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草原を北に暫く行くと、急にごつごつとした岩肌が顔を覗かせ、川はやや西へと歪曲する。
 山道に入ると、森が鬱蒼と茂り、見通しが悪くなった。

 先頭を行く孟鐫ら騎馬兵は、後方の歩兵と上手く歩調を合わせて進む。
 騎馬兵は起動力があるのが魅力ではあるが、孤立してしまっては意味が無い。つかず離れずが理想であろう。

「孟鐫様。少し行った場所に、堰と見られる丸太の山があります。警備する人間も多数見受けられます。回りにも、充分注意なさって下さい」

 木の上から声がする。
 孟鐫はその声の主を確認する事無く馬を進めた。


「来た……来たぞ! 瓏兵が来たぞ!」

 見張りが駆け込んで行った陣の規模からして、堰を守備していると見られる敵はそれ程多くなさそうだ。
 しかし、孟鐫は慢心せず、先程の声を思い出し、部隊に指示を出していく。

「仲煌(チュウオウ)の部隊はこの場所を警戒。我々は突撃し、敵を叩く――」

 森に、伏兵がいる。
 そう感じて半分の人間を残す事にした。

「了解しました。存分に、戦って来て下せぇ」

 背後の青毛の馬に跨がっていた大柄の男が笑顔を見せ、孟鐫から離れて行った。
 幼なじみの仲煌ならばこそ、安心して背中を任せられる。

 敵陣に向き直り、右手に持った剣を掲げた。すると、いつもの訓練の通り、兵達は武器を構える。

「……よし、行くぞ!」

 孟鐫は声を張り上げ剣を突き出し、馬の腹に蹴りを入れて一気に走り出す。
 他の兵もそれにならい、意気を入れて突進を始めた。



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あきゅろす。
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