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降り注ぐ矢の雨を、孟鐫は剣で一閃、二閃と薙ぎ払い、進行方向から突き出された槍を起用に避け、その槍を持つ腕ごと賊徒の輩を両断した。
偃月の最前線に並んだ騎馬兵五百が敵の戦線を崩壊させ、歩兵が崩れた場所を更に攻撃する。
ビョッ、と耳元を勢いよく矢が掠って行く。
「水門を征圧しろ。逃げる者は深追いするな――」
喧騒に負けじと孟鐫は大きな声を上げながら、迫り来る矛先を剣で叩き落とす。
次々と迫り来る刃を払い落とす毎に朱い剣花が咲き、同じように相手の剣の破片が宙に舞った。
その剣花が散るよりも速く、孟鐫は剣を振るう。
孟鐫の剣は百煉と、特別に作られた物である。そんじょそこらのなまくらなど、一撃で打ち砕く硬さなのだ。
一時と経たずして潰走を始めた賊徒は捨て置き、川に築かれた堰へと向かう。
聞いた通り俄か拵えの、脆そうな堰だった。
「鐫兄ィ、こっちは片付きましたよ」
背後から仲煌が声をかけ、孟鐫は堰から視線をそちらへ向けた。
目に入った仲煌は馬から下り、手綱を引いている。
「やはり来た、か」
えぇ、と仲煌は苦笑いをしながら頬を掻いた。
仲煌には部隊の損傷具合を調べさせ、孟鐫は再び堰へと向き直る。
この程度の堰なら、壊してしまったほうが良いのかもしれない。
何故だか完全に川をせき止めておらず、隙間から絶えず水が流れていた。
川の水を減らし過ぎない事で、上流に堰がある事を気どらせまいとした、か……。
確かに、誰だかは知らないが、頭の多少切れる人間がいるようだ。
孟鐫は腕組みをしながら、近くの兵に人を集めるように指示をした。
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