我が道を愛す
それでいいのか
入門票にサインをし、井桁模様達は先生らしき人に引き取られ、お茶を飲もうと秀作に誘われた時だった。
「ヘムッ」
「ん?……犬か?」
「ヘムヘムどうしたのぉ?」
「ヘムヘムヘム!」
「え!学園長が!?」
「?」
二足歩行の犬が秀作に何か言うと俺に向かって「ついてこい」という仕草をする。
ヘムヘムと呼ばれた犬について行くと立派な庵。そして、何故か俺はおかっぱの白髪の爺さんと対面している。
「……何か用事でも?」
「お主、巷で噂の占い師ではないかのぉ」
「……噂がどうだか分かりませんが一応占い師をやっています」
「ふぉっふぉっふぉ。何でも占うことができ、外した事がないとか」
「……占う事と対等の料金を貰いますが。……忍を育てる学園の創立者である貴方が、噂ごときを鵜呑みにするわけではありませんよね」
「ふむ、なかなか頭のキレる奴よの。儂はただお主が“未来詠み”かどうかを確認したかっただけなのじゃ…」
「有り得ません」
学園長の言葉を途中で遮るように答えれば、目の前の老人の眉がピクリと動く。
「……占いとはまじないと同じもの。……信じるか信じないかは客しだい。……先の事も己の行動しだいで占ったものと違う方向に転ぶ。
……まぁ、考えのない輩は俺を“未来詠み”と崇め、又はアンタ等みたいに疑い消そうとする!」
言い終えると同時に懐に入れていた扇を出し、天井に向かって太い針を発射させた。
すると、天井から深緑の忍衣装を身に纏った少年が6人、庭の方に出てきた。
中でも隈が酷い少年が口を開いた。
「お前、忍か!?」
「……占い師だ」
「なら何故、暗器を持っている」
次に色白の少年が問う。
しかし、
「……あんき?」
何だそれは?と、首を傾げて聞けば少年達はポカンと間抜け面をした。
え、何この空気。
助けをこう様に学園長を見れば大笑いしていた。
「ふぉっふぉっふぉ!お主、名は何と言う」
「……影屋黒助<かげや くろすけ>」
「黒助よ。学園に来ぬか」
「……断る」
「ふむ。先程の動きでは五年生からが丁度良いな」
「……いや、だから」
「座学は低学年の授業に参加すればよい。部屋は一年生の長屋になるがよいな!」
当の本人の意見を無視し、勝手に進める学園長。
学園長に何か言われたヘムヘムがどこかに行くのを見ているとポンッと肩を叩かれた。
振り向けば明るい茶色の髪で、優しそうな少年がいた。
「えっと……諦めた方がいいですよ」
「……は?」
「学園長の“突然の思いつき”には誰も止められませんので」
他の少年達も諦めたようで苦笑いしていた。
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