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第一章
6

「風香!これは無理だ!…寒っ」
「なんでよ、凄くかわいい!!」

俺は、罰ゲームがあると分かったところで止めるべきだったと今更ながらに思っていた。言われるがままにあれこれさせられた。
…た、じゃなくて、現在進行形だから、てる、だ。

「さ、ここ寒いし、早く中入るわよ」
「え、ちょ、この格好で?!」
「あたりまえじゃない、何の為の罰ゲームよ!」

寒い、寒いが、部屋には入りたくない…!
そんな思いも虚しく、風香は扉をばんと開けた。俺はとっさに影に身を隠した。

「お待たせ!って、知哉?」
「無理!これは駄目だ、これは人に見せられるものじゃない!」

中の様子をちらと見ると、幸介と光が不思議そうにこっちを見ている。

「早くしないと、部屋が寒くなっちゃうわよ。ほら、大丈夫だって!」

何が大丈夫なんだ。
そう聞き返そうとしたら腕を引っ張られた。
反動で転びそうになる体をふらつかせながら中に入ってしまった。

「へ?」
「と、もや?」
「…ギャー!」

羞恥で叫んでしまった。
俺の今の格好は、色々駄目だと思う。
袖のない、凄く短い赤いワンピース。
しかも風香の被ってきたのと同じ帽子つき。
所謂サンタコスプレ的な物だ。
視線が痛い…。

「知哉ー?!すげー!」
「な…寒くね?」
「寒いよ!てか…まじ短い…スースーするんだけど…。風香、もう着替えていいだろ?!」
「駄目よ!ほら、ちゃんとこっち向いて立って!写メらないと、罰ゲームにならないわ」
「これ着てここにいること自体もう罰ゲームだからっ!」

俺も風香もサンタコスプレ。
どんな空間だよ、おかしいだろ!俺達がぎゃあぎゃあ言い合ってるのを見て、二人はげらげらと笑っていた。
それにつられて風香も携帯片手に笑うので、ムカついてそっぽを向いたままでいた。

「よし、写真も撮れたし、私はここらで帰るわ」

満足そうな風香は、俺の頭に乗っていた帽子をちょいちょいと触りながら立ち上がった。

「え、もう帰るのか?まだ六時前だけど門限とかあんの?」
「いいえ、これからクラスの子と遊ぶのよ!ってことで…えっと、お皿とか片付け…」
「あ、それならいい、俺らでやっとくから」
「は?!おい、ちょっと待て。これどうすんだよ!」

せかせかと準備をし始めた風香に今着ている服を引っ張りながら怒鳴る。

「あ、それはまた今度返してね。まだ帰らないんでしょ?」
「え、あ、まぁ…」
「てことで、お騒がせしました!あとは男三人で仲良く遊んでね。お邪魔さまでしたぁ」

手を振りバイバイと言いながら去っていった。
数秒置いた後、ため息が出た。

「あんのやろう…どうしろってのこれ」
「いいじゃん知哉、似合ってるって」
「嬉しくないから!絶対に光のほうが似合うってぇ」

とりあえずすぐに取れる帽子を脱ぎ、ひょいと光に渡してみる。

「んなことねーよ。…あ、そうだ、この前に知哉に借りたゲーム持ってきてるんだけどさ、今からやらねー?」

渡した帽子を被りながらディスクを取り出す。

「何の?」

皿を片付け始めていた幸介がこっちを見ずに聞いてくる。
もう気にしないほうがいいのかも…。

「ん、えっと…何だっけ、名前忘れちゃったけど、RPGだよ」
「PS2?」
「うん」
「じゃあ俺の部屋で出来るな。もうすぐ遼介達も帰ってくるだろうし、ここ片付けてするか」

立ち上がり台所のほうへ行ってしまった。
光も残っていたジュースを一気に飲んで、ごみを片付け始めた。
俺も手伝おうと身を乗り出して、まだ着替えてないことを思い出した。

「…俺、着替えてから手伝う…どこで着替えよ」
「おーう、ストーブの前で着替えろよ、寒かったんだろ?」
「あ、うん、じゃあそうする」

光はゴミぶくろーと両手にゴミを掴みながら幸介のいる台所へと向かっていった。
一人になった俺はさっさと着替えようとズボンを履き、ワンピースの背中のチャックを開けようと手を伸ばした。








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