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気がついたら、スピーチが終わっていた。


彰と考えて(実際は、殆ど、僕と言うより彰が考えてたけど……)練習した抱負は、もう考えてなくても先から先へと言葉が出てくるぐらいだったので、多分話せていた……と思う。


放心した状態のまま舞台から退場した僕は、端から見たらどう見えていただろう。


……あの人は、僕をどんな風に見ていただろうか。


「小松くん、良かったぞ。流石、首席で入っただけあるな。」


舞台の脇に戻ると駒崎先生が僕を手招きしていた。


どうやら僕は、入学式が終わるまで、駒崎先生と一緒にいるみたいだ。


「いや、それほどでもないですよ。」


僕は、苦笑いすると、壁に体を預けて、ぼんやりと体育館の天井を見た。


光り輝くライトは、二階の黒いカーテンが閉まっていることで、恐らく開きっぱなしの時より、よりチカチカと僕の目を傷めた。


入学式が終わるまで、後、30分ほどか。それまで、ここで自分の心を整理しなければならない。


じゃないと、きっと、取り乱したままの青白い顔で自己紹介することになってしまうから。


第一印象が、暗い奴だと思われて、友達が出来なくなってしまうのは困る。


しかし、と……目を細めて俯いた。


冷静になどなれるわけない。


口をぎゅっと結んで、あふれそうな涙を堪えた。


あぁ、どうしよう。


どうすればいい?


あの人が、先輩が、この学校にいる。


嬉しいすぎて、会えたことが、すごく嬉しくて……。また、会えましたね、と先輩に叫びたい。


だけど、それはもう、きっと、受け入れられない。


そのことが、辛くて、僕を、逃れられない鎖で、身動きをできなくする。



やばい、息が詰まる。


「は、はあっ……ぐっ!!!!」


息が……っ!!!




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