小走りに自転車置き場に行く。
その姿を見ながら、知哉は外にいるんだろうなと思っていた人を探してみるが、見当たらなかった。

「光は?」

ちょうど、幸介が戻ってきたので尋ねると、思いがけない答えが返ってきた。

「何か、先に帰った」
「へ?何で?今日って、確か柔道じゃなかったっけ?」
「あー…そうなんだけど…」

歩きながらきょろきょろと辺りを見渡す。
人がいないのを確認して、幸介は「駅まで送るから、鞄置けよ」と知哉の鞄を自転車のかごに乗せながら、また思いがけないことを言った。

「…ごめん」

いきなり謝られて、知哉は目が点になる。
光と何かあったのかと思い、首をかしげて先を促した。

「いや、あの…光にさ『知哉、寂しいんじゃねーの』って言われてさ」
「え?!何で?」
「『二人でいることとかあんまりないのに、オレがいて、んでもって道場とかの話とかしちまうと、知哉、寂しいじゃん。いくら、今まで通りっつってもさ』…と」

どうやら、さっき光が幸介を呼んだのはこの事だったらしい。

「光に言われてやっと気づく俺ってどうかと思うんだけど…確かに、その…寂しいのかもって、思って…。知哉、たまに俺と光が喋ってるのガン見してる時あるし…」
「え、っと…ちょっと待って、え、あ、…ううん……」

知哉は考え込んでしまった。
確かに、二人が話しているのをぼうっと見ていることはある、たまにと言うより、よくある。
でも、そのときの自分の感情は考えたことがなかった。
いつも二人とは違うことを考えるようにしていたから。

…そうするようにしていたのは、何故だろう。

知哉は無言のまま幸介の真横に行った。
自転車を挟んで横にいたのが、急に切なくなったからだ。

「と、ともや?そっち、車きたら危ない…」
「…俺も、光に『さみしそう』って言われたんだ。でも、そんなこと思ったことなかったし、その時は分からなかった。でも、よくよく考えてみたら、そう、…ちょっとは、寂しかったのかもしれない。…でも…ううん…なんだろ、…それと、光と、…友達と一緒にいるってのとはまた別で」
「…うん?」

幸介はよく分からないようで、歩くのを止めて知哉を見る。

「んと…。幸介と二人でいたいってのは、勿論なんだけど。光とも一緒にいたいし。…わがまま、なのかな。…帰り、三人とか、風香もいたりして、四人とかで帰るの、楽しいしさ」

どうしたらいい、と困ったように笑う。
幸介は少し考えてから、ぎゅっと知哉の手を握った。

「幸介?!な、に?」
「今日、まだ時間ある?」
「う、うん、あるけど…?」
「チャリの後ろ乗って。で、道場、一緒に来て」

久しぶりに乗った幸介の後ろは、やっぱりがっしりした肩があって、寄りかかるとトクン、トクンと音がした。




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