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駆け引きの方程式(クラピカ)


「ねぇ、クラピカ」

そんな声と同時に背中にかかる重さは嫌いではない。しかしサヤが私にこうして背を預けて会話をする時、その内容は私を困らせるものが殆どなので素直に喜べなかったりする。

「私、クラピカの恋人になりたいよ」
「…っ?」

今日はどんな無理難題を吹っ掛けて来るのだろうと覚悟していた矢先の出来事だった。
思わず振り向こうとするが、サヤはより体重を私の方へかけてきたので、振り向くな、ということなのだろう。
私は内心動揺しつつ、サヤの次の言葉を待つ。
「私はさ、クラピカのこと好きだよ。愛してる、的な意味で」
「それは」
「うん、クラピカも分かってるから私を傍に置いてくれてるのは知ってるよ。自意識過剰かもだけど、クラピカも私のこと好きでいてくれてるのも」
そう言うサヤの小さな手が、私の右手を鎖ごと重ねるように絡めとる。互いにベットの上に座り、背は預けたまま。

「でも、私たちは恋人じゃない」
「実質的には恋人ではないのか?」

実際、最初のころは別々にとっていた宿の部屋も今ではすっかり同じ部屋。私たちはハッキリと口にしないが、互いに好いている者同士、それなりに世間一般の『恋人』らしい行動をしていたと思う。

「うーん…じゃあ、お嫁さんになりたい?」
「…それは、逆プロポーズか?」

というか、話が飛躍し過ぎだろう!
と、内心叫んだが、絡めていた右手がより引き寄せられ、サヤは続けた。
「名前は、なんでもいいの。恋人でも、妻でも…私は、」


貴方の帰る場所になりたい。


「クラピカ、復讐が終わったら自分も死ぬつもりでしょ?だから、未来(サキ)の話はしないの、いつも、ね…気付いてた?」
「サヤ」
「分かってる、クラピカの一番は私じゃなくていいの。だから、復讐の為に私を見殺しにしてくれたって構わない」
「サヤ!」
「だけど、」
触れていた背は小さく震えていて、私はそれ以上言葉を紡げなかった。

「…けど、全部終わったら、クラピカの一番はクラピカ自身であって欲しい…私は、クラピカに、自分の為に生きて欲しい」
言い終わると、触れていたサヤの背中がズルズルと滑り落ち、サヤはベットに寝転ぶ形となった。
私はやっと振り向いてサヤを上から見つめ、言った。
「サヤ」
「…うん」
「不確定な事かもしれない、けど、誓わせて欲しい…それでも、いいだろうか」
「うん、いいよ」
「私が生きて、蜘蛛への復讐を遂げ、同胞の眼を全て取り戻したら…私は、自分と、君の為に生きていくと誓おう」
「…はい」

そう答えたサヤは私を真っ直ぐに見つめて微笑んだ


駆け引きの方程式


「(じゃあその誓いを見届ける為に私はこれからもずっとクラピカの傍にいようかな)」
「(嫁に来るんじゃなかったのか?)」
「(クラピカなら私を貰ってくれるって信じてた)」
「(…なんだか、駆け引きに負けた気がするな)」
「(ふふ、一世一代の駆け引きだったからね)」



答えは、まだ未定




タイトルは「酷白。」様よりお借りしました。


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あきゅろす。
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