テニプリ(短編)
考え事(幸村精市)
「あ、幸村君。おはよう。」
俺は最近あの娘の前で上手に笑えない。
彼女と話そうとすると色々な事を考えてしまう。
「・・・おはよう。名前さん。」
ぎこちない笑みを作ってみせる。
わかっているのにわからない。
今まで味わったことの無い様な感覚。
「・・・君・・・幸村君!!如何したの?ボーっとして。大丈夫?」
「え!?・・・ああ、大丈夫。少し考え事をしてただけだよ。」
気付かれないよう平然を装う。
「そう?・・・なんか、心配だなぁ。幸村君らしくなくて。」
「何が??」
そんなことを言いながら、また必死に平然を装う。
わかってるんだよ。そんな事。なんて心の中で呟く。
そして、それと同時に心配という彼女の一言にとても、喜んでいる。
そして、君も俺の事を・・・なんて期待をしてみる。
「だって、幸村君って何か考えてたりしても直ぐにちゃんと応えそうなんだもん。」
「そうかな??」
そういう方だと自分でも思ってた。・・・思ってる。
でも、君の前だとちゃんと応えられないどころか挨拶すらまともにできなさそうな俺がいる。
「・・・ふふっ」
「!?・・・如何したんだい?」
ついに、おかしいとでも思われたか。
彼女の一言で嬉しくなり、彼女が笑っただけで不安になった。
何が、神の子だ。情けない人間だよ。なにもかも、呆れるほど嫌になってくる。
「また考え事してたでしょ。」
「あっ、ああ。」
「・・・ギャップかな。普通の反応なのに幸村君がするとつい、気になっちゃってさ・・・ふふふ。」
前言撤回。神の子です。だけど、人の子でもあるから…
この続きを君に言えたらどんなに楽なのだろうか。
「ふふふっ。」
そして、今日も彼女の笑い声を聞きながら俺は彼女の事を考える。
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