第二章 2 光は、それこそ光の早さで知哉の鞄を奪った。 知哉が嫌がるのをまる無視し、ガサゴソとさっき取り出していた袋を出した。 風香用のとは別の小さな袋が入っている。 「あ、あった」 「あ!ちょっと、あけんなよ!」 「大丈夫、キレイに包み直せるって」 「そういう問題じゃ…あぁぁ!」 パッと開かれ、知哉は顔を両手で覆った。 そこには、透き通った青色の石がついた麻紐のネックレス。 こそこそと買っていたのはこれだったのかと光が知哉に詰め寄る。 「恥ずかし…俺を見ないで…」 「何でだよ、いーじゃん!あいつに買ったんだろ?」 「…そだよ!悪いか!」 「悪かねーってば!お前ちょーかわいいな」 ゲラゲラと笑う光の手からそれを奪い取り包み直す。 包み方が分からなくなって、少し不恰好になってしまった。 「ごめんて知哉。こういう話ってさ、どうやって持ち出せばいいのか分かんなくてさ」 「え?」 「いやー、だからと言ってなに話すかも分かんねーけどさ」 照れたように口をとがらす。 恥ずかしいのは光もらしい。 「…なな、知哉さ、どこがいいの?」 「どこって…えぇぇ。んと、んんん…」 「うわ、めっちゃ悩まれてるし幸介、ウケる」 「いや、そうゆう訳じゃなくて…なんか、どこっていうか、……ふ、雰囲気、みたいな、そんなん…」 尻すぼみしながら俯く。 光はふうんと鼻をならして自分のベッドに潜り込んだ。 知哉もつられて布団を被るが、熱くて顔だけ外に出す。 光が知哉の目をその丸い見つめていた。 「な、んだよ!聞いたのはそっちだろ」 「分かってるって、怒んなよ。…なんか、いいなって、思って」 「…何が」 「うーん」 枕を抱くように俯いて光は唸る。 そういえば、多少の冷やかしはされど、光から所謂恋愛話のようなものは言わないし、聞いたこともなかった。 「光は…さ、いないの、誰か」 「んー、出来たことないな、好きな人とか」 「ふぅん…そうなんだ」 「うん。でも、お前とか、あいつ見てたら、いいなって、思った」 にへらっと笑う光は、あまり見せたことのない顔をしていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |