5
草原を北に暫く行くと、急にごつごつとした岩肌が顔を覗かせ、川はやや西へと歪曲する。
山道に入ると、森が鬱蒼と茂り、見通しが悪くなった。
先頭を行く孟鐫ら騎馬兵は、後方の歩兵と上手く歩調を合わせて進む。
騎馬兵は起動力があるのが魅力ではあるが、孤立してしまっては意味が無い。つかず離れずが理想であろう。
「孟鐫様。少し行った場所に、堰と見られる丸太の山があります。警備する人間も多数見受けられます。回りにも、充分注意なさって下さい」
木の上から声がする。
孟鐫はその声の主を確認する事無く馬を進めた。
「来た……来たぞ! 瓏兵が来たぞ!」
見張りが駆け込んで行った陣の規模からして、堰を守備していると見られる敵はそれ程多くなさそうだ。
しかし、孟鐫は慢心せず、先程の声を思い出し、部隊に指示を出していく。
「仲煌(チュウオウ)の部隊はこの場所を警戒。我々は突撃し、敵を叩く――」
森に、伏兵がいる。
そう感じて半分の人間を残す事にした。
「了解しました。存分に、戦って来て下せぇ」
背後の青毛の馬に跨がっていた大柄の男が笑顔を見せ、孟鐫から離れて行った。
幼なじみの仲煌ならばこそ、安心して背中を任せられる。
敵陣に向き直り、右手に持った剣を掲げた。すると、いつもの訓練の通り、兵達は武器を構える。
「……よし、行くぞ!」
孟鐫は声を張り上げ剣を突き出し、馬の腹に蹴りを入れて一気に走り出す。
他の兵もそれにならい、意気を入れて突進を始めた。
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