第二章 1 「あー、足ダルー!」 「つっかれたなぁ」 靴を投げ置き、光と知哉はそれぞれベッドに倒れこんだ。 どん、と隣から音がしたのであちらでも似たようになっているのだろう。 今日は修学旅行の自由行動一日目。 朝からとある遊園地に男四人で行き、無駄に騒いできた。 若干廃れた場所だった所為もあり、ほぼ貸しきり状態だったので、夕方から行く予定だった夜店をやめて、ずっと遊んでいたのだ。 お陰でせっかく入った銭湯でも長居出来ないくらいに疲れていた。 「ジェットコースター三回連続はきつかったな!」 「あれはやばかった!光は目回してるし、幸介もふらふらだし、直樹なんて吐きそうだったし」 「いやー、まさか目が回るとは思わなかった!まじうけるし」 笑いながらごろんと光がベッドの上を転がる。 ベッド脇の机に面白半分で買ってきた遊園地のキャラクターのミニチュア人形を並べ始めた。 「お前は大丈夫そうだったよなー。絶叫系好きなのか?」 「好きってわけじゃないけど。俺なんでか、目は回らないんだよなぁ、なんか、よくあるじゃん、バットをでこに当ててくるくる回るやつ。あれも平気なんだよな」 「え、なにそれ!それどっかおかしいよー!」 「おかしくないって」 苦笑しながらふと起き上がり、ベッド脇に置いた鞄を引っ張り上げた。 別行動をしていた風香に買ったお土産が、つぶれていないか少し心配になったのだ。 袋は少しよれていたが、中身は問題なし。 遊園地自体は廃れていたのだが、個人で出しているような店があり、その中の一つに風香が好きそうな雑貨屋があった。 「よかった、さっき鞄ごと投げちゃったから」 「あ、風香に買ったやつ?魔除け人形みたいな」 正しくはブードゥー人形と呼ばれる、ハイチの宗教的なものらしい。 健康とかそんな感じの意味があるオレンジ色の人形を買った。 光は冗談で黒にしようと提案していたが、本当に呪われそうなのでやめておいた。 「なんかオレもまともなの買えばよかったなぁ。これとか、どーしよ。これとかキモイしー」 「好きで買ったんじゃないのかよ。まぁ、明日どっか行けばいいじゃん」 「それもそーか。…お前はなんか買ってたよな?」 ニヤッとしながらベッドを飛び越えて知哉の近くにずり寄る。 知哉は鞄をすぐさま閉じた。 「か、買ってないよ!」 「うーそーだー。オレ見たもんね、風香の買ってるときに一緒になんか包んでもらってたの!」 「ないない、ないってば!」 「みーせーろー!」 [次へ#] [戻る] |