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兵法に『水を渉りては、半ば渡りたるときに撃つべし』とある。
賊はその言葉を知っているようだ、と謄蛍は言う。
「それに、蒼瑙山脈から流れ出る雪解けの水が、心なしか少ない……上流に堰があるのでは無いかな」
つまり、こちらが川を渡ろうとしても、打つ手があちらにはあると言う事か。
いかにすべきか。孟鐫は首を傾げた。
「もし、上流に堰があるのであれば、我が部隊が征圧してご覧にいれましょう」
眼前の敵は、いつ、我等が河を渡り来るか、てぐすね引いて待っている。
だが、頼みの水計が無ければ、悠々と構えている分、蹴散らす事も容易だろう。
孟鐫は自分の私兵、二千騎を率いて上流へ向かう事を提案した。
二千騎くらいでは、あまり戦局は変わらない。それならば、有効に動いた方が良いだろう。
謄蛍は快く承諾し、孟鐫の肩を叩く。
「活躍を、期待しておるぞ。……我が息子も、そなたのような人物であれば良かったのだがな」
そう言いながら謄蛍は馬を反転させ、陣中へと戻って行った。
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