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第一章
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「光、ここのってどうなるの?」
「えー…寝てたからわかんねーや。ちょっとまって…」

雪が降る、冬休みもなんのその。
高校というものはそうとう勉強をしなきゃならないみたいだ。
休み補習の中頃、俺は暖房の効きすぎた教室でうとうととしながら聞いてた数学の、わけの分からなかった問題を光に教えてもらおうと話しかけていた。
光も寝ていたらしく、問題を見ながら考えてくれている。

「ごめんなぁ、…あ、幸介!ちょっと…」

ガラッと近くの戸が開き、幸介が教室に入ってきた。
よし、幸介はちゃんと起きて聞いてそうだ。
幸介が教えてくれるなら嬉しいし。

…嬉しい?

前にも感じた自分の感情に疑問を持ちながら、外に行っていたらしい幸介を呼び止める。

「…なんだ?」
「さっきの問題なんだけど…分かる?」
「あれか、あれは…あ、えっと、ちょっと待ってろ」

前のほうの自分の席に行き、ノートを持ってこっちにきた。

「これ、多分見れば分かるから…」

はい、と渡される。
ぱらっとめくったら整った字が並んでいた。

「あ、ありがと」
「じゃ…ごめん」

何故か謝られた。
え、と聞き返そうとしたら、ふいと背を向けてさっき入ってきた戸をまた開けて廊下に出てしまった。

一度も目を見てくれなかった。


「んーあ!出来た、と思うが…あれ、幸介は?いたんじゃないの?」
「う、ん。なんだけど、教室出てっちゃった」
「ふーん?あ、でもノートはくれたんだ?何だあいつー」

俺の手からノートを取る光。
解き方が分かったみたいで、簡単に教えてくれた。
でも、幸介の態度が気になってあんまり頭に入ってこなかった。


前にもあった。
最近いつもだ。
話しかけて、こっちを見たと思ったら、すぐに目をそらす。
休み時間も、昼ご飯を食べてる時も、じゃあねと言う時も。

どうしたんだろう。

何かあったのか。

なんで、目を見てくれないんだよ。

前は、あんなに目が合ったのに。
その度に、笑ったり、なんか恥ずかしくなったり、心臓が締め付けられる気分になったり。

でも、嫌じゃなかった。
嬉しかった。
それなのに。

もやもやする。


なんだよ、どうしたんだよ…。





ひらりひらり
雪は舞う


ゆらりゆらり
心は揺れる




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