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第二章
3

「…、」
「おはよう、か?」
「…俺、寝てた?」
「うん」

知哉が目を開けると、木から覗く空は朱色に染まっていた。
顔を撫でる風も涼しい。周りをきょろきょろ見渡すと、幸介以外の人間はいなかった。

「直樹たちは?」
「光と石森はトイレ行ったっきりかれこれ一時間は戻ってきてないな。風香も友達に呼ばれてクラスの出し物見に行ったらしい」
「そっか。…ごめん、寝ちゃってて、ってか、足、痺れてない?」
「あぁ、うん。大丈夫だよ」

光に渡されたのだろう、帽子を幸介から受け取り、寝ていた体を起こす。
頭がぼんやりする中、一時間も寝てしまったのかとか、幸介それまで何してたんだろうとか、いつまで抱きかかえられていたのだろうかとか、膝枕してもらってちゃったとか、そんなことが駆け巡る。

膝枕。
え、膝枕?

「ひ、あ、ちょ、ご、!」
「え?なんだよ、そんなどもって」
「や、え、っと…その、あの…や、ごめ、んな、幸介も回りたいところ、あっただろ?」

膝枕されていたことが、とてつもなく恥ずかしいのだが、どうやら幸介はまったく気付いていない。
たぶん、風香にでもそそのかされたのだろうけど。
思考を変えようと話を切り替える。
すると、幸介はんー、と寄りかかっていた幹から体を離した。

「いや、いいよ。知哉、寝てたし。お前一人にするわけにいかねーだろ」

な、と被らないで膝の上に置いていた帽子を被せてくる。

「…へへっ、ありがと」

幸介の顔がほんのり赤かったのは夕日の所為だろうか。
すっかり騒がしさのなくなった校舎の片隅で、人知れず、時を過ごした。
遠くから見ていた人影に気付くこともなく。




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あきゅろす。
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